吐き気という症状は比較的よく見られる症状の一つです。胃腸炎になった際にお腹の痛みや、下痢などとともに吐き気を経験された方も多いのではないでしょうか。
胃腸炎以外にも、胆嚢炎や虫垂炎(いわゆる “もうちょう” )などの消化管の問題、心筋梗塞などの循環器の問題など様々な疾患で吐き気が出現します。
この記事では、特に午前中に吐き気がする原因やその場合に考えられる状態、病気、対処方法などについて解説していきます。
「午前中に吐き気がする」ときの原因
胃腸炎の場合、胃や腸にウイルスなどの病原菌が侵入することで炎症が引き起こされます。私たちの体は病原菌を体外に排出しようとするため、胃や腸が収縮し、腹痛や吐き気・嘔吐、下痢などが症状として現れます。
しかし、胃腸炎は特に午前中に特化した症状ではなく、病原菌が体内にいる間はずっと見られ、日にちとともに改善していきます。
では、特に午前中に吐き気がする場合、どのようなことが考えられるのか。考えられることとしては大きく以下の2つに分けられます。
消化管の不調
過食や就寝前の食事摂取により胃や食道、腸管に負担をかけてしまい炎症が引き起こされます。就寝直前に食事を摂取してしまうと、寝ている間も胃腸は消化吸収活動を行うことで、休まることがない状況になってしまいます。
また、食事が長期間胃に滞留することで、就寝中に逆流しやすくなってしまい、翌朝の胃のむかつきや吐き気につながってしまうことも考えられます。
ストレスによる不調
胃はストレスに弱いとよく耳にしませんか。ストレスが原因で直接胃の粘膜を傷つけ、胃潰瘍になってしまうこともあります。
また、ストレスは自律神経系の不調を来します。自律神経系には交感神経と副交感神経があり、胃腸の消化吸収機能やその他生命維持に重要な体の働きをコントロールしています。
胃腸機能に関しては、副交感神経が優位に働いている際に消化吸収機能が活発に働きます。自律神経のバランスが崩れることで、交感神経ばかりが優位になる状態が続くと、胃もたれやむかつき、吐き気などの症状につながってしまします。
ストレスや心労など精神的な問題は、多方面で朝の吐き気に影響している可能性があります。
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「午前中に吐き気がする」場合に考えられる病気とは
「午前中に吐き気がする」場合に考えられる病気について解説していきます。
十二指腸潰瘍
何らかの原因で十二指腸の粘膜が傷つき、みぞおちの痛みや食欲不振が見られます。みぞおちの痛みは食事と関連があり、胃潰瘍では食事中や食後に痛みがみられることが多いのに対し、十二指腸潰瘍では空腹時に痛みがみられることが多いのが特徴の一つです。
したがって、空腹時の早朝に痛みや吐き気などの症状がみられる可能性があります。主な原因としては、ヘリコバクター・ピロリ菌感染、喫煙、ストレス、痛み止めの使い過ぎなどがあります。
胃食道逆流症
肥満や食後すぐに横になったり、就寝前に食事を摂取することなどが原因で、胃の中の酸が食道へ逆流することにより、胸やけや呑酸(酸っぱい液体が上がってくる感じ)などの不快な自覚症状を感じたり、食道の粘膜がただれたり(食道炎)する病気です。
胸が詰まるような痛みを感じたり、のどの違和感や慢性的に咳が持続するケースもあります。
パニック障害
いわゆるトラウマというものやストレスなどの要因で、突然強い不安に襲われます。この不安発作に伴い、吐き気や動悸、息苦しさや呼吸困難、胸の痛みや苦悶感、お腹の違和感、汗、めまい、などが見られることがあります。
適応障害
人間関係や人生の転機、環境の変化などのストレスが原因で気分が落ち込んだり、不安や焦燥感が強まったり、涙もろくなったり泣きわめいたり、心と体に多様な症状が現れます。
うつ病の一歩手前の状態と考えられており、症状が長引くことで仕事や学校生活などに支障が出てしまうこともあり早めの対処が必要です。
良性発作性頭位めまい症(BPPV)
内耳の前庭にある耳石が三半規管に紛れ込むために、寝返りをうつ、起き上るなど頭の位置が変わった際に回転性のめまいが見られます。特殊なメガネを使った目の動き(眼振)の確認や難聴がないことなどを確認し診断されます。
脳腫瘍
脳腫瘍には良性のものから悪性のものまであります。年齢によりなりやすいものもあります。小児では神経膠腫(しんけいこうしゅ)、胚細胞腫瘍(はいさいぼうしゅよう)、髄芽腫(ずいがしゅ)、頭蓋咽頭腫(ずがいいんとうしゅ)、上衣腫(じょういしゅ)の5つがよく見られます。
なかでも神経膠腫の発生頻度が高いです。大人では、神経膠腫、中枢神経系原発悪性リンパ腫、髄膜腫(ずいまくしゅ)、下垂体腺腫(かすいたいせんしゅ)、神経鞘腫(しんけいしょうしゅ)、頭蓋咽頭腫(ずがいいんとうしゅ)、転移性脳腫瘍などがあります。
症状としては、脳内に腫瘍ができることで脳圧が上昇する頭蓋内圧亢進、また、腫瘍ができる部位により視力の障害、耳鳴り、性腺機能障害、麻痺など様々な症状が見られます。頭蓋内圧亢進症により頭痛や吐き気などの症状が見られます。
特にこれらの症状は朝に見られることが多いと言われています。この理由については別の記事で詳細に解説していますので、ぜひご覧ください。
関連記事:「午前中に頭痛がする」ときの原因や対策・治療法を解説
「午前中に吐き気がする」場合の治療法
朝や午前中の吐き気が過食や食事内容の乱れ(菓子類や揚げ物など糖質や油脂が多いものなど)、睡眠前の摂食が原因である場合は、食事量を減らし、食事内容の見直し、睡眠の少なくとも2-3時間前には食事を済ませておく、などの対策が必要です。
就寝前の食事摂取は糖尿病や肥満のリスクにもなるため、生活習慣病予防という観点からも眠前の食事摂取は控えることが望ましいです。
また、ストレスが強いと感じている場合は、十分な睡眠と適度な運動を取り入れ、リラックスする時間を作るようにしましょう。
ストレスは胃潰瘍、十二指腸潰瘍の原因になり、自律神経のバランスを崩すことで様々な不調につながるため、なるべくストレスを溜め込まないよう休養をとりましょう。
その他、上記でご説明した疾患についての治療方法をそれぞれ解説していきます。
十二指腸潰瘍
ヘリコバクター・ピロリ菌感染、喫煙、ストレス、痛み止めの使い過ぎが重要な原因であるため、ピロリ菌の除菌や禁煙、ストレスの解消、痛み止めの減量または胃薬を併用するなどが治療となります。
胃食道逆流症
日常生活面で気をつけることとしては、胃酸の逆流を防ぐために頭をあげて眠ったり、食後すぐに横にならないようにしましょう。
また、肥満があれば減量をし、喫煙や食べすぎ、高脂肪食にも注意が必要です。就寝前の食事摂取も控えましょう。食道の炎症がひどく、胸やけや吐き気などの症状が見られている場合は、胃酸を抑える薬剤を使用します。
パニック障害
薬物療法と認知行動療法が治療の大きな柱になります。薬物療法では抗うつ薬や抗不安薬などが使用されます。
認知行動療法としては、不安な状態やパニック発作になったときに落ち着けるように、呼吸法やリラックスできる方法を身につけるための自律訓練を繰り返すことで、心が整理でき、自己調節機能が回復するとされています。
適応障害
十分に休養をとり、ゆっくりと回復を待つことが重要です。ストレスに感じていた環境を整え、休養しても回復に乏しい場合などに睡眠薬や抗不安薬、抗うつ薬を少量投与します。
良性発作性頭位めまい症(BPPV)
めまいを改善させる効果のある抗めまい薬を使用することと、理学療法が特に重要です。めまいへの恐怖や不安で安静にしがちですが、目と頭を動かす訓練・体操をすることで治りが早くなります。
エプリー(Epley)法という方法がよく使用されていますが、受診時に冊子をもらえることが多いため参考にしてみてください。
脳腫瘍
良性か悪性か、また腫瘍ができた部位、病期にもよりますが、基本的には腫瘍を取り除くための外科手術が行われます。頭蓋内圧を下げるためにステロイドや高浸透圧利尿剤を使用することもあります。
もしかしたら起立性調節障害かも
早朝の吐き気は胃腸の問題だけではなく、ストレスや精神的な問題、自律神経の調整の問題が関与している可能性があります。
特に早朝、午前中に吐き気が強く、それ以外にも立ちくらみや頭痛、めまい、気分不良、腹痛、頭痛など多彩な症状がみられている場合は、起立性調節障害の可能性があります。
起立性調節障害とは、自律神経である交感神経と副交感神経の働きのバランスが崩れることでめまいやふらつき、たちくらみ、頭痛、腹痛など様々な症状を来す病気です。体が大きく成長し、ホルモンの変動が大きい思春期に多くみられます。
一般的に、私たちは朝起床頃より交感神経が優位になり、午後になると徐々に副交感神経の割合が増加していき、夜間には交感神経の働きは弱くなり、就寝が近くなる頃には副交感神経が優位に働き、睡眠中体を休めます。
起立性調節障害の子どもは交感神経と副交感神経の働きのバランスに不具合が生じ、適切に神経をスイッチすることができないため、色々な症状に悩まされます。
特に、朝は活性化されるべき交感神経がうまく活性化されないために体はなかなか覚醒状態にはなりません。朝起き上がることができず、起きたあともめまいやふらつき、頭痛、吐き気など体調不良が続きます。
時間とともに症状は和らぎ、午後からの活動は特に問題ないことが多いです。したがって、起床時や午前中にひどい吐き気が見られた場合には、起立性調節障害の可能性があります。
下記の記事では起立性調節障害の可能性があるのかをセルフチェックすることができます。ぜひ参考にしてみてください。
関連記事:起立性調節障害のセルフチェックリスト(子ども)|すぐにできる診断テスト
関連記事:大人の起立性調節障害セルフチェック項目|診断テスト
【参考】
田中大介 監修『起立性調節障害(OD)朝起きられない子どもの病気がわかる本』 講談社
日本小児心身医学会 起立性調節障害(OD)
日本消化器病学会ガイドライン