「子供がなかなか夜寝付けなくなった」「以前までは朝スッキリ起きていたのに、最近はなかなか起きてこないため、通学にも支障をきたしている」このようなお悩みを抱えている親御さんも少なくないでしょう。
子供がこのような症状を抱えている場合、「概日リズム睡眠覚醒障害(睡眠リズム障害)」を発症している可能性があります。これはなんらかの原因で体内時計にズレが生じ、覚醒と睡眠の周期が乱れてしまう病気です。
症状が進行すれば、朝の通学や午前中の学業などにも支障をきたし、将来的な進路に影響が出る可能性もあるため、早期から適切に介入してあげることが重要です。
そこでこの記事では、睡眠リズム障害の治し方について詳しく解説します。また子供に対して家族ができるサポート方法についても紹介するため、ぜひご一読ください。
子どもの睡眠リズムが乱れ、朝なかなか起きられない状態が続く場合は、起立性調節障害が関係していることもあります。
朝起きられない症状や立ちくらみ、頭痛、倦怠感などを伴う場合は、起立性調節障害のセルフチェックも参考にしてください。

睡眠リズム障害の治し方とは?
睡眠リズム障害の治し方には、薬や漢方などの薬物療法、水分や塩分の摂取・運動療法など、さまざまな治療法がありますが、これらはあくまで補助的な治療であり、一番重要な治療は日々の生活習慣を整えて睡眠リズムを整える事です。
また、睡眠リズム障害に対しては一般的な睡眠薬が効きにくいと言われており、なおのこと睡眠リズムを整えるなどの非薬物療法が重要です。そこで、睡眠リズムを整えるための具体的な方法を詳しく解説します。
睡眠日誌で睡眠時間を記録する
まずは、睡眠日誌を記載して自分の睡眠時間や、睡眠のタイミングを記録しましょう。睡眠日誌をつけることで、客観的に自分の睡眠時間を評価でき、自分の認識と実際の睡眠状態の乖離を把握することができます。
横になってから実際に寝るまでの時間や、うとうとしていた時間を割り出すことで、自分の睡眠の特徴や欠点を客観的に評価できます。
正確に自身の睡眠状態を把握するためには、朝起きた時に、その前夜の睡眠状態を記録しましょう。何日間分か溜め込んで記録すると正確性が損なわれるため、毎日の日課として記載すると良いでしょう。
体内時計のズレをリセットする
睡眠リズムを整えるためには、一度思い切って体内時計のズレをリセットすることも重要です。
完全に学校を休み、最低でも3日間、できれば14日間程度、全く無理をしないようにして、自分が眠れる時間に眠って、起きるべき時間にはきちんと起きる生活を送ります。自然に目が覚めるまで必ず寝るようにします。
この間、より自然な状態で睡眠状態を把握するために、夜の光刺激は控え、朝も自然に起きた後に手動で光を点灯させ30分-2時間程度目に光が当たるように浴びてください。
最初は「睡眠不足」が蓄積されているため、必要以上に長く眠る日が続きます。通常、7時間程度の睡眠で十分な場合でも、この期間では数日間、12時間以上眠ることがありますが、それでも問題ありません。
睡眠日誌を記載しておくことで、初めて自分の身体にとって本当に必要な睡眠時間と、現在の脳の時計の時刻が明確になります。「自然に起きた時刻」が現在の「朝の時刻」であり、睡眠時間が現在必要な量です。
もし1週間後でも睡眠が乱れている場合は、さらに1週間自由に睡眠や起床を調整する必要があります。この方法で現状を把握することが、睡眠リズムを整えるファーストステップと言えます。
朝日を浴びる
上記で自身の睡眠の状態を把握した後は、睡眠リズムを整えるために、朝日を浴びることも重要です。特に朝や午前中に太陽光を浴びると、乱れた体内時計のズレが修正されると言われています。
人の体内時計は、脳の視交叉上核という部位に中心があります。 我々が生活する時間軸では1日24時間周期ですが、体内時計は1日25時間周期と言われており、本来なら1日約1時間ずつ後ろにずれ込んで行くはずです。
しかし、実際には我々は日々同じような時間に起きて、同じような時間に寝ることができます。 これは、視交叉上核に光の刺激が入ることで規則的にズレがリセットされ、24時間の周期で体内時計が調整されるためです。
視交叉上核は、視神経と情報をやり取りし、外界の明暗に応じて体内時計を調整する重要な役割を担っています。
上記のような理由から、朝日や朝の通勤などのルーティンワークによって、乱れた体内時計のズレがリセットされます。そのため、睡眠リズムを整える上では、朝日を浴びることがとても重要です。
起立性調節障害に対する光療法の仕組みや取り入れ方について詳しく知りたい方は、下記の記事も参考にしてください。
夜は明るい光を避ける
睡眠リズムを整えるためには、夜に強い光を長時間浴びないようにすることも大切です。
メラトニンは、体内時計からの指令を受けて夜に分泌が増え、体を眠りに向けた状態へ導くホルモンです。夜に明るい光を浴びると、メラトニンの分泌が抑えられ、寝つく時間が遅くなる可能性があります。
夕方以降は必ず暗い部屋で過ごす必要はありませんが、就寝時刻が近づいたら照明を少し落とし、明るい光を避けるようにしましょう。
スマートフォンやパソコンを使用する場合は、画面の明るさを下げたり、夜間モードを使用したりする方法があります。就寝前は使用時間を減らし、少なくとも就寝2時間前頃から明るい画面を長時間見続けないようにすることも対策の一つです。
就寝環境を暗いまま保つ
睡眠リズムを整えるためには、就寝中の光をできるだけ抑えることも大切です。就寝中に明るい光を浴びると、眠りが浅くなったり、途中で目が覚めたりすることがあります。
街灯や外の照明が差し込んで眠りを妨げている場合は、遮光カーテンやブラインドを利用しましょう。わずかな光でも気になる方は、アイマスクを使用する方法もあります。
一方、朝の光は体内時計を整えるうえで重要です。起きたい時間になったらカーテンを開けて朝日を浴びるか、設定した時刻に明るくなる光目覚ましを活用する方法があります。
ただし、光に対する反応や適切な時間帯には個人差があります。睡眠時間帯が大きくずれている場合は、自己判断で強い光を長時間浴びず、睡眠を専門とする医療機関へ相談しましょう。
光目覚まし時計の仕組みや、実際に使用した感想について詳しく知りたい方は、下記のレビュー記事も参考にしてください。
生活習慣に注意する
睡眠リズムを整えるためには、生活習慣にも注意しましょう。運動や入浴は睡眠に良い影響を与えることがありますが、行う時間や強度によっては寝つきに影響する場合があります。
適度な運動を習慣的に行うことは、睡眠の質を高めるために役立ちます。ただし、就寝直前に激しい運動をすると体が覚醒し、寝つきにくくなる可能性があるため、できるだけ早めの時間帯に行いましょう。
入浴によって一時的に体温が上がった後、熱が放散されて深部体温が低下すると、眠りにつきやすくなります。就寝1~2時間前を目安に、熱すぎないお湯で入浴する方法が挙げられます。
一方、就寝直前の熱いお風呂や長風呂は、かえって体を覚醒させる可能性があります。体調や入眠のしやすさに合わせて、入浴時間や湯温を調整しましょう。

睡眠リズム障害は薬物療法でも効果がある?
睡眠リズム障害に対しては、薬物療法も効果的です。不眠症に対して使われる睡眠薬にはさまざまな作用機序があり、ベンゾジアゼピン系・非ベンゾジアゼピン系・メラトニン受容体作動薬など、多くの種類があります。
これらの薬剤は眠気を誘い、睡眠リズム障害の子供に対しても有効な治療法となり得ますが、一方で依存性や日中の眠気に伴う骨折・交通事故のリスクもあるため、その使用には注意が必要です。
特に、多剤併用や高用量使用,長期使用により上記のようなリスクはさらに増加するため、注意が必要です。
以上のことからも、睡眠リズム障害に対して基本的に十分な生活指導をはじめとする非薬物療法メインでの治療が効果的であり、上記で解説した睡眠リズム障害の治し方をまずは実践することを勧めます。
睡眠リズム障害に対する家族のサポート方法
ここまで、睡眠リズム障害の子供自身が実践すべき行動について解説してきましたが、より良い改善のためには子供本人だけでなく、家族のサポートが必要不可欠です。
ここでは、睡眠リズム障害に対する家族のサポート方法について詳しく解説します。
否定せず気持ちを受け止める
睡眠リズム障害の子どもに対しては、朝起きられないことや夜眠れないことを責めず、まずは本人のつらさや考えを聞くことが大切です。
発症初期には、保護者が症状を生活習慣の問題や怠けと捉え、強く起こしたり叱ったりしてしまうことがあります。しかし、本人も起きたいのに起きられず、学校生活への不安や焦りを感じている場合があります。
無理に起こしたり生活を急に変えたりするのではなく、現在の睡眠時間や体調を一緒に整理しましょう。改善が難しい場合は、本人の意思も確認しながら医療機関へ相談してください。
学校と連携を取る
学校と連携を取ることも家族のサポートとして重要です。子供の状況を理解してもらい、定時では通学できないことや、一定期間休学することを学校に理解してもらう必要があります。
また、通学できたとしても睡眠リズム障害によって日中に眠気が出て授業中に寝てしまう可能性もあり、他の子供よりも学業が遅れてしまう可能性もあります。
そのため、学校と連携をとって授業の資料を家に送ってもらったり、進級や進学について相談すると良いでしょう。
学校を休んでいる間の自宅学習が出席扱いになる制度について詳しく知りたい方は、下記の記事も参考にしてください。
学校と連携を取る
学校と連携を取ることも、家族にできる大切なサポートです。子どもの症状や通院状況を伝え、決まった時間に登校することが難しいことや、遅刻・欠席が増える可能性があることを理解してもらいましょう。
睡眠リズムの乱れによって日中に強い眠気が現れ、授業への参加が難しくなる場合もあります。登校時間の調整や保健室の利用、課題の提出方法など、利用できる配慮について学校と相談してください。
欠席している間の授業資料や課題を受け取る方法、進級や進学、出席の扱いなどについても、早めに確認しておくと安心です。
【まとめ】睡眠リズム障害の治し方
この記事では、睡眠リズム障害について詳しく解説しました。睡眠リズム障害は、体内時計と社会生活で求められる時間帯が合わなくなり、望む時間に眠ったり起きたりすることが難しくなる状態です。
子どもに発症すると、朝起きられず、通学や学習に支障を来すことがあります。本人の意思や努力だけで改善するとは限らないため、叱ったり無理に起こしたりせず、睡眠時間や生活状況を確認することが大切です。
日常生活では、起床後に光を浴びる、夜は明るい光を避ける、睡眠・覚醒時刻を記録するなどの対策があります。ただし、睡眠リズムを急激に変えようとすると、かえって体調を崩す可能性があります。
生活上の工夫を続けても改善しない場合や、学校生活への影響が大きい場合は、小児科や睡眠を専門とする医療機関へ相談しましょう。症状や睡眠リズムの種類に応じて、生活指導、高照度光療法、薬物療法などが検討されます。
もしかしたら起立性調節障害かも
朝起きられない症状に加えて、立ちくらみや頭痛、倦怠感などがある場合は、起立性調節障害が関係している可能性もあります。
起立性調節障害は、立ち上がったときの血圧や心拍数など、循環器系の調整がうまく働かず、さまざまな不調が現れる病気です。小学校高学年から中学生頃に多く見られます。
主な症状には、朝の起床困難、立ちくらみ、めまい、頭痛、倦怠感、腹痛、吐き気などがあります。午前中に症状が強く、午後になると軽くなることがあるため、遅刻や欠席が増え、学校生活に影響する場合があります。
起立性調節障害と睡眠リズムの乱れが併存することもありますが、朝起きられないという症状だけで起立性調節障害と判断することはできません。睡眠不足や概日リズム睡眠・覚醒障害、貧血、甲状腺疾患などでも似た症状が現れます。
気になる症状を整理しておきたい方は、下記の起立性調節障害のセルフチェックを参考にしてください。








