立ち上がるとめまいがすることを経験されたことはありませんか?
立ち上がるとめまいがしたり、目の前が暗くなったり、ぐるぐると回転している状態になったり、いわゆる立ちくらみのような症状です。
寝不足など、体調が悪い時などにめまいや立ちくらみを経験したことがある方は多いと思いますが、背景に病気が隠れている可能性もあります。
場合によっては「起立性調節障害」という病気が立ち上がるととめまいがする原因になることもあり、早期発見、早期治療が重要になってきます。
こちらの記事では、立ちあがるとめまいがすることに関して、症状や対処方法、病気の可能性などについて解説していきます。
立ち上がるとめまいがする原因
本来、私たちは急に立ち上がってもめまいがすることはありません。立ち上がるとめまいがするということは、立ち上がった後に脳への血流が不足していることを反映しています。
それでは、なぜ脳への血流が低下するのでしょうか。
一般的に座っている時、血液は重力に従い下肢に溜りやすくなっています。
この状態から立ち上がるには、交感神経の働きによる下肢血管の収縮や下肢の筋肉によるポンプ作用により、重力に逆らって血液を心臓へ戻し、脳への血流が低下しないように私たちの体は自動調節をしています。
そのため、倒れることはありません。しかし、何らかの原因で交感神経の作用が不足すると、立ち上がる際や立っている間に脳への血流が低下し、めまい、立ちくらみなどの症状が出現し、重症になると失神してしまいます。
これ以外にも、循環器系に異常がある場合でも立ち上がる際のめまいに関与することがあります。
したがって、立ち上がるとめまいがする原因としては、交感神経などの自律神経の異常、下肢筋力の低下、血液量が不足した状態、循環器系の異常などが考えられます。
立ち上がるとめまいがする時に考えられる病気
起立性低血圧
横になっている状態や座っている状態から立ち上がった際に、脳への血流が低下し、立ちくらみやめまい、失神が見られる病気です。
糖尿病や神経疾患が原因で起立性低血圧が見られることもあります。自律神経の働きに異常があり、体の色々な調整がうまくいかず立ち上がる際に脳血流が不足することが大きな原因です。
横になった状態と立ち上がった状態で血圧を測定すると、血圧が大きく低下していることが特徴です。
不整脈
不整脈には脈が速くなる頻脈タイプ、脈が遅くなる徐脈タイプがあります。
頻脈タイプであれば、心室頻拍や心室細動、徐脈タイプであれば洞不全症候群や房室ブロックなどがあります。脈の異常とともに、動悸や息苦しさ、立ち上がった際のめまいなどの症状も一緒にみられることがあります。
弁膜症
心臓には左、右それぞれに心房、心室という部屋があり、全部で4つの部屋に分かれています。それぞれの部屋と部屋、部屋と大血管との間には弁があり、心臓の収縮に伴って弁が開いたり、閉じたりしています。
弁膜症とはその弁が閉まりきらなかったり、開きにくくなることで血液の逆流や拍出量の低下を来し、心房や心室などに負担をかけることで心臓の機能が低下します。
心臓の機能が低下することで全身への血流を維持することができなくなり、立ち上がった際のめまいなどの症状が見られます。
貧血
貧血とは、血液中で全身に酸素を運搬する働きがあるヘモグロビンの濃度が低下することで、全身で酸素が不足している状態です。脳に十分な酸素が行き届かない場合立ちくらみなどの症状につながってしまいます。
脱水症
脱水になると、体内の血液量が少なくなるため、脳への血流も低下しやすくなってしまいます。夏場は熱中症に特に注意が必要です。熱中症は以前は熱射病とも言われており、屋外で
かかるものと思いがちですが、近年は屋内での報告例も多く、屋内にいるからといって安心はできません。
低血糖
体の(特に脳の)エネルギー源となるブドウ糖が低下することで、冷や汗、ふらつき、体のだるさなどが見られます。忙しい現代人は朝食をしっかり食べる習慣に乏しく、大きな原因の一つと考えられています。
もともと糖尿病がある方の場合、血糖を下げるためのお薬(経口血糖降下薬)やインスリンが効きすぎていることも考えられます。
立ち上がるとめまいがする時の治し方
起立性低血圧
基本的には食事や運動など日常生活での注意点からなる非薬物療法と血圧を上げる薬剤を使用する薬物療法があります。
特に非薬物療法も重要になるため、規則正しい生活習慣を心がけましょう。下記記事も参考にしてみてください。
→起立性低血圧とは?治し方や原因、症状、セルフチェックについて解説
不整脈
動悸や息切れ、脈が飛ぶ、ふーと気が遠くなるなどの症状が見られた場合は、何らかの不整脈の可能性があります。必ず医療機関を受診し、心電図などの検査を行いましょう。
心電図でどのタイプの不整脈かがわかります。1度の心電図で異常波形がひろえなかった場合は、ホルター心電図といい携帯式の機械を持参頂き、24時間全ての脈を記録し、異常を詳しく調べることができます。
治療に関しては、抗不整脈薬の使用や場合によってはペースメーカーや植え込み型除細動器などが必要になることもあります。
弁膜症
大動脈弁狭窄症、大動脈弁閉鎖不全、僧帽弁狭窄症、僧帽弁閉鎖不全などがあり、心臓のエコー検査で評価します。
どのタイプの弁膜症があり、狭窄の度合いや逆流の度合い、それぞれの部屋にかかっている負担などがわかり、これに基づいて手術の適応などが検討されます。いずれの場合も、むくみや息切れなど心不全の症状がある場合は、お薬による治療が必要です。
貧血
貧血の原因は様々であり、年齢や性別によっても異なります。
女性の場合は月経、30-40代の働き盛りの世代では胃潰瘍や十二指腸潰瘍、加齢に伴い悪性腫瘍や血液疾患の可能性も考えられます。
月経の場合は、過多月経や血の塊が多くみられ、胃潰瘍の場合は、食事中のみぞおち辺りの痛み、胃もたれ、むかつき、十二指腸潰瘍の場合は空腹時の痛みなどが見られます。
貧血であるとわかった場合、原因をはっきりさせた上でそれぞれの治療を行います。同時に食事療法、鉄分やビタミンなどをしっかり摂取することが重要です。
脱水症
脱水症を予防するためには、こまめな水分補給が重要です。血管内の血流を維持するためには、水分とともにナトリウム・塩分を摂取することも重要です。普段通り食事摂取ができていれば水やお茶を補給することで十分問題ないです。
食欲がなく、食事を食べれない場合は塩分や糖分などが含まれている経口補水液などを摂取するようにしましょう。
糖尿病や高血圧、心臓病や腎臓病がある方は必要以上に塩分や水分を摂取することが望ましくない場合もありますので、主治医に確認しましょう。
また、起立性調節障害の子どもの場合は、基本的には水分、塩分ともに少し多めに摂取することが推奨されています。
低血糖
忙しい朝でも、朝食は欠かさず摂取することが重要です。間食や甘いものを控え、バランスのとれた3食をしっかり摂取しましょう。
また、糖尿病がある方は、経口血糖降下薬やインスリンの減量が必要かもしれませんので、主治医に相談しましょう。
すぐにできる対処法
立ち上がるとめまいが出現する場合、ほとんどの場合は脳への血流が低下することがめまいの原因となります。起立すると下肢に多くの血流が流れ込んでしまうため、脳への血流を確保できなくなるためです。
まずその場で行う対処法としては、脳の血流が少しでも回復するように横になりましょう。横になった状態で両足を上にあげるとさらに脳血流が改善する可能性もあります。
さらに、低血糖の可能性もあるため、アメなどの糖質が含まれるものを摂取することもおすすめです。
脳の血流低下の原因として、脱水や貧血も考えられます。横になった状態で水分摂取も行いましょう。
また、脳に血液を送るポンプである心臓に異常を認める場合もあり、この場合緊急性が高い可能性があります。不整脈や弁膜症などによって胸痛などを伴う場合は早急に医療機関を受診しましょう。
横になって症状が改善しても勢いよく立ち上がると症状が再発する可能性が高いため、次に立ち上がるときは慎重に時間をかけて立ち上がるように注意しましょう。やや前傾姿勢を保つことで脳血流は維持されやすくなります。
立ちくらみを繰り返す場合は、血圧や脈拍を適切に調整する神経である自律神経が乱れている可能性もあります。
規則正しい生活習慣、十分な睡眠や運動習慣、精神的ストレスの軽減は自律神経を安定化させるため、心掛けておきましょう。
もしかしたら起立性調節障害かも
上記でもご説明しましたように、立ち上がるとめまいがする原因としては、交感神経などの自律神経の異常、下肢筋力の低下、血液量が不足した状態、循環器系の異常などが考えられます。
自律神経には交感神経と副交感神経があり、それぞれがうまくバランスをとりながら生命維持に必要な様々な代謝活動を調整しています。
交感神経は体を活発にさせる神経であり、獲物を狩る際の戦闘態勢の状態とイメージするとわかりやすいです。瞳孔をひらき獲物を見て、心臓の拍動を増やし、末梢の血管を収縮させ、血圧を上げます。一方で、この時消化管の運動は抑え、排泄機能も抑えます。
副交感神経は体をリラックスさせる神経であり、交感神経とは反対の作用があります。
起立性調節障害は、この自律神経の働きのバランスが崩れることで朝起き上がれない、立ちくらみやめまい、腹痛、頭痛など多様な症状を来し、特に午前中は体調不良が多くなってしまう病気です。
体の成長が著しい思春期に多く、成長とともに症状が改善することが多いです。立ち上がるとめまいがする症状に困っておられたり、その他悩んでいる症状がある場合、一度セルフチェックを行うことをおすすめします。
下記記事では、起立性調節障害のセルフチェックについて解説していますので、ぜひ一度ご覧ください。