起立性調節障害とは

子どもが夜型になって体調不良を起こすのはなぜ?原因・対処法を解説

この記事の監修者

医師 錦惠那

医師 錦 惠那

内科一般・腎臓内科・透析科・産業医
保有資格:日本内科学会内科専門医・日本医師会認定産業医
2018年から起立性調節障害患者の診療を行い、累計30人以上の起立性調節障害患者を担当。

一般社団法人 起立性調節障害改善協会

最近「うちの子、夜更かし気味で朝がつらそう…」と感じる親御さんも多いのではないでしょうか。

ゲームやスマートフォン、塾や習い事など、子どもたちの生活は以前よりも夜型に傾きやすくなっています。しかし夜更かしが続くと、朝なかなか起きられない、日中に眠たそうにしている、授業に集中できないといった体調の不調が目立つようになります。

子どもにとって睡眠はただの休養ではなく、心と体の成長に欠かせない大切な時間です。睡眠不足や生活リズムの乱れは、頭痛や食欲不振などの不調だけでなく、風邪をひきやすいなど免疫力にも影響を与えます。

こちらの記事では、子供が夜型になって体調不良を起こす原因、改善方法を中心にお話していきます。是非最後までご覧ください。

子どもが夜型になって体調不良を起こすのはなぜ?原因とは?

まずは、子どもが夜型になって体調不良を起こす主な原因について解説していきます。

体内時計の乱れ

人間の体には、朝起きて活動し、夜眠るというリズムをつくる「体内時計」が備わっています。しかし夜遅くまで起きている生活が続くと、この時計が後ろにずれてしまい、本来眠るべき時間に眠気がこない、朝になっても目が覚めにくいという状態になります。子どもは大人よりも体内時計の影響を受けやすいため、夜型生活が定着すると日中の眠気や集中力の低下を招きやすくなります。

また、体内時計が乱れるとホルモンの分泌や自律神経の働きにも影響が出て、頭痛や食欲不振などの体調不良につながることも少なくありません。

睡眠不足による心身への負担

夜型生活は必然的に睡眠時間の不足を招きやすくなります。子どもに必要な睡眠時間は年齢によって異なりますが、小学生で9〜11時間、中高生でも8〜10時間が理想とされます。ところが、夜更かしで就寝が遅くなると、翌朝は学校に間に合わせるために早起きせざるを得ず、慢性的な睡眠不足となります。

睡眠不足は脳の働きを鈍らせ、学習意欲や記憶力の低下を引き起こします。また、心の安定を保つホルモンの分泌も乱れるため、イライラしやすくなったり気分が落ち込みやすくなったりと、メンタル面にも影響が及びます。

自律神経のバランスの乱れ

私たちの体は、自律神経という仕組みによって「活動モード」と「休息モード」を切り替えています。朝の光を浴びると交感神経が働き、体は自然と活動的になり、夜になると副交感神経が優位になり眠気が訪れます。しかし夜型の生活では、この切り替えがうまくいかなくなります。

夜遅くまで明るい光を浴び続けると交感神経が働きっぱなしになり、眠りの質が下がるだけでなく、翌朝も体が「休息モード」のままでだるさや頭痛を感じやすくなります。自律神経の乱れは血流や内臓の働きにも影響するため、食欲不振や腹痛など多様な不調の原因となります。

成長ホルモンの分泌低下

子どもの成長に欠かせない「成長ホルモン」は、眠りについてから最初の深い睡眠時に多く分泌されます。夜更かしをして寝る時間が遅くなると、この深い睡眠が十分に得られず、ホルモンの分泌量が減ってしまいます。

成長ホルモンは身長を伸ばすだけでなく、筋肉や骨の修復、免疫力の維持にも大切な役割を担っています。そのため分泌が減ると、体の発達が遅れたり、疲れやすくなったり、風邪をひきやすくなるといった不調が出てきます。夜型生活が続くと「なんとなく体調が優れない」という状態が習慣化しやすくなるのです。

ストレスと生活習慣の悪循環

夜型生活は単に睡眠時間が遅いだけでなく、生活習慣全体に影響を与えます。夜更かしによる睡眠不足は学校生活での集中力低下や成績不振につながり、それが子ども自身のストレスになります。ストレスが増えると夜にリラックスできず、さらに寝つきが悪くなるという悪循環に陥りやすいのです。

また、夜遅くに間食をする、朝食を抜くといった食生活の乱れも加わり、栄養バランスが崩れることで体調不良がさらに強まります。このように夜型生活は「夜遅く寝るだけ」の問題ではなく、心身の健康全般に広く影響を及ぼす点が大きなリスクです。

子どもの夜型生活を改善して体調不良を整える方法とは?

子どもの夜型生活を改善して体調不良を整える最も重要な3つの方法をご紹介します。

朝の光をしっかり浴びる

体内時計をリセットする一番の方法は「朝の光を浴びること」です。人の体は太陽の光を感じると脳が「朝だ」と判断し、眠気を引き起こすホルモンであるメラトニンの分泌が止まり、代わりに気分を安定させるセロトニンが活発に働きます。

これによって自然に目が覚め、体は活動モードに切り替わります。逆に朝に光を浴びないと、夜型のリズムがどんどん後ろにずれてしまいます。改善の第一歩は、毎朝カーテンを開けて10〜15分程度、できれば外に出て日光を浴びること。通学前に短い散歩や深呼吸を取り入れるとより効果的です。朝の光を習慣にすると、夜も自然と眠くなりやすく、体調不良の改善につながります。

就寝前の環境を整える

夜型生活の背景には、スマホやゲームなど強い光を発する電子機器の影響が大きくあります。ブルーライトは脳を「まだ昼間」と錯覚させ、眠りを誘うメラトニンの分泌を妨げます。そのため寝る直前までスマホを見ていると、布団に入ってもなかなか眠れません。

改善のためには「少なくとも寝る1時間前にはスマホやテレビをやめる」ことが大切です。また、部屋の明かりを少し落として穏やかな雰囲気をつくる、リラックスできる音楽や読書を取り入れるのも効果的です。眠る前に温かいお風呂で体を温めると、副交感神経が働きやすくなり、寝つきも良くなります。眠りやすい環境を整えることは、夜型改善の大きなポイントです。

規則正しい生活習慣を意識する

夜型のリズムを整えるには、睡眠だけでなく生活全体の習慣を見直すことが必要です。特に「朝食をしっかり食べる」ことは重要です。朝食をとると体温が上がり、内臓が目覚め、自然と生活リズムが整いやすくなります。

また、夕方以降にカフェインを含む飲み物(コーヒー、紅茶、エナジードリンクなど)を避けることも大切です。さらに、日中に適度な運動を取り入れると夜の眠気が訪れやすくなります。

毎日同じ時間に起きて、同じ時間に寝る習慣を心がけることが、体内時計を正常に戻す近道です。最初は難しくても、少しずつでもリズムを一定にすることで、子どもの体調は自然と整っていきます。

子どもの夜型生活による体調不良を治す上でやってはいけないNG行動

以上のことを踏まえ、子どもの夜型生活による体調不良を治す上でやってはいけないNG行動を5つご紹介します。

大人が良かれと思ってついしてしまっていることもあるかもしれませので、是非確認してみてください。

寝る直前の食事やおやつ

夜遅くに食事やおやつをとると、胃腸が消化活動を続けるため体が休まらず、眠りの質が低下します。夜食が習慣になると肥満や胃もたれの原因にもなり、さらに体調不良を悪化させます。

運動不足や日中の活動不足

昼間にしっかり体を動かさないと、夜になってもエネルギーが余り、寝つきが悪くなります。外遊びや軽い運動を取り入れないまま夜を迎えるのは控えた方がベターです。活動量と睡眠は密接に関係しています。

昼間に長時間の昼寝をさせる

夜更かしで不足した睡眠を昼寝で取り戻そうとすると、夜の眠気が訪れにくくなります。特に夕方以降の昼寝は体内時計をさらに遅らせてしまいます。昼寝は15〜30分以内、午後3時までにとどめることが望ましいです。

④ 就寝直前までスマホやゲームをさせる

ブルーライトを浴びると脳が昼間だと錯覚し、眠気を誘うメラトニンが抑えられてしまいます。「眠くなるまでスマホを触っていていいよ」としてしまうと、寝つきが悪化し、ますます夜型が強まります。

無理やり早起きさせたり、叱責ばかりする

夜型だからといって、急に大人の都合で早起きさせるだけでは解決になりません。睡眠時間が確保できないまま無理に起こすと、さらに睡眠不足が悪化し、頭痛や集中力の低下を招きます。

また、「早く寝なさい」「なんで起きられないの」と叱るだけでは、子どもはプレッシャーを感じてかえって寝つきにくくなることもあります。夜更かし自体を見直すことが大切です。

もしかしたら起立性調節障害かも

子どもの夜型生活が続くと、朝なかなか起きられない、学校に行っても頭がぼんやりして集中できない、日中に強い眠気があるといった体調不良が目立つようになります。多くの場合は、就寝時間を整える、朝に光を浴びる、寝る前にスマホを控えるといった工夫で改善が見られます。

しかし、中には生活リズムを整えても症状がなかなかよくならないケースがあります。そのときに考えたいのが「起立性調節障害」です。

起立性調節障害とは、自律神経のバランスが崩れることで血圧や脈拍の調整がうまくいかなくなり、朝起きにくい、立ち上がったときにめまいや立ちくらみがする、動くとすぐに疲れるといった症状が出る病気です。思春期の子どもに多く見られ、学校生活に大きな影響を与えることがあります。夜型生活による不調と症状がよく似ているため、「ただの夜更かし」と見過ごされやすいのが特徴です。

もし「生活を改善しているのに体調がよくならない」「学校を休みがちになっている」「朝は特に調子が悪いが午後になると少し元気になる」といった状態が続く場合は、単なる睡眠不足ではなく起立性調節障害の可能性があります。子ども自身は怠けているわけではなく、体の仕組みとして朝がつらい状態になっているので、早めに小児科などで相談し、必要に応じて治療やサポートを受けることが大切です。

以下の記事では、起立性調節障害のセルフチェックに関して詳しく解説していますので是非参考にしてみてください。

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