「子供が不登校になってしまったが原因がわからない」「不登校になった子供に対してどう接すれば良いの?」
このような疑問や不安をお持ちの親御さんも少なくないでしょう。
不登校に陥る小学生は近年急激に増加傾向であり、令和4年度の文部科学省の調べではなんと3.2%もの小・中学生が不登校に陥ると報告しています。また近年ではその割合も急激に増加傾向になり、文部科学省は警鐘を鳴らしております。
対人関係の不和・生活リズムの乱れなど、不登校の原因はさまざまですが、中には心身の不調をもたらすような病気に罹患している可能性もあるため、注意が必要です。
もし背景に病気が隠れている場合、適切に対処しなければ症状は悪化していく可能性もあるため、早期に診断して適切に対応することが肝要です。
そこで、この記事では小学生が不登校になる原因や病気について詳しく解説します。実際に不登校になってしまった場合の対処法も紹介するため、是非ご一読ください。
小学生が不登校になるのはなぜ?主な原因とは
文部科学省の報告する「令和4年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」では、小学生における不登校の増加を強く危惧しています。
調査結果によると、小・中学校における不登校児童生徒数は299,048人(前年度244,940人)であり、前年度から54,108人(22.1%)増加し、過去最多でした。在籍児童生徒に占める不登校児童生徒の割合は前年度2.6%であったのに対し、今年度は3.2%でした。
小学生は精神的にも身体的にも成人と比較して未熟であり、さまざまな要因で不登校に陥るため、注意が必要です。ここでは、その原因について詳しく解説します。
無気力・不安
意外に思うかもしれませんが、小学生が不登校になる最大の原因は無気力・不安であり、小学生の不登校の原因の実に約半数を占めます。無気力であったり不安感が強い子供は、通学に対する意欲を維持できず、不登校に陥る可能性が高いです。
なんらかの理由で自己肯定感が低かったり、日々の生活に積極的に取り組む様が見られない場合、無気力や不安感で不登校になる可能性が高いです。また、無気力や不安の原因は明確に特定できないことが多く、親御さんが子供の感情に寄り添えなくなることも少なくありません。
一方で、原因が家庭内不和やなんらかの病気の可能性もあるため、まずはしっかり子供の話を傾聴することが重要です。
生活リズムの乱れ
小学生の不登校の原因のうち、無気力・不安の次に多い原因は生活リズムの乱れであり、その割合は不登校全体の約13%です。生活リズムが乱れると、睡眠などを司る自律神経が乱れてしまい、朝にスッキリ目覚めることができなくなり、通学や学業に支障をきたします。
具体的には、深夜の暴飲暴食・夜間のスマホいじりやゲーム・不適切な時間の運動や入浴・休日の寝溜めなどが自律神経のバランスを乱す原因となるため、注意が必要です。
子供の生活リズムが整っていない場合、状態が悪化する前に是正するようにしましょう。
親子の関わり方
小学生が不登校になる原因は、もしかしたら親御さんにあるかもしれません。親子関係がいびつな場合、子供の心身に影響を与えて不登校に陥るケースは少なくありません。親子の関わり方が原因となるケースは、不登校全体の約12%です。
親御さんが過保護・過干渉である場合や、逆に愛情が希薄な場合は子供の親への依存度が高まってしまい、不登校の原因となるため注意が必要です。他にも、スパルタ教育や子供の意思を尊重しない教育方針は子供の学習意欲を著しく低下させ、不登校の原因となります。
自分が原因で子供が不登校になっていることにショックを受ける親御さんも多いと思いますが、現実を受け止めて行動を改めれば状況が改善する可能性も高いため、これを機に親子の関わり方を見直すと良いでしょう。
対人関係の不和
いじめ以外の、対人関係の不和で不登校になる子供も少なくありません。むしろ、いじめが原因である場合よりも、いじめ以外の対人関係の不和の方が原因としては多いです。
例えば、うまく周りの子供と会話ができない、なんでもないようなことにも強い羞恥心を感じてしまうなど、他者とのコミュニーケーションに問題を抱えて学校生活がうまくいかなくなるケースも少なくありません。
家庭内の様子だけでは察知できない可能性もあるため、学校と密に連携して早期発見・早期対策に努める必要があるでしょう。
いじめ
いじめは不登校の原因としては全体の0.3%と頻度の高いものではありませんが、小学生におけるいじめの報告件数自体は年々増加傾向にあるため注意が必要です。
令和4年のいじめの認知件数は全国で551,944件であり、特に小学生低学年では報告が多く、進学とともに件数も低下していく傾向にあります。
主な報告内容は、冷やかしや悪口、暴力、仲間外れなどが挙げられます。また、近年ではスマホやPCでの誹謗中傷なども増えているようです。
子供がなかなか親御さんにいじめの事実を伝えられず、発見が遅れる可能性もあるため、親御さんは子供の様子の変化などに目を光らせ、日頃から積極的にコミュニケーションをとっておくと良いでしょう。
もしかしたら病気?小学生が不登校になった場合に考えられる病気とは
小学生が不登校になった場合、なんらかの病気に罹患している可能性もあるため、 注意が必要です。放置すれば、場合によって命の危険性もある病気の可能性もあるため、早期から適切に対策すべきでしょう。
ここでは、小学生が不登校になった場合に考えられる病気について解説します。
適応障害
不登校の原因として、適応障害が挙げられます。適応障害とは、自分の置かれた状況にうまく適応することができず、不安感や抑うつ気分、不登校、対人トラブルなど、さまざまな症状をきたす病気です。
環境の変化などをきっかけに突如発症する子供が多いですが、原因となっている事象が比較的同定しやすいため、その原因から距離をおくことで症状の改善が見込めます。
一方で進学や進級などの環境変化から距離をおくことは困難であり、場合によっては長期化して不登校に陥ってしまう可能性もあるため、学校と相談して対策を考える必要があるでしょう。
パニック障害
不登校の原因として、パニック障害が挙げられます。パニック障害とは、突然なんの前触れもなく動悸・息切れ・めまいなどの症状が出現し(これをパニック発作と呼ぶ)、日常生活に支障をきたす病気です。
パニック発作がいつ起こるかわからない恐怖や不安感(これを予期不安と呼ぶ)から、外出を控えるようになり不登校になってしまう子供も少なくありません。
また、パニック発作が起こったときに助けが得られにくい電車やバスの使用も避けるようになるため、通学に支障をきたして不登校となってしまう子供もいます。
治療には医療機関での薬物療法が必要となることもあるため、上記症状に当てはまる方は一度医療機関への受診を検討しても良いでしょう。
うつ病
不登校の原因として、うつ病も挙げれらます。うつ病は中高年だけでなく、小児期でも発症しうる疾患であるため、小学生でも注意が必要です。
脳内の神経伝達物質であるノルアドレナリンやセロトニンがうまく機能しなくなることで、抑うつ気分や食思不振、意欲の低下や不眠など、さまざまな症状をきたす病気です。
うつ病の場合、これまでは本人の気質や性格の問題と考えられてきましたが、現在では薬物治療を中心とした専門的な治療が必要な疾患であると認識されており、早期からの治療が必要となります。
放置して症状が進行すれば、希死念慮などの症状や、最悪の場合自殺企図に至る可能性もあるため、注意が必要です。
小学生が不登校になった場合の対処法|親ができることとは?
小学生が不登校になった場合、どう対処していいかわからずストレスを感じてしまう親御さんも少なくないでしょう。不登校の子供に対してつい強く当たってしまい、子供の精神状態をさらに悪化させる結果にも繋がり兼ねません。
そこで、ここでは小学生が不登校になった場合に親が取るべき対処法について解説します。
子供の話に耳を傾ける
まずは子供の話に耳を傾けて、子供の抱えている心の問題を認識することが重要です。特に、不登校初期は親御さんの中でも「子供が甘えているだけ」「子供が怠けているのでは?」と穿った考えを持ってしまう方もいます。
しかし、実は学校でいじめられていたり、なんらかの病気に罹患している可能性もあるため、子供の話には注意深く耳を傾けることが肝要です。子供の話を頭ごなしに否定すると心理状態をさらに悪化させてしまうため、頭ごなしの否定は避けましょう。
子供に休んでもいいことを伝える
不登校の子どもに対しては、学校に行くように訴えるのはなく、学校を休んでも良いことを伝えましょう。不登校の子供は「学校に行かなくてはならないのに行けない」という心理状況であることが多いです。
そのため、学校に行かなくても良いことを伝えることで、心理的プレッシャーが軽減し、精神的に安定する可能性があります。「どうして学校に行けないの?」などの心無い言葉は控えるようにしましょう。
学校と連携を取る
子供が不登校になった時、学校との連携は必要不可欠です。小学生の場合、基本的に進級には支障をきたしませんが、不登校では学業に遅れが出てしまう可能性もあるため、自宅での学習方法の指導や保健室登校の可否などを相談しましょう。
また、学校内での対人関係やいじめの有無などは学校側でしか把握できない面もあるため、学校との連携は必要不可欠です。
医療機関を受診する
上記のような対処を取っても、子供の不登校の原因がわからない場合や一向に改善しない場合は、医療機関への受診も検討しましょう。不登校の原因が生活習慣や対人関係ではなく、上記で記載したような病気の可能性があるためです。
特にうつ病の場合は放置すれば命の危険性もあるため、早期に発見し医療機関での適切なケアが肝要です。受診すべき診療科は、精神科・心療内科・小児科などが挙げられます。
もしかしたら起立性調節障害かも
子供が不登校に陥った場合、もしかしたら起立性調節障害かもしれません。
起立性調節障害とは、特に小学生高学年から中学生にかけて身体が急激に成長する際、自律神経の成長が身体の成長についていけず、さまざまな症状をきたす身体疾患です。
自律神経は血圧・脈拍・睡眠・体温・消化管運動・排尿など多くの機能を調整しているため、自律神経のバランスが乱れることで各機能に支障をきたします。
起立時のめまいやふらつき、起床困難、腹痛などさまざまな症状が出現しますが、これらの症状が特に起床時や午前中に生じやすいため、起立性調節障害に罹患すると通学や学業に支障をきたし、不登校の原因となります。
多くの場合は身体の成長が鈍化するとともに自然軽快しますが、中には重症化してしまう子供もいるため、早期に診断し、適切に治療することが重要です。
下記の記事では、子どもにおける起立性調節障害のセルフチェック方法が詳しく解説されているため、下記の記事を参考にまずはセルフチェックしてみましょう。