起立性調節障害とは

自律神経失調症に伴う吐き気の治し方とは?乳酸菌がいいって本当?

2023年10月29日

この記事の監修者

医師 錦惠那

医師 錦 惠那

内科一般・腎臓内科・透析科・産業医
保有資格:日本内科学会内科専門医・日本医師会認定産業医
2018年から起立性調節障害患者の診療を行い、累計30人以上の起立性調節障害患者を担当。

一般社団法人 起立性調節障害改善協会

  • 自律神経失調症のせいで日常的に吐き気が出やすい
  • 自律神経失調症の吐き気の治し方がわらかない

このような悩みをお持ちの方も少なくないでしょう。

自律神経失調症ではさまざまな症状が出現しますが、特に胃腸の働きは乱れやすく、吐き気や腹痛に悩まれる方は多いです。

子供から大人まで幅広い年代で発症する病気であり、日常的な吐き気は学業や仕事にも支障をきたすため、早期に適切な治療・ケアをおこなうことが重要です。

自律神経失調症の吐き気に対する治し方は、主に薬で治す方法と薬以外で治す方法の大きく2つに分けられます。

この記事では、医師である筆者の経験を元に、自律神経失調症状の吐き気に対する治し方を詳しく紹介します。

この記事を読むことで、吐き気の治し方はもちろんのこと、吐き気が起こる原因や効果的なツボなどを知ることができるため、ぜひご一読ください。

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自律神経失調症で吐き気がする場合の治し方

自律神経失調症で吐き気がする場合の治し方は、主に下記の2つに大別されます。

  • 薬で治す方法:医薬品によって化学的に吐き気を抑制する方法
  • 薬以外で治す方法:自律神経の乱れをセルフケアで整えて吐き気を改善する方法

上記の2つの治し方は、全く異なるアプローチで吐き気を改善できるため、症状が重い方は同時におこなうことをお勧めします。

薬で治す方法

そもそも、自律神経失調症で吐き気を伴いやすい理由は、胃の運動機能をコントロールする自律神経が乱れるためです。胃の活動が低下し、食事をうまく消化吸収できなくなることで胃の内圧が上昇し、嘔気を感じます。

もしくは、胃の活動が活発すぎる場合も空回りしてしまい、胃の消化吸収がうまくおこなわれなくなるため、嘔気を感じやすくなります。

そこで、自律神経失調症で吐き気がする場合、薬で治す方法がおすすめです。薬によって化学的に胃の蠕動運動にアプローチすることで、乱れた消化吸収を正常化し、吐き気の原因を解除する効果が期待できます。

具体的には下記のような薬が効果的です。

  • ドパミンD2受容体遮断薬
  • セロトニン5-HT4受容体作動薬
  • 抗コリン薬

ドパミンD2受容体遮断薬

ドパミンD2受容体遮断薬は、脳内部の嘔吐中枢にある化学受容器引金帯(Chemoreceptor Trigger Zone;CTZ)の活性化を抑制し、吐き気を抑制します。

また、活発化した消化管運動の動きを抑制することで、吐き気を抑制する効果も期待できます。

医療機関で処方されるドパミンD2受容体遮断薬は、メトクロプラミドやドンペリドンと呼ばれる薬です。

セロトニン5-HT4受容体作動薬

セロトニン5-HT4受容体作動薬は、消化管の神経内部でセロトニン5-HT4受容体を刺激し、消化管の蠕動運動を活発化させるアセチルコリンの分泌を活性化させることで、弱った胃腸の働きを改善させます。

つまり、胃の蠕動が過活動である状態の吐き気に対して有効なドパミンD2受容体遮断薬とは違い、胃の蠕動が弱いことで生じる吐き気に対して有効な薬です。

医療機関で処方されるセロトニン5-HT4受容体作動薬は、モサプリドと呼ばれる薬です。

抗コリン薬

抗コリン薬は、消化管の蠕動運動を活発化させるアセチルコリンの効果を抑制することで、胃の過活動を抑制して吐き気を抑えます。

つまり、ドパミンD2受容体遮断薬と同じような働きですが、CTZには効果を持たない点で異なります。

医療機関で処方される抗コリン薬は、ブチルスコポラミンと呼ばれる薬です。

薬以外で治す方法

自律神経失調症で吐き気がする場合、薬以外で治す方法もおすすめです。薬で治す方法では、胃の動きや嘔吐中枢に介入して吐き気を緩和しているだけのため、自律神経の乱れを直接治してるわけではありません。

そこで、乱れた自律神経を直接的に安定化させるためには下記のような方法が挙げられます。

  • 規則正しいバランスの取れた食生活を身につける
  • 睡眠時間を確保し、就寝時間を同じような時間にする
  • 週に2日以上、最低でも30分間運動する
  • 自分にあったストレス発散・リラクゼーションをおこなう

これらの行動は自身の乱れた自律神経を安定化させる効果が期待でき、吐き気の改善も期待できます。

後述しますが、乳酸菌を多く含む食べ物を取り入れることでより改善が期待できるでしょう。

また、ストレスはより自律神経の乱れを悪化させるため、吐き気が強くて運動や食事がうまくおこなえないという方は、読書や映画鑑賞など、自分の好みに合ったストレス発散をおこなうことがおすすめです。

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自律神経失調症の吐き気に効果的なツボ

自律神経失調症の吐き気には、吐き気を抑える効果のあるツボ押しも効果的です。

具体的には下記のようなツボが挙げられます。

  • 内関:手関節のシワから指3本肘側に位置するツボ。
  • 合谷:手の甲の親指と人差し指の付け根のくぼみに位置するツボ。
  • 足三里:膝関節から指4本分足側のやや外側に位置するツボ。

これらのツボは胃腸の不調を和らげ、指圧することで吐き気や腹痛を改善する効果が期待できます。

他にも、労宮や中脘など、自律神経の乱れに伴う吐き気に効果的なツボは複数あるため、ぜひ自分の身体に合ったツボを見つけましょう。

自律神経失調症で吐き気が起こる原因

自律神経失調症で吐き気が起こる原因は、自律神経が胃や腸など消化管の運動を調整している神経だからです。自律神経は交感神経と副交感神経の総称で、睡眠や体温・血圧・脈拍・排尿・排便など多くの生理機能を相互に作用することで調整しています。

例えば、交感神経の活性化は胃の蠕動運動を抑制し消化を遅らせますが、一方で、副交感神経の活性化は胃の蠕動運動を活性化し、消化を促進させます。

しかし、交感神経と副交感神経のバランスが乱れ、適切な蠕動運動が得られなくなると、胃の不快感やムカつき・吐き気が出現するわけです。

ただし、吐き気が起きている原因が胃の蠕動運動の停滞なのか亢進なのかによって選ぶべき薬も変わってくるため、注意が必要です。

また一方で、自律神経の乱れは脳に存在する嘔吐中枢を直接的に刺激するため、それによって嘔気や嘔吐が出現するという別の作用機序も考えられます。

自律神経失調症には乳酸菌がおすすめ

自律神経失調症で吐き気にお悩みの方には乳酸菌がおすすめです。

乳酸菌には胃の機能を整える働きがあり、胃の機能が安定すると自律神経の乱れも改善すると考えらえているためです。

実際に、東海大学の研究では乳酸菌を豊富に含むヨーグルトを摂取した被験者において、胃炎の原因となるピロリ菌の増殖抑制や、胃粘膜の炎症軽減など、さまざまな有益な効果が報告されています。

この背景には、乳酸菌によって胃の常在細菌が安定化し、消化管運動の改善や胃酸分泌の抑制などが影響していると考えられています。

胃の機能改善は、自律神経を介して脳や心身の機能を安定化させる(いわゆる胃脳相関)ため、自律神経失調症の方には乳酸菌を豊富に含む食べ物や飲み物の摂取がおすすめです。

乳酸菌を効率よく摂取する方法

乳酸菌を効率よく摂取する方法は、「プレバイオティクス」と一緒に乳酸菌を豊富に含む食品を摂取することです。

本来なら乳酸菌は一定期間経つと腸内で消えてしまいますが、オリゴ糖や食物繊維であるプレバイオティクスは乳酸菌の栄養となるため、乳酸菌をプレバイオティクスとともに摂取することで、腸内での乳酸菌の増幅が期待できます。

プレバイオティクスは野菜や果物・キノコ類・豆類などに豊富に含まれ、玉ねぎやにんにく・バナナなどがその代表例です。

一方で、乳酸菌はヨーグルトやチーズなどの乳製品やキムチ・ぬか漬けなどの発酵食品に豊富に含まれています。

自律神経失調症の吐き気にお悩みの方は、ぜひプレバイオティクスと乳酸菌を一緒に摂取してみましょう。

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継続して乳酸菌を摂取して自律神経失調症を改善させよう

継続して乳酸菌を摂取して自律神経失調症を改善させましょう。乳酸菌は腸内や胃内でずっと生き長らえることはできないため、その効果を得るためには継続的な摂取が重要です。

実際に東海大学の研究でも、被験者は1日1個のヨーグルトを8週間継続して摂取することで効果が得られています。摂取してすぐに自律神経失調症が軽快するわけではないため、根気強く摂取を継続することが大切です。

自律神経失調症と思っていたら起立性調節障害の場合もある

自律神経失調症と思っていたら、起立性調節障害の場合もあります。

起立性調節障害とは身体が急速に成長する小学生高学年から中学生で発症しやすい身体疾患で、自律神経の乱れがその原因です。

身体の成長に自律神経の発達が追いつけず、自律神経が乱れることで起床時や起立時に強いめまい・ふらつき・嘔気・嘔吐・腹痛など多彩な症状をきたします。

同じく自律神経が乱れることで発症する自律神経失調症と違い、起立性調節障害の場合は午前中や起床時に症状が強く、午後になると症状が改善するという特徴があります。

起立性調節障害は基本的に自然軽快する病気ですが、進行すれば日常生活にも大きな支障をきたす可能性があるため、早期発見・早期治療が肝要です。

そこで、下記の記事では小児における起立性調節障害のセルフチェック法について詳しく解説しているため、ぜひ参考にしてみてください。

>>起立性調節障害のセルフチェックリスト(子ども)|すぐにできる診断テスト

 

>>大人の起立性調節障害セルフチェック項目|診断テスト

 

【参考文献】
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/heart/yk-082.html
https://www.jspm.ne.jp/files/guideline/gastro_2011/02_01.pdf
https://www.jsnt.gr.jp/guideline/img/jiritsu.pdf
https://www.kegg.jp/medicus-bin/japic_med?japic_code=00057128
https://www.kegg.jp/medicus-bin/japic_med?japic_code=00056272

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