起立性調節障害とは

起立性調節障害の診断方法を年代別に解説|受診すべき診療科も紹介

2023年10月30日

この記事の監修者

医師(匿名)

医師歴:10年
勤務病院:某3次救急病院

一般社団法人 起立性調節障害改善協会

「午前中だけ妙に体調が悪い」「朝起きるとめまいがして学校や仕事に行けない」このような症状をお持ちの方は起立性調節障害の可能性があります。

起立性調節障害は出現する症状に個人差があり、幅広い年代で発症しうる病気のため、なかなか自分で起立性調節障害かどうか判断するのは困難でしょう。

しかし、起立性調節障害には明確に診断基準があり、また発症する年齢や年代によっても診断方法や受診すべき診療科が異なります。早期発見・早期治療のためにも、自身の年代にあった診断方法や診療科を把握しておくことが重要です。

そこで、この記事では医師である筆者の経験をもとに、起立性調節障害の診断基準や受診すべき診療科について解説します。この記事を読むことで、起立性調節障害を早期に発見できる可能性も上がるため、ぜひご一読ください。

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起立性調節障害の診断基準とは?

起立性調節障害の診断基準は、主に下記に示す3つのステップから成り立ちます。

  1. 下記に示す11の症状のうち、3つ以上、もしくは症状が強い2つ以上当てはまる場合に疑う
  2. 各種検査でその他の基礎疾患の可能性を否定する
  3. 新起立試験を行い、起立性調節障害のサブタイプに合致するか判定する

それぞれについて解説します。

起立性調節障害を疑う11の症状

起立性調節障害を疑う11の症状は下記の通りです。

  • めまいや立ちくらみ
  • 起立時の失神
  • 気分不良
  • 原因不明の動悸や息切れ
  • 特に午前中に調子が悪く起床困難
  • 顔面蒼白
  • 食欲不振
  • 腹痛
  • 倦怠感
  • 頭痛
  • 乗り物酔い

上記症状のうち、3つ以上、もしくは症状が強い2つ以上当てはまる場合は、起立性調節障害を強く疑います。

基礎疾患の除外

上記症状に当てはまる場合、起立性調節障害以外の基礎疾患を各種検査(Holter心電図や脳波検査・血液検査・尿検査・胸部レントゲン検査など)で除外する必要があります。

起立性調節障害以外にも、上記のような症状をきたす疾患が複数存在するためです。

具体的には、甲状腺機能異常・鉄欠乏性貧血・うつ病・心疾患・てんかんなどの神経疾患などを否定することが診断の上で重要です。

一般的に、起立性調節障害の場合は各種検査では異常所見を認めないため、なんらかの異常を認めた場合はその他の基礎疾患の可能性を考慮し、さらなる精査が必要となります。

新起立試験によるサブタイプ判定

各種検査でも異常を認めなければ、新起立試験を行い、脈拍や血圧の変動の様子から下記の4タイプに分類して、診断に至ります。

  • 起立直後性低血圧:起立後血圧回復時間が25秒以上、もしくは20秒以上かつ起立直後の平均血圧低下が60%以上
  • 体位性頻脈症候群:起立後3分以後の心拍数が115bpm以上、または起立中の心拍増加が35bpm以上
  • 血管迷走神経性失神:起立中に血圧低下し、意識消失
  • 遷延性起立性低血圧:起立後3〜10分経過後、収縮期血圧が起立前より15%以上低下、または20mmHg以上低下

以上の過程を経て、起立性調節障害と診断されます。

特に、最初の11の症状については自宅でセルフチェックも可能なため、ぜひ一度チェックしてみてください。

世代別に起立性調節障害の診断方法を解説

世代によって起立性調節障害の診断方法や症状の現れ方は若干違いがあります。

ここでは、各世代での診断方法を紹介します。

【小学生】起立性調節障害の診断方法

小学生における起立性調節障害の診断方法は、新起立試験に加えてヘッドアップティルド試験を行うことが一般的です。

ヘッドアップティルド試験とは医療機関で行う特殊な検査で、体位の変化から血圧や脈拍の変化を測定し、自律神経の機能を評価する検査です。

特に小学生高学年では、急速な肉体の発達に自律神経の成長が追いつかず、起立性調節障害が発症しやすいため、診断は慎重に行う必要があります。

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【中学生】起立性調節障害の診断方法

中学生における起立性調節障害の診断では、睡眠時間をチェックしましょう。

中学生は思春期で、ホルモンバランスが乱れやすいため、自律神経も乱れやすいです。

一方で、親御さんとの距離感が小学生の頃とは変わり、会話が減ってしまうこともあるため、症状を確認しづらい傾向にあります。

そこで、起立性調節障害は朝に症状が強く起床できず、夜になると症状が改善してなかなか寝付けなくなるため、就寝時間や起床時間をチェックすることが診断の糸口になるでしょう。

【高校生】起立性調節障害の診断方法

高校生の起立性調節障害の診断においては、学業の遅れに注目することが重要です。

学業の遅れは身体の症状ではありませんが、義務教育の小中学生とは異なり、高校生の場合は進級や進学に大きく関わります。

症状によって通学に支障をきたし、学校でも思うように集中できないため、学業が遅れる原因となります。

これまで学業に問題なかった子供に、突然の遅れが生じた場合は起立性調節障害を疑ってみてもいいでしょう。

【大学生】起立性調節障害の診断方法

大学生の起立性調節障害の診断においては、環境の変化による症状の悪化に注目することが重要です。

基本的に起立性調節障害は小学生や中学生で発症しやすく、大学生での新規発症は稀です。

むしろ、小児期に落ち着いていた症状が大学進学などの環境の変化によって急速に悪化することがあるため、一度治った方でも注意しましょう。

起立性調節障害はあくまで身体疾患ですが、精神的なストレスによって自律神経の乱れが悪化し、症状が進行する可能性があることを知っておきましょう。

【大人】起立性調節障害の診断方法

大人の起立性調節障害の診断においては、起床時だけでなく仕事中の体調の変化にも注意することが重要です。

長時間のデスクワークでは脳の血流が低下しやすく、起立性調節障害の症状が出やすいです。

また、上司や部下との対人関係によるストレスや、過重労働による生活の乱れも症状増悪の原因となります。継続的な体調不良を自覚している場合、ぜひ一度セルフチェックすべきでしょう。

起立性調節障害の症状が出たら何科に行くべき?何科で診断される?

起立性調節障害の症状が出た時、何科に受診すべきか把握していない方も多いのではないでしょうか?

また、受診すべき診療科は年代や年齢によって異なることをご存知でしょうか?

自分の考える診療科に行っても場合によっては「専門外です」と言われ、受診できない可能性もあるため、事前に年代別の受診すべき診療科を把握しておきましょう。

小学生の場合

小学生(6〜12歳)の場合、小児科を受診すべきです。

起立性調節障害は特に小児期に発症しやすい病気であり、小学生の約5%が発症すると報告されているため、多くの小児科医も対応には慣れています。

まずは幼少期に受診歴のあるかかりつけ医か、家から通いやすい小児科を訪ねると良いでしょう。

中学生の場合

中学生(12〜15歳)の場合、小児科を受診すべきです。

何歳までが小児科に受診できるかについては厳密な規定や規則はありませんが、一般的には中学3年生までとしている小児科が多いです。

中学生でも起立性調節障害は発症しやすく、中学生の約10%が発症すると報告されているため、疑わしい場合は受診歴のあるかかりつけ医か、家から通いやすい小児科を訪ねると良いでしょう。

なお、中学卒業後も一定の回復が見られるまではそのまま受診させてくれる小児科もあるため、通院している小児科に確認することを勧めます。

高校生の場合

高校生(15〜18歳)の場合、成人と同じ内科に受診すべきですが、出現している症状によって受診すべき診療科も異なります。

これは、「起立性調節障害=〇〇科に受診すべき」という決まりがないためです。

例えば、ふらつきや失神がメインの症状なら神経内科、血圧や脈拍の問題がメインなら循環器内科、嘔気や腹痛が強いなら消化器内科、心理・精神的症状が強い場合は心療内科に受診すべきです。

その上で、さまざまな診察や検査を経て起立性調節障害の診断に行き着くため、最初はざっくりと気になる症状に見合っていそうな内科を選びましょう。

大学生の場合

大学生の場合も高校生と同様で、症状に見合った内科に受診すべきです。

自身の困っている症状を把握し、それに見合った診療科を選びましょう。

もし、自分ではよくわからない場合は総合病院の一般内科に受診しておけば間違いないでしょう。

大人の場合

大人の場合、高校生や大学生と同様に、症状に見合った内科に受診すべきです。

しかし、大人の場合は子供と違い、会社や家庭の都合のため簡単には休めない方も多いでしょう。

起立性調節障害は治療期間に個人差があり、場合によっては長期の通院が必要になる可能性もあるため、会社や自宅などから近く、より受診しやすい病院を選びましょう。

起立性調節障害は非薬物療法で根気強く治療を続けていきましょう

適切な診療科に受診し、発症早期から起立性調節障害と診断されても、それですぐに病気が治るわけではありません。

特に起立性調節障害には特効薬などなく、非薬物療法で根気強く治療を続ける必要があります。

具体的には、日常での行動を気をつけて脳血流を保持するように姿勢を保つ・規則正しい食事や睡眠を心掛ける・可能であれば軽い運動を行うなどが挙げられます。

また、他にもカウンセリングなどによる心理的サポートも効果的な治療の1つです。

多くの発症者の場合、自然経過で症状が改善していくため、それまでは根気強く非薬物療法で起立性調節障害と付き合っていくことが重要です。

下記の記事では、起立性調節障害の具体的な治し方についてさらに詳しく解説されているため、ぜひ参考にしてください。

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【参考文献】
一般社団法人 小児心身医学会 | (1)起立性調節障害(OD)
起立性調節障害サポートグループ

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