高校生になっても「乗り物酔いがひどくて困る」という声は少なくありません。
子どものころより体が大きくなり、酔わなくなると思われがちですが、実際は思春期の体と心の変化、自律神経の揺らぎが重なり、かえって酔いやすくなる時期でもあります。遠足や修学旅行、通学や塾へのバス移動など高校生は乗り物を利用する機会が増え、つらい吐き気や頭痛、冷や汗に悩む人も多いのです。
多くは病気ではなく一時的な体調や生活リズムが影響していますが、中には自律神経の病気や貧血、偏頭痛などが隠れている場合もあります。
この記事では、高校生がなぜ乗り物酔いをしやすいのか、その原因や考えられる病気、日常でできる予防と対処法まで、分かりやすく解説していきます。
高校生で乗り物酔いがひどいのはなぜ?原因とは?
まずは、高校生で乗り物酔いがひどい場合の原因を5つ解説します。
視覚と平衡感覚のズレ
乗り物酔いは、視覚からの情報と内耳(平衡感覚)からの情報が食い違うことで起こります。
例えば、バスや車に乗って本やスマホを見ていると、目は動いていないと感じますが、耳の奥にある三半規管は車体の揺れを感じています。このズレが脳に伝わり、混乱が生じ、自律神経が刺激されて吐き気や冷や汗、めまいなどを引き起こします。
高校生は成長期で感覚が鋭敏なため、大人より酔いやすいことも。窓の外を見て進行方向を意識する、遠くを見るようにするなど視覚情報を合わせることで予防が期待できます。
睡眠不足や疲労
睡眠不足や体の疲れがたまっていると、自律神経の働きが乱れやすくなり、乗り物酔いが起こりやすくなります。
高校生は部活や塾、テスト勉強などで慢性的に疲労を抱えている場合が多く、朝早い時間帯の移動や睡眠不足の状態で乗り物に乗ると、酔いやすさが増します。
また、寝不足のときは平衡感覚の調整も鈍くなり、脳が揺れを処理しきれなくなることが原因です。移動前日はしっかり休息をとり、睡眠を十分に確保することが重要です。
空腹や食べ過ぎ
移動前に何も食べていない空腹状態や、逆に脂っこいものを食べ過ぎて消化に負担がかかっていると、乗り物酔いが起こりやすくなります。
空腹だと血糖値が下がり、自律神経が乱れやすい一方、満腹だと胃に血液が集まり消化を優先するため、平衡感覚を調整する脳への血流が減少し、酔いやすくなります。
高校生は友人と移動前に菓子パンやジャンクフードを多くとるケースも多いため注意が必要です。軽めに消化の良い食事を適量とることが理想です。
精神的な緊張やストレス
「また酔ったらどうしよう」と不安になると、自律神経のうち交感神経が過剰に働き、吐き気や冷や汗が誘発されることがあります。
学校行事や遠足、受験会場へ向かうときなど緊張感が高いシーンでは、心理的なストレスも重なり、乗り物酔いを助長します。
また、過去にひどく酔った経験があると、同じ状況になるだけで条件反射的に具合が悪くなることも。深呼吸や会話で気をそらす、気楽な音楽を聴くなどリラックスを心がけることが大切です。
においや車内環境
バスや車の排気ガス、車内の芳香剤、食べ物のにおいなどが引き金となり、吐き気を感じやすくなります。においは直接脳の自律神経中枢を刺激するため、体調が整っていても強い刺激臭を感じると酔いやすくなります。
さらに、車内の蒸し暑さや空気のこもり、密集した空間なども体調を悪くする要因です。窓を少し開けて外気を取り入れたり、マスクを活用して不快なにおいを避けるだけでも対策になります。なるべく新鮮な空気を取り入れることがポイントです。
高校生で乗り物酔いがひどい場合の対処法とは?
こちらでは、高校生で乗り物酔いがひどい場合の対処法を3つ解説します。
乗り物での過ごし方を工夫する
乗り物酔いを防ぐためには、まず座席の選び方が重要です。バスなら前方やタイヤの上を避け、揺れの少ない中央付近、電車なら進行方向に向かって座るなど揺れの少ない場所を選びましょう。
また、遠くの景色を眺めて目から入る情報と体の揺れを一致させることも大切です。スマホや本を長時間見続けるのは視覚と平衡感覚のズレを強めるので控えた方が良いでしょう。会話や音楽で気を紛らわせるのも効果的です。
さらに、車内ではリクライニングを少し倒して安定した姿勢を保つことで、脳への揺れの刺激を減らし乗り物酔いを予防できます。
体調を整える・環境を整える
移動前日は十分な睡眠をとり、当日は疲労や睡眠不足を避けることが大切です。空腹も満腹も酔いやすくなるため、軽く消化のよい食事をとりましょう。
また、車内が暑すぎたり空気が悪いと酔いやすくなるので、窓を少し開けたりエアコンで換気することも効果的です。匂いに敏感な人は強い芳香剤や排気ガスを避け、マスクを活用するのも一つの選択肢です。
さらに、移動中に水分を少しずつとり、脱水を防ぐこともポイント。これらの環境調整で自律神経の乱れを抑え、乗り物酔いを軽減できます。
薬・ツボ・リラクゼーションを活用する
酔いやすい人は事前に酔い止め薬を服用するのも有効です。高校生は市販薬でも服用可能な年齢なので、用法を守って早めに飲むことで効果を発揮します。
また、手首の内側にある「内関(ないかん)」というツボを押すと吐き気を和らげるといわれおり、指で軽く押してみてください。さらに深呼吸や肩の力を抜くなどリラックスするだけで自律神経のバランスが整い、乗り物酔いの症状が出にくくなります。
高校生で乗り物酔いがひどい場合に考えられる病気とは?
こちらでは、高校生で乗り物酔いがひどい場合に考えられる病気を3つ解説します。
貧血(鉄欠乏性貧血など)
鉄欠乏性貧血は高校生、とくに女子に多い疾患です。成長期や月経により鉄が不足しやすく、赤血球が減ると脳への酸素供給が低下します。その結果、乗り物で揺さぶられたときに脳がさらに酸素不足となり、吐き気やめまいを起こしやすくなるのです。
貧血があると階段や体育で動いた際に動悸や息切れを感じることもあります。軽度の場合は自覚が少なく、乗り物酔いで初めて気付くケースもあります。バランスのよい食事を心がけ、症状が続く場合は血液検査を受けて鉄剤治療を行うと改善が期待できます。
片頭痛
片頭痛は思春期に増える頭痛の代表で、男子より女子に多く見られます。
頭の片側や全体がズキズキ痛むだけでなく、脳の感覚処理が過敏になるため、におい・光・音、さらには揺れにも敏感になります。このため、普段は単なる「乗り物酔い体質」と思われる症状が、実は偏頭痛による前駆症状の一つとして現れている場合もあります。
乗り物に乗ることで血管の収縮拡張や脳の興奮が引き金となり頭痛や吐き気を悪化させるケースも。規則正しい生活、十分な睡眠、ストレス管理が基本で、症状が強ければ内科や頭痛外来での治療が有効です。
前庭機能障害
平衡感覚をつかさどる内耳の三半規管や耳石器の機能がやや低下していると、揺れに対する適応が遅くなり、乗り物酔いを起こしやすくなります。
原因は体質的なものが多いですが、過去の中耳炎の影響や、疲労・ストレスで一時的に機能が弱っている場合もあります。軽度の内耳機能不全はふだん自覚がなくても、車やバスに長く乗ると顕著に症状が現れることがあり、吐き気やめまいを伴う場合があります。
まずは、生活習慣を整え、必要なら耳鼻科で簡単な平衡機能検査を受けることも検討しましょう。
もしかしたら起立性調節障害かも
乗り物に乗ると気分が悪くなりやすい…それは多くの人が経験することですが、なかには単なる乗り物酔いではなく、「起立性調節障害」とい病気が隠れていることもあります。
起立性調節障害は思春期に多い自律神経の不調で、交感神経と副交感神経のバランスが崩れることで、立ち上がったときに血圧や心拍がうまく調整できず、脳に十分な血流が届きにくくなる病気です。
その結果、めまいや立ちくらみ、動悸だけでなく、乗り物の揺れにも過敏になり、通常より強い酔いやすさが出ることがあります。特に朝が弱く、起きられない、午前中は調子が悪い、疲れやすいといった特徴も見られます。
症状は生活習慣の改善でよくなることが多いですが、続く場合は小児科や内科で相談し、適切な診断を受けることが大切です。「ただの酔いやすい体質」と思わず、一度振り返ってみるのも安心につながります。
以下の記事では、起立性調節障害のセルフチェックに関して詳しく解説していますので参考にしてみてください。