起立性調節障害とは

不眠症とうつ病の違いとは?併発しやすいのか現役医師が解説

 

この記事の監修者

医師(匿名)

医師歴:10年
勤務病院:某3次救急病院

一般社団法人 起立性調節障害改善協会

  • 最近夜眠れなくなったけど、うつ病かも?
  • 寝ても途中で目が覚めてしまって熟睡できない

上記のような症状でお困りの方は、うつ病、もしくは不眠症の可能性があります。

うつ病と不眠症はどちらもストレスの多い現代社会では誰しもが発症しうる疾患であり、どちらも睡眠に支障をきたし、夜に眠れなくなったり、一晩中熟睡できずに途中で起きてしまうこともある病気です。

一方で、両者には症状や原因、対処法などに明確な違いがあります。対処法が違うからこそ、不眠症とうつ病は適切に評価し、早期から適切な診断・治療を行うことが重要です。

そこでこの記事では、不眠症とうつ病の違いや両者の特徴、それぞれのセルフチェック方法について詳しく解説します。この記事を読むことで、不眠症とうつ病の違いを理解することができ、早期から適切な対応が取れるようになるため、ぜひ参考にしてください。

不眠症とうつ病の違いとは

不眠症とうつ病の最大の違いは出現する症状です。不眠症は夜眠れなくなったり、途中で覚醒して熟睡できなくなったり、朝早くに目覚めてしまう病気です。一方で、うつ病でも不眠症状は来しますが、数ある症状のうちの1つであり、ほかにもたくさんの精神症状をきたします。

例えば、意欲の低下・食欲の低下・抑うつ気分・体重減少・趣味や興味の減退・易疲労感などです。さらに、不眠症状とともに過眠症状をきたすこともあります。

また、原因にも違いがあります。不眠症の原因は過度なストレスや不適切な就寝環境・睡眠習慣、生活習慣の乱れなどですが、うつ病は遺伝やストレス、環境、さらには神経伝達物質の乱れなどが原因です。

特に大きな違いは、うつ病の場合はノルアドレナリンやセロトニンなどの神経伝達物質の分泌が減少する点であり、不眠症では認められない変化です。

これに伴い、うつ病ではノルアドレナリンやセロトニンの効果を増強させる薬が治療で用いられますが、不眠症では就寝環境の改善やカウンセリング、睡眠薬の内服などが主な治療となります。

不眠症の特徴

不眠症の特徴は、何らかの身体的、もしくは精神的ストレスや薬の副作用などによって、正常な睡眠が得られなくなり、日中に倦怠感・意欲低下・集中力低下・食欲低下などの不調が出現する点です。

また、一言に不眠症と言っても、不眠症状には主に下記の3つのパターンあります。

  • 入眠障害:夜に寝つきが悪くなる
  • 中途覚醒:熟睡できずに睡眠中何度も覚醒してしまう
  • 早朝覚醒:早朝に目覚めてしまい二度寝できない

受験や大きな仕事の前日に寝れないことは誰しも経験があると思いますが、こういった一般的な不眠はあくまで一時的な症状であり、長期化することなく改善します。一方で、不眠症の場合は症状が遷延する傾向にあります。

また、「今日も寝れないかも」という精神的ストレスがさらに不眠症を悪化させる可能性があり、負のスパイラルに陥ることも少なくありません。

不眠症の原因は人それぞれですが、原因にあった適切な対応を取れば症状改善が見込めるため、まずは自身の心理状況や就寝環境などを見直してみると良いでしょう。

うつ病の特徴

うつ病は、先述したように遺伝・ストレス・環境や、ノルアドレナリンやセロトニンなどの神経伝達物質の分泌が減少によってさまざまな精神症状をきたす病気です。

こと睡眠に関しては不眠症状のほかに、寝ても寝ても眠気が残る過眠症状をきたすことがあります。また睡眠以外にも抑うつ気分や体重減少・食欲低下など、さまざまな症状をきたす点で不眠症と異なります。

また、うつ病最大の特徴は不眠症と違ってセルフケアが難しい点です。劣悪な就寝環境や乱れた生活習慣を改善しても、ノルアドレナリンやセロトニンなどの神経伝達物質の減少を改善することは困難です。

放置すれば希死念慮(死にたいと考えてしまう)や自殺企図など、命に関わる事態に進展する可能性もあるため、早期発見・早期治療が重要となります。

不眠症とうつ病は併発しやすい?

不眠症とうつ病は併発しやすいです。うつ病の方は不眠症状が出現しやすく、うつ病発症者の約7割が不眠症を併発するとされています。またうつ病の症状が進行すると不眠症発症の割合も増加すると報告されています。

特にうつ病患者で多いのは入眠困難であり、うつ病発症前から入眠困難に陥っているケースが半数ほどいるため、夜寝付けなくなったと自覚される方はうつ病の発症にも注意が必要です。

一方で、不眠症の方もうつ病を発症しやすいです。不眠症によって脳も身体も十分に休息することができず、疲弊することでうつ病発症リスクが増大します。

眠れないことでストレスがかかり、うつ病が悪化すればさらに不眠症状も悪化する、負のスパイラルに陥る可能性もあるため、負のスパイラルに陥る前から早期対策を行うことが肝要です。

不眠症・うつ病のセルフチェック

では、どのように早期発見するのでしょうか?ここでは、自宅でも簡単にできる不眠症・うつ病のセルフチェック方法を紹介します。

不眠症のセルフチェック

下記のような症状が、過去1ヶ月に少なくとも週3回以上当てはまる方は不眠症の可能性があります。早期発見のためにも、まずはセルフチェックしましょう。

  1. ベッドに入ってから眠りにつくまでの時間が以前より長引いている
  2. 夜間、熟睡できずいつも夜中に途中で起きてしまう
  3. 眠いのに早朝に覚醒してしまい、そこから二度寝することができない
  4. ベッドに入っている時間の割に、身体の疲労感がとれていない気がする
  5. 総睡眠時間が以前より減っている
  6. 日中にイライラしたり、気分が減退することが増えた
  7. 日中の身体活動度が低下した(動くのが面倒で出無精)
  8. 上記のような症状によって日中に強い眠気に襲われる

上記の内容が当てはまる項目が多い人ほど、不眠症を発症している可能性があるため、注意が必要です。

うつ病のセルフチェック

うつ病のセルフチェックには、簡易抑うつ症状尺度(Quick Inventory of Depressive Symptomatology:QIDS-J)を用いることが一般的です。

16項目の自己記入式の評価尺度で、うつ病の重症度を評価できるほか、アメリカ精神医学会の診断基準「DSM-I」の大うつ病性障害(中核的なうつ病)の診断基準に対応しているという特長を持っています。具体的な評価項目は下記の通りです。

  1. 寝つき
  2. 夜間の睡眠
  3. 早く目が覚めすぎる
  4. 眠りすぎる
  5. 悲しい気持ち
  6. 食欲低下
  7. 食欲増進
  8. 体重減少(最近2週間で)
  9. 体重増加(最近2週間で)
  10. 集中力・決断力の低下
  11. 自分についての見方
  12. 死や自殺についての考え
  13. 物事に対する一般的な興味
  14. エネルギーのレベル
  15. 動きが遅くなった気がする
  16. 落ち着かない

上記16項目をそれぞれ0〜3点の4段階で評価し、睡眠に関する項目(第1〜4項目)、食欲と体重に関する項目(第6〜9項目)、精神運動状態に関する2項目(第15、16項目)は、それぞれの項目で最も点数が高いものを1つだけ選びます。

それ以外の項目(第5、10,11,12,13,14項目)は、それぞれの点数を書き出します。 全部合わせて、9項目の合計点数(0〜27点)で評価し、点数が高いほどうつ病の重症度が高いと判断されます。

特に、合計点が21点以上の方は極めて重症度が高く、放置すれば自殺の可能性もあるため、早期に医療機関を受診すべきです。

※ 参考文献:厚生労働省

もしかしたら起立性調節障害かも

夜寝付けなかったり、深夜に熟睡できない場合、不眠症やうつ病ではなくもしかしたら起立性調節障害の可能性もあります。

起立性調節障害とは、身体の急激な成長に対して自律神経の成長が追いつかず、自律神経のバランスが乱れることで動悸や発汗など、さまざまな症状をきたす疾患です。

不眠症やうつ病はあくまで不眠症状や精神症状が主ですが、起立性調節障害は動悸や発汗・めまいなどの身体症状が出現する点で異なります。一方で、夜に眠れなくなるという点では共通しています。

起立性調節障害は、本来朝に活性化すべき交感神経が活性化しないことで、脳血流が低下してめまいやふらつきが出やすく、起床困難で登校や出勤が困難になる一方で、午後や夕方になると徐々に遅れて交感神経が活性化してくるため、本来副交感神経が活性化することで眠くなるはずの夜間に、興奮してしまい眠れなくなってしまうのです。

発症後、早期対策できなければ日常生活に大きな支障をきたしてしまうため、早期発見・早期治療が肝要です。特に、本記事で不眠症やうつ病のセルフチェックに当てはまる項目が多い方は、一緒に起立性調節障害もセルフチェックしておくことを勧めます。

下記の記事では、子どもにおける起立性調節障害のセルフチェック方法を詳しく紹介しているため、ぜひ一度チェックしてみましょう。

特に子供の場合、症状が悪化して不登校などになれば、進級や進学にも支障をきたし、将来の進路にも大きく影響するため、早期発見によって重症化を未然に防ぎましょう。

また、起立性調節障害は身体の急激な成長で発症しやすく、小児に多い疾患ではありますが、大人でも発症することが知られています。大人で発症すると仕事や社会生活に大きな支障をきたし、子供よりも苦労する可能性があります。

やはり早期発見が肝要であるため、ぜひ下記の記事を参考に、大人における起立性調節障害をセルフチェックしてみましょう。

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