自律神経失調症という言葉をよく耳にする方も多いのではないでしょうか。
実は、医学的には正式に「自律神経失調症」という病名はありません。自律神経失調症とはどのような状態なのか、こちらの記事では自律神経失調症について解説していきます。
自律神経失調症とは
自律神経失調症は体の様々な代謝活動を調整している自律神経系である交感神経と副交感神経のバランスが崩れることで、頭痛や腹痛、めまい、吐き気など様々な症状が見られる病気です。
自律神経のバランス調整がうまくいかないことで見られる病気ですが、確立した疾患概念や診断基準があるわけではありません。
日本心身医学会では、自律神経失調症とは、多様な自律神経系の症状を有し、しかも検査では器質的な病変が認められず、かつ顕著な精神障害のないもの、と定義されています。
つまり、様々な自律神経症状が認められること、検査で身体疾患が見つからないこと、明らかな精神障害が認められないこと、これらを満たすような状態のことを自律神経失調症としています。
症状は人によって様々ですが、頭痛、めまい、口の渇き、倦怠感など様々です。症状は良くなったり、悪くなったりを繰り返すことが特徴で、イライラや不安などの精神症状を伴うこともあります。
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自律神経失調症の原因
自律神経のバランスが乱れることで症状が見られやすくなるため、ストレスや生活習慣の乱れ、過度の緊張状態の持続などが原因となります。
自律神経失調症は身体疾患に関連して出現し治療をされることも多く、深く関連がある病気をご紹介します。
- 起立性低血圧
- 過換気症候群
- 過敏性腸症候群、機能性ディスペプシア
- 片頭痛、パーキンソン病
- 過活動膀胱、勃起不全症
- 不眠症、摂食障害、身体表現性障害
◆自律神経失調症で食べてはいけないものは?|症状改善に効果的な食べ物を紹介
自律神経失調症の症状
まずは、自律神経の働きについてお話していきます。
自律神経は交感神経と副交感神経の2つに分けられます。それぞれが互いに影響し合ってうまくバランスをとることで体内の各調整がなされています。
交感神経は起床時から活性化され、体の色々な代謝活動を活性化させることに対し、副交感神経は体をリラックスさせ、体の色々な代謝活動を落ち着かせます。
交感神経は心拍数上昇、瞳孔散大(瞳孔を開く)、消化機能の抑制、気管支拡張などの作用があり、副交感神経は心拍数低下、縮瞳(瞳孔が小さくなる)、消化機能の促進、気管支収縮などの作用があります。
これらは自分の意志ではコントロールすることができません。交感神経と副交感神経の働きのバランスが崩れることで、交感神経が優位に働いたり、副交感神経が優位に働くことで様々な症状が見られます。
見られる症状としては、以下のようなものがあります。
- 動悸、胸痛、立ちくらみみ
- 息苦しさ
- 吐き気、下痢、便秘、腹痛
- 頭痛
- 疲れ目、目の乾燥
- 耳鳴り、めまい
- 口の渇き
- 冷え、しびれ、痛み
- 肩こり、関節痛、筋肉痛
- 排尿困難、残尿感
- 勃起障害、生理不順
- 不眠、イライラ、気分の落ち込み
- 全身倦怠感、食欲低下
実に様々な症状が見られ、人によって現れやすい症状が異なることもよくあります。
◆自律神経失調症が治ったきっかけ-子どもから大人まで5事例紹介
自律神経失調症のセルフチェック
検査をしてもはっきりとした原因がわからない体の不調は自律神経失調症の可能性があります。該当するものがないか、下記の項目をチェックしてみてください。
- 頭痛、肩こり、めまい、耳鳴りがする
- 倦怠感があり、いつも疲れているように感じることがある
- 口の中がカラカラに渇くことが多い
- 耳が詰まったように感じる
- 飲み込むときに喉につまる感じがある
- 安静時の動悸や胸の痛み、息切れがある
- 目が疲れていたり、目の奥が重だるい感じがある
- 急にのぼせてしまったり、顔の皮膚などが急に赤くなることがある
- 異常に汗をかくことが多い
- うつっぽく、イライラしたり、不安感などで精神的に落ち着かない
- 胃がムカムカする、張るなど消化機能障害の症状がある
- 便秘・下痢など腸の不調がある
- よく立ちくらみがする
- ストレスが体調に影響する
◆自律神経失調症が漢方で治った方の事例|子どもから大人まで6事例紹介
自律神経失調症の治し方
治療方法には非薬物療法と薬物療法があります。特に非薬物療法が重要な位置づけにあります。
睡眠・起床時間を決め適切な睡眠をとることなど規則正しい生活習慣の確立、運動習慣を身につけることがとても重要です。この非薬物療法のもと、症状が強い場合には、漢方薬も含め見られている症状に合った薬を使用します。
自律神経失調では、様々な症状そのものを和らげる薬と気持ちをリラックスさせる薬を使用して治療を行います。抗うつ剤や抗不安薬、睡眠薬を使いながら、めまいや頭痛があればそれぞれの症状に対し薬を併用していきます。
予防についてですが、自律神経のバランスが乱れることで症状が出現しやすく、増悪もしやすいため、症状増悪を予防するため、自律神経のバランスを乱している原因の除去が必要になってきます。
上記でもご説明しましたように、ストレスや生活習慣の乱れは自律神経のバランスを大きく乱す原因になるため、生活習慣の見直し、ストレスを溜め込まないようにしましょう。
早寝早起き、食事バランス、食事時間の定時化、睡眠時間の確保、運動の習慣づけ、湯船につかり汗をかくなど規則正しい生活を送るよう心がけましょう。
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◆自律神経失調症は何科?症状別に解説-早期治療で症状悪化を防ぎましょう
起立性調節障害の疑いもあるため要注意
非常に似た病気に起立性調節障害があります。起立性調節障害も病態の基本は自律神経系である交感神経と副交感神経の働きのバランスが崩れることです。
起立性調節障害の場合、早朝起床時が最も症状が強く、午後には改善していく傾向にあります。また、座位から立位や長時間の立位時にめまいや立ちくらみを起こし、重症だと失神することもあります。
色々な不調が見られており、その症状が特に朝、午前中にひどく、午後にはましになったり、寝起きや椅子から立ち上がる際に症状が見られる場合は起立性調節障害の可能性もあるため注意が必要です。
下記記事では起立性調節障害のセルフチェックをすることができます。ぜひ参考にしてみてください。
【参考】
日本小児心身医学会 起立性調節障害(OD)
一般社団法人 日本心身医学会
一般社団法人 日本女性心身医学会
自律神経失調症 | e-ヘルスネット(厚生労働省)
日本臨床内科医会(自律神経失調症)