腸内環境を整えることは健康上の様々な問題を改善させることができると非常に注目されており、免疫ケアや風邪予防など色々な働きのヨーグルトが多く販売されています。
そこで気になるのが、腸内環境を整えることと自律神経の働きに何か関連があるのかということではないでしょうか。
本記事では、自律神経失調症と乳酸菌の関係について解説していきます。
自律神経失調症に乳酸菌は効果がある?ない?
自律神経失調症は、交感神経と副交感神経のバランスが崩れることに関連する疾患です。一般的に、自律神経失調症は生活様式の変更を中心に薬物療法を組み合わせ治療が行われます。
乳酸菌は、腸内環境に良い影響を与えることが知られていますが、自律神経失調症の主要な治療法には入っていません。
しかしながら、腸内細菌叢(腸内フローラ)が神経系に影響を与えることが研究されており、一部の研究では、腸内細菌叢の調整が自律神経失調症の症状に良い影響を与える可能性があることが示唆されています。
そのため、乳酸菌やプロバイオティクスを摂取することが、腸内環境を改善し、自律神経失調症の一部の症状の緩和に寄与する可能性があります。
そもそも乳酸菌とは?期待できる効果を解説
乳酸菌とは、炭水化物などの糖を消費して乳酸という物質を作る細菌の総称です。
乳酸が作られることで腸内は適度に酸性に保たれ、腸内で悪い働きをする悪玉菌の増殖を抑えることができるため、善玉菌と呼ばれています。
主な乳酸菌の種類には以下のものが含まれます
<ラクトバシラス(Lactobacillus)>
ラクトバシラス属に属する細菌は、ヨーグルトや酸乳飲料などの発酵乳製品に広く存在し、腸内で乳酸を生成します。これらの微生物は腸内細菌叢の調整に寄与し、消化をサポートする働きがあります。
<ビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)>
ビフィドバクテリウム属に属する細菌は、腸内での健康に良い役割を果たすことが知られており、プロバイオティクスサプリメントに含まれることがよくあります。
<ストレプトコッカス(Streptococcus)>
ストレプトコッカス属の一部の細菌は、ヨーグルトやその他の発酵食品に見られ、便秘の改善など消化を助ける作用があります。
乳酸菌は私たちの身体にとって良い働きをする善玉菌ですが、具体的にどの様な良い働きをしているのか解説していきます。
腸内環境の改善
乳酸菌は腸内細菌叢を調整し、腸の健康をサポートする働きがあります。
腸内のバランスが良好であることは、悪玉菌の増殖を抑え、便通の改善など消化器系の正常な機能にとても重要です。
免疫機能の向上
一部の乳酸菌は、免疫系を強化し、風邪予防に有効だと言われています。
アレルギー症状の軽減
一部の研究では、乳酸菌がアレルギー症状を和らげる可能性があると言われています。
心血管疾患のリスクの低減
一部の乳酸菌で血中のコレステロールを低下させる働きがある可能性が示されています。悪玉コレステロールの異常増加が動脈硬化を促進させ、心筋梗塞や脳梗塞などの心血管疾患の発症を招きます。
一部の研究では、乳酸菌が心血管疾患のリスクを低減させる効果があると示されています。
その他、腸内細菌と肥満の関連や睡眠との関連など多くのことが近年の研究で明らかになっております。
乳酸菌は自律神経失調症のどのような症状に効果が期待できる?
自律神経失調症は交感神経と副交感神経のバランスが崩れることでめまいや立ちくらみ、頭痛など様々な症状が見られる疾患です。自律神経のバランが乱れやすいのは、生活習慣の乱れ、ストレスがよく知られており、中でも睡眠との関連が重要と考えます。
睡眠時間の不足、睡眠の質の低下など身体が必要としている休息に見合った睡眠をとらなければ自律神経のバランスは崩れやすくなります。自律神経が乱れると、中にはなかなか眠れないという不眠を訴える方もみられます。
乳酸菌はこの睡眠の調整を行うことで自律神経失調症の症状を和らげる可能性が考えられます。
腸内細菌と睡眠は深い関連があると多くの研究からわかっているため、乳酸菌により睡眠の改善が期待できると考えられます。腸内細菌と睡眠の関連性については以下のようなものがあります。
<腸-脳相互作用>
腸と脳は相互に影響し合うことが知られており、これを腸-脳相互作用と呼びます。腸内細菌叢がバランスを欠いていると、脳の機能にも影響を及ぼすことがあり、睡眠の質に影響を与えたり、うつ病発症のリスクが上がる可能性があります。
<セロトニンの産生>
セロトニンは、リラックスや幸福感を調節する役割もありますが、睡眠調節にも関与しています。睡眠を誘導するホルモンであるメラトニンはセロトニンから作られています。セロトニンは脳でも作られますが、9割近くが腸で作られ、腸内にはセロトニンを産生する細胞が存在します。
乳酸菌を効率よく摂取する方法
乳酸菌の摂取方法は大きく2つあります。
一つは、生きた乳酸菌をそのまま摂取することで、もう一つは、乳酸菌のエサとなる物質を多く含む食品を摂取することです。
生きた乳酸菌をそのまま摂取する
胃酸で壊されてしまうことなく、生きて腸までたどり着くことのできる乳酸菌をプロバイオティクスと呼びます。生きて腸に到達した乳酸菌は悪玉菌の増殖を抑えてくれますが、この作用が一生続くわけではないため、毎日継続して摂取する必要があります。
生きた乳酸菌が多い食品としては、ヨーグルトやチーズ、味噌や漬物、キムチなどの発酵食品などがあります。
また、乳酸菌はプロバイオティクスサプリメントとして利用でき、これらのサプリメントは特定の乳酸菌の菌株を高濃度含み、簡単に摂取できます。サプリメント摂取時は、個人の健康状態によりアレルギーを起こすことがまれにあるため注意しましょう。
乳酸菌のエサとなる物質を多く含む食品を摂取する
腸内の乳酸菌を増やす方法として、乳酸菌のエサになる物質を摂取することがあります。
乳酸菌のエサになる物資としては、食物繊維やオリゴ糖があります。食物繊維を多く含む食品としては、切り干し大根、干ししいたけ、きくらげ、こんにゃく、イモ類、豆類などがあります。
また、オリゴ糖を多く含む食品としては、大豆、バナナ、ニンニク、ネギ、ごぼう、玉ねぎなどがあります。
乳酸菌を摂取する際には、発酵食品やヨーグルトを適切に保存し、調理することが大切です。高温や長時間の調理は乳酸菌を破壊する可能性があるため、注意しましょう。
乳酸菌を継続的に摂取して自律神経失調症を改善させよう
乳酸菌は善玉菌と呼ばれ、腸内環境を良くしすることで、便通の改善、免疫力アップ、睡眠の改善などの効果が期待できます。
乳酸菌を含む食品の摂取は一度摂取しただけでは不十分であり、毎日継続した摂取が重要です。毎日続けることで乳酸菌を増やし腸内環境を整えることで、体調の改善、睡眠の改善から自律神経失調症の症状改善を目指しましょう。
また、乳酸菌を摂取するだけでなく、バランスの取れた食事を摂ることも大切です。健康的な食事習慣は腸内細菌叢の多様性を促進し、乳酸菌が効果的に機能することに役立ちます。ストレスを軽減すること、生活習慣を見直すことも併せて行うとより効果的です。
自律神経失調症と思っていたら起立性調節障害の場合もある
自律神経に異常が見られる病気の一つに起立性調節障害という病気があります。
一般的には思春期前後の子どもに多く、朝起きることができないことが特徴的で、その他、めまいや立ちくらみ、腹痛や動悸など様々な症状が見られます。午前中が特に重症で、午後になると症状はやや改善傾向が見られます。
生活習慣の乱れやストレスなどが原因で大人でも発症するリスクはあります。
体調不良がなかなか改善しない場合、起立性調節障害の可能性がないかセルチェックをしてみてください。当てはまる項目が多いようであれば、早期に医療機関を受診した方が良いかもしれません。
下記の記事では、起立性調節障害のセルフチェック方法について解説しています。是非ご一読ください。
>>起立性調節障害のセルフチェックリスト(子ども)|すぐにできる診断テスト
【参考文献】
日本小児心身医学会 起立性調節障害(OD)