子どもの約10%が発症するといわれる起立性調節障害。一度発症すると午前中や起床時に倦怠感やめまいなどさまざまな症状に襲われ、学校への登校や午前中の授業に支障が出て、学校生活や交友関係にも支障をきたす可能性のある病気です。
また1%の子供では症状が重症化し、長期的に学校を休みざるを得なくなり、場合によっては進級や進学にも影響を及ぼす可能性があります。そのため、親御さんからすれば発症は避けたいところですが、もしかしたら発症の原因はお母さんに自体にあるかもしれません。
それは、母親の性格が子どもの起立性調節障害の発症に寄与している可能性があるためです。そこでこの記事では、起立性調節障害の発症と母親の関係性について詳しく解説します。ぜひこの記事を参考に、自身の性格や子どもとの関わり方を一度見直してみると良いでしょう。
起立性調節障害は親が原因?なりやすい母親の性格とは?
- 起立性調節障害は自分の子供への接し方が良くなかったから?
- 自分の性格が子どもに悪影響を与えているのでは?
このような疑問や不安を抱えている親御さんも少なくないでしょう。
実際に、起立性調節障害を発症する子どもの中には心理的背景を伴う心身症であることも多いです。心身症とは、心のストレスが何らかの形で身体に症状として出現する病態を指します。
特に小学生高学年〜中学生で発症することの多い起立性調節障害では、多感な時期の母子関係によるストレスが発症に関与している可能性が示唆されます。では、起立性調節障害の原因は本当に母親の性格なのでしょうか?
起立性調節障害の原因
まず結論から言えば、起立性調節障害の直接的な原因は母親の性格ではありません。起立性調節障害の原因は、急激な身体の発達に対して自律神経の発達が追いつかず、自律神経のバランスが乱れることであると考えられています。
自律神経とは交感神経と副交感神経の総称であり、相互が作用し合うことで血圧や脈拍・体温・覚醒・排尿・排便など、さまざまな生理機能をコントロールしています。この自律神経が乱れるためにさまざまな症状が出現するわけです。
通常、起立時には重力に伴って下肢に多く血液が流れていきますが、脳血流が低下しないように交感神経が自動で活性化し、下肢の血管収縮や心拍動の増強を促し、脳血流が低下しないように機能します。
しかし、起立性調節障害では起立時に交感神経がうまく活性化しないため、脳血流が低下してめまいやふらつきが生じるわけです。また消化管運動も影響を受け腹痛や嘔気・嘔吐を、睡眠リズムにも影響を与えて不眠症を起こすこともあります。
以上が、現状で考えられている起立性調節障害の病態であり、あくまで脳血流の低下する身体疾患であると考えられています。一方で、先述したように心理的側面の影響を受けないわけではありません。
これは、精神的ストレスによって自律神経のバランスが乱れやすくなるためです。つまり、起立性調節障害そのものは身体疾患ですが、精神的ストレスによって症状が顕在化したり増悪する可能性のある疾患と言えます。
そのため、子どもと母親の性格が合わず、家庭内で子どもがストレスを抱えるようなことがあれば、起立性調節障害の症状が悪化する可能性があり、注意が必要です。
起立性調節障害になりやすい母親の性格
では、具体的に母親がどのような性格の場合、子どもは起立性調節障害を発症しやすくなるのでしょうか?
実は過去に国内で起立性調節障害の母親80名を対象に、母親の性格の傾向を分析するための心理テストを行った研究があります。
その結果、起立性調節障害の母親の性格には一定の傾向が認められており、主に下記の2つの性格であることが多いことがわかっています。
- 育児に関して主体性に欠け、自分自身での判断で動けない人
- よく言えば優しいが、悪く言えば子供に対して過保護・過干渉な人
①のタイプの母親は、子どもが不安や疑問を抱えている時に上手に導くことができず、上辺だけの返答や曖昧な返答が目立つことで子どもを不安にさせてしまい、ストレスを与えてしまうと分析されています。
②のタイプの母親、比較的内向的で弱い性格であるため、よく言えば優しいお母さんですが、悪く言えば子供に対する過剰な不安や心配が子供自身を不安にさせてしまう性格です。
つまり、母親がしっかり子どもの疑問や不安に寄り添い、必要な時には導いてあげることが起立性調節障害の対策には必要なのです。
起立性調節障害が悪化しないため!母親や家族ができることは?
では実際に起立性調節障害を発症してしまった場合、一緒に暮らす母親や家族はどのように対処するべきなのでしょうか?
朝起きれないことを叱責してしまっては、子供にさらなるストレスがかかってしまい、治るものも治りません。子どもとの接し方を間違えれば、症状はさらに悪化してしまう可能性もあります。
そこで、ここでは、起立性調節障害が悪化しないために母親や家族ができることを5つ紹介します。
否定せず、無理に話しかけない
まず最も重要なことは、子どもの考えや話を傾聴し、否定しないことです。起立性調節障害はあくまで身体疾患であり、努力や根性でどうにかなるような病気ではありません。
なぜ通学できないのか、なぜ起きられないのかと叱責すればさらに症状が悪化する可能性もあるため、叱責は控えましょう。また、起立性調節障害の子どもは親に対して理解は求めますが、過干渉はストレスとなってしまいます。
何でもかんでも聞いてしまうとストレスにもなってしまうため、距離感を考え、無理に話しかけないように気をつけましょう。
規則正しい食事を提供する
起立性調節障害の子供には、規則正しくバランスの良い食事を提供してあげましょう。バランスの偏った食事や、不規則な食生活は自律神経の乱れにつながるためです。
特に、起立性調節障害の子どもはビタミンB群や鉄分・タンパク質の摂取によって症状改善が見込めるため、これらの成分の豊富なレシピを検索してみると良いでしょう。
学校と連携をとって学業を支える
起立性調節障害によって通学や通塾ができず、周りの子どもに学業で遅れをとることは強いストレスとなります。そのストレスによって症状が悪化すれば負のスパイラルに陥るため、学業の面でも家族のサポートが重要です。
自宅で一緒に勉強を手伝ってあげたり、体調の回復する午後に塾に連れて行くことも選択肢の1つです。また、どうしても学校に通えない場合は家庭教師を雇って自宅での学業を支える選択肢もあります。
また、学校ともよく相談・連携して、出席の仕方や進路・進級についてサポートしてあげることも肝要です。
頼み事を増やす
起立性調節障害の子どもに対して、自宅で簡単に実践可能な頼み事を増やしてみましょう。症状の強い子どもは、学校に行けない自分や、体調が悪くて何もできない自分に対して自己肯定感が低下しています。
比較的簡単に達成できそうな頼み事を頼むことで、子どもの自尊心や自己肯定感を支える効果が期待できます。例えば、食器洗いや机の掃除・洗濯物の取り込みなどです。
またこれらの作業は身体を動かすことで、ストレスが緩和される可能性もあるため、一石二鳥です。一方で、あまりにハードルの高い頼み事は自己肯定感を下げてしまうため注意しましょう。
一緒に達成したい目標を考える
起立性調節障害の治療の基本は、一旦しっかり休息して心や身体を休めることです。しかし、ダラダラとその期間が遷延すると生活のモチベーションが低下してしまうため、まずは達成しやすい目標を掲げて生活すべきです。
少なくとも昼までに起きる・1日に5分間でもストレッチを行う・朝起きたら日光を浴びるなど、比較的簡単に達成できそうな目標を一緒に立ててあげましょう。
これらの目標を達成できるたびに子どもの自己肯定感が向上し、徐々に目標のハードルも上げることができます。一方で、前項の頼み事と同じで、あまりにも高い目標は達成できず、挫折感を感じてしまうため、目標設定には注意が必要です。
上記のような家族・母親のサポートは子どもにとって大きな支えになります。
一方で、起立性調節障害にはこれといった特効薬などはなく、子ども自身が日常生活で実践すべき非薬物療法が治療の柱です。そのため、家族はもちろんのこと、子ども自身が起立性調節障害の治し方を把握しておく必要があります。
下記の記事では起立性調節障害の治し方について詳しく解説してあるため、起立性調節障害にお悩みの方はぜひ参考にしてみてください。