起立性調節障害とは

自律神経の乱れの症状とは?改善方法・原因を現役医師が解説

2023年11月19日

この記事の監修者

医師 錦惠那

医師 錦 惠那

内科一般・腎臓内科・透析科・産業医
保有資格:日本内科学会内科専門医・日本医師会認定産業医
2018年から起立性調節障害患者の診療を行い、累計30人以上の起立性調節障害患者を担当。

一般社団法人 起立性調節障害改善協会

 

私たちの身体の様々な調整を行っている自律神経ですが、この自律神経の働きが乱れるとめまいや頭痛、肩こり、眠れないなど様々な不調が見られるようになります。

こちらの記事では、自律神経の乱れについて、原因や症状から改善方法まで解説していきます。

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自律神経の乱れとは

自律神経には交感神経と副交感神経があります。交感神経は身体を活発にする神経で、心拍数を増やしたり、瞳孔をひらいたり、消化を抑えたりするなどの働きをしています。

副交感神経はこの逆で、身体をリラックスさせる神経で、心拍数を抑え、瞳孔を収縮させ、消化運動を活発にするなどの働きがあります。この2種類の神経が良いバランスを維持することで、身体の様々な調整を行っています。

自律神経のバランスが乱れると、交感神経が必要以上に活性化したり、活性が少なすぎたりしてしまい、身体の様々な働きを調整することができなくなり、動悸や胃もたれなど様々な不調が現れます。

自律神経の乱れによる症状

交感神経と副交感神経がバランスよく働くことができない場合、以下のような様々な症状が現れます。

  • 心臓・血管:動悸、胸痛、立ちくらみなど
  • 肺:息苦しさなど
  • 胃腸:吐き気、下痢、便秘、腹痛など
  • 頭:頭痛など
  • 目:疲れ目、目の乾燥など
  • 耳:耳鳴り、めまいなど
  • 口:口の渇きなど
  • 手足:冷え、しびれ、痛みなど
  • 筋肉・関節:肩こり、関節痛、筋肉痛など
  • 膀胱:排尿困難、残尿感など
  • 生殖器:勃起障害、生理不順など
  • 精神:不眠、イライラ、気分の落ち込みなど
  • 全身:全身倦怠感、食欲低下など

自律神経が乱れる原因

では、なぜ自律神経が乱れるのか。

自律神経が乱れる原因は主に、ストレス、生活習慣の乱れ、ホルモンバランスの乱れなどが考えられます。

ストレス

ストレスを感じると、脳の視床下部という部位からストレスホルモンであるアドレナリンが放出されます。アドレナリンは交感神経を刺激し、身体を「戦う」か「逃げる」ための準備を整えます。

アドレナリンの放出により、交感神経が活発化し、心拍数が上がり、血圧が上昇し、血糖値が増加するなどの反応が起こります。これらの変化は、短期的な応急手段としては有益ですが、長期的なストレスへの対応としては問題が生じる可能性があります。

交感神経の活性化と同時に、ストレス反応によって副交感神経が抑制されます。副交感神経は「安静・消化・修復」モードを促進し、リラックスと回復を支援します。

しかし、ストレスの状態ではこれが妨げられます。長期的なストレス状態が続くと、交感神経が優位になり、副交感神経の活動が低下している状況が継続してしまいます。この不均衡が持続すると、自律神経の乱れが生じやすくなってしまいます。

生活習慣の乱れ

生活習慣の乱れには、例えば、寝不足、食生活の乱れ、運動不足、過剰なカフェイン・アルコール摂取などがありますが、これらが複合的に作用することで自律神経の乱れが現れる可能性があります。

食事の時間が不規則であること、食事内容が乱れることは、血糖値の変動を大きくし、その結果、交感神経が優位になりやすくなります。

十分な睡眠が確保されないと、交感神経の活動が増加し、副交感神経の働きが減少します。これが持続すると、自律神経のバランスが崩れやすくなります。

適切な運動が不足すると、交感神経と副交感神経の調整が阻害されることがあります。

また、過剰なカフェインやアルコールの摂取は、交感神経の活性化を促進し、副交感神経の働きを抑制する可能性があります。

ホルモンバランスの乱れ

ホルモンの変動が続くと、交感神経と副交感神経の調整機能が乱れ、自律神経の不均衡が生じやすくなります。

甲状腺ホルモンが不足する、または過剰に分泌されると、交感神経と副交感神経のバランスに影響を与えることがあります。

女性の場合、月経周期や妊娠、更年期などで女性ホルモンの変動が起きます。これが自律神経に影響を与え、症状を引き起こすことがあります。

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自律神経の乱れをチェックする方法

交感神経、副交感神経ともに協調してしっかり働いている状態がベストです。

交感神経、副交感神経ともに低下している場合は、常に体がだるい状態になってしまいますし、交感神経が極端に高く、副交感神経が極端に低い場合は、常に焦った状態で疲労が溜りやすくなってしまいます。以下の症状がないか、一度確認してみてください。

<睡眠について>
・寝つきが悪く、なかなか寝つけない
・どれだけ寝ても疲れが取れない

<食事について>
・食欲がないのに食べてしまう
・食べてもすぐにお腹が減る
・食後によく胃がもたれる
・お腹の調子が悪く、便秘や下痢などの便通異常がある

<メンタルヘルスについて>
・不安や恐怖感がある
・ぼーっとしがちである
・やる気が出ない
・理由もなくイライラしやすい
・思考力や決断力、集中力が低下している
・緊張しやすく、ストレスを受けやすい

<その他の症状について>
・頭痛や肩こりがある
・手足が冷たい
・皮膚や髪の毛が乾燥している

自律神経の乱れを改善する方法

自律神経の乱れを改善するためには、自律神経の乱れを引き起こす原因となる要素を改善することが重要です。

これから説明致しますが、特に非薬物療法が重要であり、日常生活での工夫や心がけが症状改善のポイントになります。

非薬物療法

まずは、非薬物療法で自律神経の乱れを改善する方法を解説します。

ストレス管理

ストレスは自律神経の乱れの主な原因の一つです。リラックス法、深呼吸、瞑想、ヨガなどのストレス管理テクニックを積極的に取り入れましょう。

適切な睡眠

充分な質の高い睡眠を確保することが重要です。規則正しい睡眠スケジュールや、快適な寝室環境の整備が役立ちます。

適度な運動

運動は自律神経のバランスを整えるのに役立ちます。適度な有酸素運動やストレッチなど、日常的な運動を取り入れましょう。

バランスの取れた食事

栄養バランスのとれた食事は、自律神経を正常に機能させることができます。特に血糖値の急激な上昇を避けるように心がけましょう。

また、食事の時間も毎日バラバラではなく、一定の時間にすることが望ましいです。

カフェインとアルコールの制限

過剰なカフェインやアルコールの摂取は自律神経に影響を与えることがありますので、摂取を控えめにしましょう。特に睡眠前は控えることが望ましいです。

深呼吸やリラックス法

深呼吸やリラックス法は、副交感神経を刺激し、ストレス応答を緩和するのに役立ちます。毎日数分間、深呼吸や瞑想を行うことを検討してみてください。

薬物療法

自律神経の乱れを改善するには、特に上記でご説明した非薬物療法が重要です。薬物療法は自律神経の乱れを直接的に改善するものではなく、見られている症状に対し、対症療法として薬物を使用することがあります。

動悸が強い場合はβ遮断薬、不安が強い場合は抗不安薬、気分の不調が見られる場合は抗うつ薬、不眠による症状が見られる場合は睡眠薬などを処方することがあります。これらの薬物は症状を緩和させる一方で、根本的な治療ではないため、繰り返しにはなりますが、非薬物療法が非常に重要です。

もしかしたら起立性調節障害の疑いがある

めまいやふらつき、動悸、頭痛、腹痛など様々な不調が見られている場合、自律神経が乱れている可能性があります。自律神経が乱れることが原因である疾患に起立性調節障害というものがあります。

特に、身体とホルモンバランスが急成長する思春期に多い病気ですが、大人でも見られることがあります。症状は実に多様ですが、特に朝起き上がることができない、早朝の不調が多いのが特徴で、時間経過とともに午後には症状がましになっていくことも多いです。

早期発見、早期治療が症状改善にはとても重要ですので、気になる症状がある方は是非一度セルフチェックを行ってみてください。起立性調節障害のセルフチェックに関しては、以下の記事で詳しく解説していますので是非参考にしてみてください。

>>起立性調節障害のセルフチェックリスト(子ども)|すぐにできる診断テスト

 

>>大人の起立性調節障害セルフチェック項目|診断テスト

 

【参考文献】
日本小児心身医学会 起立性調節障害(OD)
起立性調整障害(OD)朝起きられない子供の病気がわかる本/田中大介
起立性調節障害(OD)ドクターズファイル
日本心身学会 自律神経失調症

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