起立性調節障害(大人)

大人の起立性調節障害|仕事はどうするべき?休職・退職、疾病手当金・失業保険について解説

2022年12月24日

この記事の監修者

医師 錦惠那

医師 錦 惠那

内科一般・腎臓内科・透析科・産業医
保有資格:日本内科学会内科専門医・日本医師会認定産業医
2018年から起立性調節障害患者の診療を行い、累計30人以上の起立性調節障害患者を担当。

一般社団法人 起立性調節障害改善協会

  • 子供の頃に発症した起立性調節障害の症状が大人になるまで持ち越している
  • 一旦症状が治まっていたが何らかの原因で症状が再燃している
  • 大人になってから初めて起立性調節障害の症状に悩まされている

この様に大人が起立性調節障害で悩んでいることは決して珍しいことではありません。

症状が重く、仕事を継続することが難しい場合、休職や退職はできるのか、また休職・退職をした場合に心配な経済的な面を含めた社会的なサポートはあるのか、など「病気と仕事」について解説していきます。

起立性調節障害(OD)改善ガイドブック

大人が起立性調節障害になった場合、仕事はどうするべき?

自律神経系である交感神経と副交感神経のバランスが崩れることが原因である起立性調節障害ですが、早朝に副交感神経から交感神経へのスイッチがうまくいかず午前中は体調が悪く、長時間立位でいるとめまいや立ちくらみなどの症状が出現します。

このため、早朝勤務や立ち仕事は身体的に負担がかかり、あまり起立性調節障害の方に向いている仕事ではないかもしれません。

生活、睡眠のリズムが崩れると症状の悪化につながるため、夜間・深夜の勤務も適しているとは言えません。

病気の特性から考えると、病気と仕事を両立するためには、早朝・夜間・深夜の勤務がなく、デスクワークがメインの仕事が比較的適した職業だと思われます。

フレックス制度を導入している会社もあるようなので、確認してみてもいいかもしれません。

病気と仕事を両立させる場合、自己管理が非常に重要になってきます。自分自身が身体的・精神的にどの程度負担がかかっているのかを常にセルフチェックする必要があります。

今までの経験から、どういう状況で症状が悪化する傾向にあるのかを念頭に置き、負担がかかりすぎていないか、適切に休養を取りながら仕事をすることが重要です。

自己管理と同様に、周りの理解や配慮も重要であり、可能であれば職場の理解も得たいところです。

定期的な受診は必須であり、受診をするために勤務時間中に職場を離れること、早朝・夜間・深夜勤務は難しいことなどをしっかりと職場に伝えておくことが必要です。

この際に、医師からの診断書がある方が、この病気がただの “怠け” ではなく、自律神経の病であることを理解してもらいやすくなり、スムーズに業務の調整を進めてもらえる可能性が高いです。

なかなか自分から職場に言いにくい場合も診断書は有効だと思われます。診断書の作成は保険が適応されず、自費診療になりますので、医療機関によって値段は様々ですが、500円~2000円程度のところが多いです。

基本的に、従業員が50人以上の会社には産業医がいますので、産業医の先生に自分の症状と職場で改善してほしいことなどを相談してみるのも選択肢の一つです。

自分から上司に相談することが難しい状況であれば、産業医の先生を通して提案してもらうといいかもしれません。また、会社によっては有資格者によるカウンセリングや相談窓口を設置している場合もありますので確認してみてください。

起立性調節障害を理由に休職、退職できるのか

休職する場合

休職期間とは、医師が病気の治療のために必要と医学的に判断した期間であり、一般的に、医師が作成した診断書を会社に提出する必要があります。

会社の規模や勤務年数にもよりますが、労働政策研究・研修機構の調査によると、病気やケガが原因の病気休職の場合、休職期間は「2年まで」としている企業が全体の75%を占めています。

休職に関しては、法律で定まっておらず、それぞれの会社により規則は異なりますので、休職期間や期間延長の可否、休職中の給与などについては各会社の就業規則を確認してみてください。

起立性調節障害(OD)改善ガイドブック

退職する場合

会社の休職制度で定められた休職期間が完了すると、会社から休職期間満了通知が届き、その時の病気の回復具合により、職場に復帰するかどうかを会社と相談して決定します。

状態が改善傾向で自身も復帰の意欲があり、医師からも復帰可能との判断になった場合は復帰となりますし、状態が改善しておらず、復職が難しい場合は、やむなく退職となることもあります。

一般的には、休職期間を延長することができることが多く、確認が必要です。復職、退職のいずれの場合も、症状、治療法、環境調整の必要性・可否などについて事前に会社、主治医と相談することが重要です。

仕事ができないときに利用できる経済的支援

傷病手当金

病気やケガのために仕事を休み、無収入もしくは減収になってしまう被保険者とその家族の生活を保障するための制度で、健康保険から支払われます。

条件としては、

・休んだ期間が4日以上
会社を休んだ日が連続して3日間あったうえで、4日目以降、休んだ日に対して支給されます。(初めの3日間は待期といい、支給期間からは除かれます。)

・業務外の病気やケガであること
業務中の傷病は労災となります。

・仕事に就くことが医学的にできないこと
提出書類の中に医師による意見の記入欄があります。

その他、詳細については全国健康保険協会・傷病手当金をご確認ください。

失業保険

雇用保険に加入し、その他いくつかの条件を満たすことで受給できる手当です。手続きはハローワークで行い、一般的に在職中の給与の約50~80%が基本手当として給付されます。

年齢、被保険者期間にもよりますが、最短で90日、最長で360日の間で給付されます。雇用保険加入期間や申請手続きなど、その他詳細については厚生労働省・雇用保険制度をご確認ください。

仕事を復帰する際の基準

明確な基準はなく、医師、会社とよく相談した上で無理のない復職、復職後に長く働くことができることが目標です。下記の項目を参考にしてみてください。

  • 復職の意欲があること
  • 起床、睡眠などの生活リズムが整っていること
  • 翌日までに疲労が回復していること
  • 日により体調の大きな変動がないこと
  • セルフチェックが可能であること
  • 周囲に助けを求めることができること

以下の記事では、大人が起立性調節障害を患った場合、何科の病院に行くべきかについて詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。

下記記事では、「大人の起立性調節障害の治し方・薬の副作用や市販薬」を解説していますので、ぜひご覧ください。

【参考】
田中大介 監修『起立性調節障害(OD)朝起きられない子どもの病気がわかる本』 講談社
日本小児心身医学会 起立性調節障害(OD)

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