起立性調節障害とは

長時間立っていられない原因は?考えられる病気・受診の目安を解説

2026年1月14日

この記事の監修者

医師 錦惠那

医師 錦 惠那

内科一般・腎臓内科・透析科・産業医
保有資格:日本内科学会内科専門医・日本医師会認定産業医
2018年から起立性調節障害患者の診療を行い、累計30人以上の起立性調節障害患者を担当。

一般社団法人 起立性調節障害改善協会

長時間立っていられないのはなぜ?

それ、体力や根性の問題ではないかもしれません。

  • 朝礼や通学電車で立っていられない
  • レジや接客で立ちっぱなしがつらい
  • 倒れそうになるのに、周りには元気そうに見える

こうした悩みは、甘えや体力不足ではなく、体の調整機能の不調が原因のことがあります。特に思春期の子どもから若い大人に多いのが、起立性調節障害(OD)です。

こちらの記事では、「長時間立っていられない」症状について、考えられる原因、対処法、受診の目安、実際の改善事例までをわかりやすく解説していきます。


朝礼や電車などで長時間立っていられない場合、起立性調節障害が関係していることもあります。

朝起きられない症状や立ちくらみ、倦怠感などを伴う場合は、起立性調節障害のセルフチェックも参考にしてください。

長時間立っていられない原因・考えられる病気

長時間立っていられない原因・考えられる病気を5つ解説していきます。

起立性調節障害(OD)

起立性調節障害とは、立ち上がったときや立ち続けているときに、血圧や心拍数などを調節する身体の働きがうまく機能せず、さまざまな症状が現れる身体疾患です。

人が立ち上がると、重力によって血液が下半身にたまりやすくなります。通常は血管の収縮や心拍数の変化などによって、心臓へ戻る血液量や血圧が保たれます。しかし、この調節がうまくいかないと、めまい、立ちくらみ、動悸、気分不良などが現れ、長時間立っていられなくなることがあります。

また、朝起きられない、午前中に体調が悪いなどの日内変動も、起立性調節障害でよくみられる特徴です。思春期の子どもに多い病気ですが、大人にも症状がみられる場合があります。

疲労やストレスなどの心理的・社会的な要因が、症状に影響することもあります。ただし、ストレスだけを原因とする病気ではなく、本人の気持ちや根性で症状が生じているわけでもありません。

▼よくある特徴

  • 朝が特につらく、午前中は立っていられない
  • 立ち続けると、頭がぼーっとする、気分が悪くなる
  • 動悸、息苦しさ、吐き気を感じることがある
  • 横になると楽になる

本人はとてもつらいのに、外からは分かりにくいため、誤解されやすいのも特徴です。

貧血

貧血とは、血液中のヘモグロビン濃度が低下した状態です。ヘモグロビンは全身へ酸素を運ぶ役割を持つため、貧血になると、めまいや立ちくらみ、動悸、息切れ、倦怠感などが現れることがあります。

貧血の原因はさまざまです。成長期には身体の発達に伴って鉄の必要量が増え、月経のある女性では経血によって鉄が失われます。また、偏った食生活や過度なダイエット、消化管からの出血、婦人科疾患などが関係する場合もあります。

30~40代を含む成人では、胃潰瘍や十二指腸潰瘍などによる消化管出血が原因となることもありますが、年代だけで原因を判断することはできません。

貧血の有無や原因は、血液検査などで確認する必要があります。長時間立っていられない症状に加えて、顔色の悪さ、息切れ、動悸、疲れやすさなどがみられる場合は、医療機関を受診しましょう。

貧血のセルフチェックについては、下記の記事も参考にしてください。

起立性低血圧・体位性頻脈症候群など

立ち上がったときや立ち続けているときに血圧が低下する起立性低血圧や、血圧の大きな低下がなくても心拍数が過度に増える体位性頻脈症候群などでも、長時間立っていられなくなることがあります。

座った状態や横になった状態から立ち上がると、重力によって血液が下半身に移動します。通常は血管の収縮や心拍数の変化、下肢の筋肉によるポンプ作用などによって、心臓へ戻る血液量や血圧が保たれます。

この調節がうまくいかない場合、立ちくらみ、めまい、動悸、頭がぼんやりする、気が遠くなるなどの症状が現れます。原因や病型によって対処法が異なるため、繰り返す場合は血圧や心拍数の変化を医療機関で確認することが大切です。

起立性低血圧のセルフチェックについては、下記の記事も参考にしてください。

 

心臓・循環器系の病気

心臓や血管の病気によって全身へ十分に血液を送りにくくなると、ふらつき、息切れ、動悸、失神などが現れ、長時間立っていられなくなる場合があります。

原因としては、不整脈、心臓の筋肉や弁の病気、冠動脈の病気など、さまざまな可能性が考えられます。症状だけで原因を判断することはできないため、心電図や血液検査などが必要になることがあります。

特に、次のような場合は早急に医療機関を受診してください。

  • 胸の強い痛みや圧迫感がある
  • 強い息苦しさや激しい動悸を伴う
  • 運動中や運動直後に失神した
  • 失神して頭を打った、意識が戻りにくい

症状が強い場合や現在進行している場合は、救急受診を検討しましょう。

一時的な原因・体調要因

一時的な体調不良でも同様の症状が出ることがあります。

夏場や体調不良で食事摂取ができない場合、睡眠不足で疲労が蓄積している場合、迷走神経反射といって注射や過度の緊張などで気分が悪くなることあります。

長時間立たなければいけない場面での対処法は?

長時間立たなければいけない場面での対処法を5つ解説します。

「立ちっぱなし」を前提にせず、途中で休める環境を作る

起立性調節障害などで長時間立っていられない場合、「立ち続けるのが当たり前」という環境そのものが症状を悪化させます。実は、環境を調整すること自体が治療の一部と考えられています。

学校では朝礼や集会の際に椅子を使わせてもらう、職場ではレジ業務や作業の合間に短時間座れるよう相談するなど、「少し休める」工夫が重要です。無理を続けると、めまいや動悸が強くなり、回復までに時間がかかることもあります。

医師の診断や説明があると、周囲の理解を得やすくなり、本人の心理的な負担も軽減されます。「立てない=怠けている」ではなく、体の特性に合わせた配慮が必要だという意識を共有することが大切です。

立つ前・立っている最中に血流を促す動きを取り入れる

長時間同じ姿勢で立ち続けると、重力の影響で血液が下半身にたまり、脳への血流が不足しやすくなります。そこで大切なのが、立ったままできる小さな動きを意識することです。

かかとの上げ下げや足踏み、軽い体重移動を行うことで、足の筋肉がポンプの役割を果たし、血液を心臓へ戻しやすくなります。周囲から目立たない程度の動きでも十分効果があります。また、「じっと立つ」ことを避け、同じ姿勢を続けないことがポイントです。

めまいや動悸が出る前に、こまめに動く習慣をつけることで、症状の予防につながります。

朝の動作をゆっくり行い、急に立ち上がらないようにする

特に、起立性調節障害がある場合、朝は血圧や心拍数の調整が特にうまくいかず、急に立ち上がることで強いめまいや動悸が起こりやすくなります。

起床後はすぐに立ち上がらず、布団やベッドの上で足首を動かしたり、軽く体を伸ばすなどして、体を目覚めさせることが大切です。その後、一度ゆっくり座ってから立つようにすると、体への負担を減らすことができます。

朝は時間に追われがちですが、余裕をもって行動することで、症状の出現を防ぎやすくなります。朝の過ごし方を工夫することは、1日の体調を整える第一歩にもなります。

体調や症状を周囲に伝え、無理をしない選択をする

「立っていられない」「気分が悪くなる」といった症状は、外からは分かりにくく、誤解されやすいものです。そのため、体調や困っている状況を、家族や学校、職場の人に言葉で伝えることが大切になります。無理をして我慢を続けると、症状が悪化し、回復までに時間がかかることもあります。

必要に応じて医師の説明や診断書を活用し、配慮をお願いするのも一つの方法です。無理をしない選択は甘えではなく、自分の体を守るための大切な判断です。

つらくなる前に座る・横になるなど早めに対処する

めまいや動悸、冷や汗、吐き気、目の前が暗くなる、頭がぼんやりするといった症状が現れた場合は、我慢せず早めに座りましょう。

失神しそうな場合は、転倒しないよう安全な場所で横になることが大切です。可能であれば仰向けになり、脚を少し高くすると楽になる場合があります。横になれない場合は、その場にしゃがむなどして転倒を防ぎましょう。

症状が落ち着かない場合や、胸の痛み、強い息苦しさ、激しい動悸、意識が戻りにくい状態などを伴う場合は、周囲に助けを求め、救急受診を検討してください。

病院を受診すべき症状の目安・検査の流れは?

病院を受診すべき症状の目安・検査の流れを解説します。

受診を検討すべき症状の目安

長時間立っていられない状態が続く場合、「少し様子を見ればよくなるだろう」と我慢してしまう人は少なくありません。しかし、症状が繰り返し起こる、日常生活に支障が出ている場合は、早めの受診が大切です。特に、立っているとめまいや動悸、息苦しさ、気分不良が起こり、座る・横になると楽になる場合は、体の調整機能に何らかの不調が起きている可能性があります。

また、朝に症状が強く、学校や仕事に行けない日が増えている場合も、受診を考える目安となります。さらに、動悸が強い、胸の痛みを伴う、失神したことがある場合は、別の病気が隠れていることもあるため、自己判断せず医療機関に相談しましょう。

医師に相談することで、原因を整理し、適切な対処法や環境調整のアドバイスを受けることができます。

何科を受診すればいい?

長時間立っていられない、めまいや動悸が続く場合は、年齢によって受診先が異なります。小学生から高校生までは小児科が基本で、起立性調節障害に慣れている医師も多いと思われます。成人の場合は内科を受診するとよいでしょう。

動悸や息切れ、胸の違和感が強い場合は、循環器内科を紹介されることもあります。

どの診療科に行けばよいか迷う場合でも、まずは身近な医療機関やかかりつけ医に相談することが大切です。

診察でよく聞かれること

長時間立っていられない症状で受診すると、医師はまず、いつ頃から症状が出ているのかを確認します。次に、立ったときや立ち続けたときにどのような症状が出るのか、横になると楽になるかなど、体勢による変化について詳しく聞かれます。

また、朝と午後で症状に差があるか、学校や仕事にどの程度影響しているかも重要なポイントです。あわせて、睡眠時間や食事量、水分摂取の状況、運動習慣などの生活リズムについても確認されます。

これらの情報は診断の大切な手がかりになるため、症状が起きる状況を簡単にメモしておくと、診察がスムーズに進みます。

検査内容と診断の流れ

長時間立っていられない症状で医療機関を受診すると、まず問診や診察によって、症状の現れ方や全身の状態を確認します。

そのうえで、横になった状態と立った状態で血圧や脈拍を測定し、姿勢によってどのように変化するかを調べます。子どもの起立性調節障害が疑われる場合は、一定時間横になった後に立ち上がり、血圧、心拍数、症状などの変化を確認する新起立試験が行われることがあります。

必要に応じて、次のような検査も行われます。

  • 血液検査:貧血、脱水、甲状腺機能などを確認する
  • 心電図検査:不整脈などの心臓の問題を確認する
  • その他の検査:症状に応じて心臓超音波検査などを行う

問診や検査の結果を総合し、起立性調節障害なのか、ほかの病気による症状なのかを判断します。起立性調節障害と診断された場合は、非薬物療法を基本に、必要に応じて薬物療法や学校・職場での環境調整を組み合わせます。

起立性調節障害の診断に用いられる新起立試験について詳しく知りたい方は、下記の記事も参考にしてください。

診断後の向き合い方

起立性調節障害などと診断された後は、症状と上手につき合っていくことが大切です。治療の基本は、まず非薬物療法と呼ばれる生活習慣の見直しです。十分な睡眠、水分や食事をしっかりとること、朝の動作をゆっくり行うこと、無理をしない生活リズムを整えることが症状の改善につながります。これらだけで症状が軽くなる人も少なくありません。

一方、日常生活に支障が強い場合には、血圧や自律神経の働きを助ける薬が使われることもあります。薬は症状を和らげるための手段であり、生活改善と組み合わせることが重要です。

また、本人の努力だけでなく、家族や学校、職場が症状を理解し、無理のない環境を整えることが回復を支えます。周囲の理解は、安心して治療を続ける大きな力になります。

長時間立っていられない体験談と改善事例

長時間立っていられない体験談と改善事例を3つ解説します。

33歳男性:環境調整と生活改善で改善

接客業で1日中立ち仕事。「体力不足だ」と思い込み、我慢を続けていました。朝食はコーヒーのみ、睡眠不足が続いていたそうです。

医療機関でODと診断され、こまめな休憩、朝食の改善、水分摂取を意識。職場にも相談し、短時間座れるようになったことで症状が軽減しました。

42歳女性:受診をきっかけに安心

パートと家事・育児で忙しく、立ち仕事中にふらつくことが増加。「貧血だろう」と放置していましたが、倒れそうになったことをきっかけに受診。

検査で貧血と血圧調整の問題が判明し、治療と生活改善で安心して働けるようになりました。

16歳男性:学校の配慮で改善

朝の電車や朝礼で立っていられず悩んでいました。部活はなく、朝食は抜きがち。

受診後、学校に相談し、朝礼で座れる配慮を受けることに。朝食をとるようになるなど、生活リズムも整え、徐々に症状が軽くなりました。

もしかしたら起立性調節障害かも

長時間立っていると、めまいや動悸、気分の悪さが現れ、「体力がないだけ」「自分が弱いから」と思い込んでしまう人もいます。しかし、こうした症状は、起立時の血圧や心拍数などを調節する働きがうまく機能していないサインかもしれません。

特に、立っているとつらくなり、座ったり横になったりすると楽になる場合や、朝起きられない、午前中に調子が上がらない、立ちくらみや倦怠感を繰り返す場合は、起立性調節障害が関係していることがあります。

一方で、長時間立っていられない症状は、貧血や脱水、起立性低血圧、心臓の病気などでも現れます。症状だけで起立性調節障害と判断せず、繰り返す場合や日常生活に支障が出ている場合は、医療機関へ相談しましょう。

セルフチェックは診断に代わるものではありませんが、症状を整理するための参考になります。必要に応じてセルフチェックを行い、医療機関の受診を検討してください。

下記の記事では、起立性調節障害のセルフチェックについてわかりやすく解説していますので、是非一度ご一読ください。

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