- 十分睡眠時間を確保しているのに、子供が日中だるそう
- 寝ても疲れが取れない子供の不登校が心配
このような不安や悩みを抱えている親御さんも少なくないでしょう。
子供において寝ても疲れが取れない状態が長期間続けば、日中の活動性の低下によって身体機能に、集中力の低下によって学業に、人とのコミュニケーション低下によって精神的な成長に悪影響を与える可能性があります。
多くの場合、原因は子供の生活習慣や誤った睡眠方法にあるため、ちょっとした生活の工夫で改善を目指せます。しかし、中には医療機関で専門的な治療が必要な病気が隠れている可能性もあるため注意が必要です。
そこで、この記事では子供において寝ても疲れが取れない場合の原因や対処法・考えられる病気について詳しく解説します。ぜひこの記事を参考に、眠気の少ない快活とした日常を取り戻しましょう。
子供が寝ても疲れが取れないのはなぜ?原因とは?
子供が寝ても疲れが取れない場合、多くは何らかの生活習慣の誤りが原因となることが多いです。だからこそ原因を把握してしっかり是正すれば、症状の改善が見込めます。
ここではよくある原因を5つ紹介します。子供が同じような生活習慣を送っていないかチェックしましょう。
睡眠時間が少ない
子供が寝ても疲れが取れない場合、まずは睡眠時間が不足している可能性があります。適切な睡眠時間に基準はなく、各個人によって身体や精神の調子に合った睡眠時間は異なりますが、それでも明らかに睡眠時間が短い場合は注意が必要です。
Hirshkowitzらの研究によれば、成長に伴って子供の平均睡眠時間は短縮傾向にあり、新生児なら14〜17時間、1〜5歳なら10〜14時間、6〜13歳なら9〜11時間が推奨される睡眠時間とされています。
特に最近では習い事や塾などの理由で夜型の生活を送る子供が増えているため、子供の睡眠時間が少なくなる可能性も高く注意が必要です。睡眠時間が短いと子供の運動能力や記憶能力の低下にもつながるため、子供の睡眠時間はしっかり確保しましょう。
夜までスマホやPCを見ている
子供が夜までスマホやPCを使っていると、寝ても疲れが取れない可能性があります。これまでのさまざまな研究で、スマホやPCの操作時間が長い子供では睡眠の質や時間が短いことが知られています。
さらに、スマホやPCから発せられるブルーライトは、睡眠ホルモンである「メラトニン」の産生を抑制することも知られているため注意が必要です。
日中に体内で産生されたセロトニンと呼ばれるホルモンは、夜間光刺激がなくなると脳内部の松果体に取り込まれ、松果体の中でメラトニンの原料となります。
しかし、夜遅くまでブルーライトを浴びているとこの反応が起こらず、メラトニンの産生量の減少によって睡眠の量や質も低下します。そのため、少なくとも就寝の2時間以上前には不必要な光刺激は避けるようにしましょう。
心身にストレスを抱えている
子供が寝ても疲れが取れない場合、心身に重大なストレスを抱えている可能性があります。良質な睡眠には副交感神経の活性化が必要ですが、ストレスを抱えると交感神経が活性化することで副交感神経が相対的に抑制されてしまうため、睡眠の質が低下して疲れが取れにくくなる可能性があるためです。
特に子供は生活のさまざまなシーンでストレスを抱えやすく、周囲にそれをうまく伝えることもできないため、親御さんの気付かぬうちに重大なストレスを抱えている可能性があります。
対人関係やクラス替え、テストや受験など、学校内でのストレスはもちろんのこと、家族内での不和や親の離婚など、ストレスの原因は家庭にもあります。
子供のストレスをチェックするためにも、日頃から子供と積極的にコミュニケーションを取っておくとよいでしょう。
食事や運動習慣が不適切
子供が寝ても疲れが取れない場合、食生活や運動習慣が適切ではない可能性があります。バランスの悪い食事や就寝直前の暴飲暴食は身体の活力を削ぎ、疲労感や倦怠感の原因となります。
また、先述したように、睡眠の質を向上させるにはメラトニンの原料であるセロトニンが重要ですが、このセロトニンの原料はトリプトファンと呼ばれるアミノ酸で、トリプトファンは乳製品に多いため乳製品の摂取も重要です。
次に、運動は交感神経と副交感神経のバランスを整える作用があるため、程よい運動習慣によって睡眠の質や身体の調子が保たれます。運動不足だと自律神経のバランスが乱れてしまうため、体を動かす機会の少ない子供は注意が必要です。
特に食事内容や食事摂取時間は親御さんによってコントロールできる裁量が大きいため、ぜひ子供の健康のためにも食習慣を見直してみましょう。
就寝環境が不適切
子供が寝ても疲れが取れない場合、就寝環境が不適切である可能性があります。就寝環境が不適切な場合、睡眠時間を確保しても睡眠の質が低いため、どんなに寝ても体や頭の疲れが解消されない可能性があります。
高さの合わない枕の使用や固すぎるマットレスの使用は睡眠の質が低下するため、疲れが取れない原因です。 また就寝中の音や光、振動などの外部からの刺激は睡眠中も脳に入力されてしまうため、睡眠にとって有害です。
ほかにも、室温や湿度など睡眠の質に影響する要因は多いため、寝ても疲れが取れない場合は就寝環境を見直すと良いでしょう。
子供が寝ても疲れが取れない場合に考えられる対処法とは?
子供が寝ても疲れが取れない場合、日中の学業に支障が出たり、朝起きられなくなって不登校の原因にもなるため、早急に対処する必要があります。
多くの場合、セルフケアで改善可能なため、ぜひ本記事を参考に実践してみてください。
生活習慣の見直し
子供が寝ても疲れが取れない場合、まずは生活習慣を見直しましょう。多くの場合、その原因は日常の生活習慣や誤った行動パターンにあるためです。
規則正しくバランスの良い食事摂取・規則正しい睡眠習慣・定期的な運動習慣を身につけ、就寝環境を整えるように心がけましょう。
適切なストレス管理
子供が寝ても疲れが取れない場合、子供のストレス状況をチェックし、過剰なストレスを抱えている場合は発散できるように努めましょう。
ストレスが溜まると自律神経が乱れ、心身の調子が乱れて疲れが取れにくくなるためです。ストレス発散の方法は子供によっても異なりますが、運動や映画鑑賞・散歩・読書など、それぞれの子供に合った方法でストレス発散しましょう。
また、ゲームによるストレス発散は逆に心身の疲れや睡眠の質の低下につながる可能性があるため、1日2時間までに留めるなど、ゲームに割く時間の上限を決めてストレス発散すると良いでしょう。
睡眠日誌で睡眠時間をチェック
最後に睡眠日誌で睡眠時間をチェックしましょう。睡眠日誌は、横になった時間や実際に睡眠した時間、日中の昼寝時間などを日々記載することで、自身の睡眠時間や規則性を正確に把握できる優れものです。
睡眠日誌を記録することで、自分の睡眠状態を正確に把握し、自分でも気づけなかった特徴を見つけることができます。例えば、横になってから眠るまでの時間が異常に長いのであれば、ストレスによる緊張状態やスマホいじりなど、入眠できない原因がわかりやすくなります。
また平日の就寝時間が遅く、土日だけ昼まで寝ているなど、睡眠周期が不規則な場合も、その状況を自覚することができれば比較的容易に是正できます。ぜひ、一度睡眠日誌をつける習慣を身につけてみると良いでしょう。
子供が寝ても疲れが取れない場合に考えられる病気とは?
先述したように、子供が寝ても疲れが取れない原因は多くの場合生活習慣に問題があり、だからこそ上記のようなセルフケアで改善が期待できます。しかし、場合によっては何らかの病気にかかってしまい、その結果疲れを感じている可能性もあるため、注意が必要です。
ここでは、子供が寝ても疲れが取れない場合に考えられる病気を4つ紹介します。中には早急に対策しないと命に関わるような病気もあるため、早期発見・早期対策に努めましょう。
睡眠時無呼吸症候群
子供が寝ても疲れが取れない場合、睡眠時無呼吸症候群の可能性があります。睡眠時無呼吸症候群とは、その名の通り、睡眠中に呼吸が減る、もしくは完全に止まることで睡眠中に取り込める酸素量が低下し、脳や身体が十分に休めなくなってしまう病気です。
睡眠時無呼吸症候群の原因としては巨舌や小顎・扁桃肥大やアデノイドなどが挙げられ、これによって気道が狭窄することで睡眠中の呼吸が減る、もしくは止まってしまいます。
また、睡眠時無呼吸症候群が長期化すると持続的な低酸素状態に伴うストレスによって、交感神経が持続的に活性化し、高血圧や糖尿病・心筋梗塞・不整脈・脳血管障害などの重篤な疾患を発症しやすくなることが知られており、注意が必要です。
子供のいびきがうるさい場合には、睡眠時無呼吸症候群の可能性があるため一度医療機関に受診させると良いでしょう。
うつ病
子供が寝ても疲れが取れない場合、うつ病を発症している可能性があります。「うつ病=中高年のストレスの病気」と思われがちですが、実は脳内におけるセロトニンやノルアドレナリンの機能低下が原因であると考えられており、ストレスと関係なく誰もが発症する可能性のある病気です。
また、子供の場合は精神的にも未熟で、転校や進級・家庭内不和などストレスを感じやすいシーンも多いため、子供でも十分発症する可能性があります。うつ病を発症すると倦怠感や不眠・過食・抑うつ感・意欲や興味の減退などさまざまな精神症状をきたします。
また、放置すると症状が悪化し、希死念慮や自殺企図など命の危険性もあるため、早急に医療機関を受診するようにして専門的な治療を受けるようにしましょう。
甲状腺機能低下症
子供が寝ても疲れが取れない場合、甲状腺機能低下症を発症している可能性があります。甲状腺機能低下症とは、その名の通り甲状腺機能が何らかの原因で低下し、サイログロブリンやサイロキシンなどの甲状腺ホルモンが分泌低下する病気です。
甲状腺ホルモンは身体の新陳代謝を盛んにするなど大切な働きを担っており、分泌が低下することで代謝が低下し、無気力、疲労感、むくみ、寒がり、体重増加、動作緩慢、記憶力低下、便秘などの症状をきたします。
子供の場合、自己免疫性に甲状腺が破壊される橋本病の可能性が高いですが、稀に先天性に甲状腺の発達不十分で発症することもあります。原因に関わらず、甲状腺ホルモンの補充療法が必要となるため、上記症状を多く認める場合は血液検査での診断のためにもまずは小児科を受診させましょう。
貧血
子供が寝ても疲れが取れない場合、貧血の可能性があります。貧血とは血液中の赤血球が不足している状態を指し、赤血球の主な役割である全身への酸素運搬が障害されることで脳や身体が十分に酸素を受け取れなくなるため、疲労感の原因となります。
特に女児の場合は月経開始とともに貧血に陥りやすくなるため、小学生高学年や中学生で症状を認める場合は貧血の可能性が高いです。また、稀ですが骨髄の病気によって赤血球そのものを作る能力が低下している可能性もあるため、注意が必要です。
貧血の場合、通常は鉄剤の内服が一般的ですが、原因によっては対応も異なるため、やはり早期に小児科や一般内科への受診を勧めます。
もしかしたら起立性調節障害かも
子供が寝ても疲れが取れない場合、もしかしたら起立性調節障害かもしれません。起立性調節障害とは、身体の急激な成長に対して自律神経の成長が追いつかず、自律神経のバランスが乱れることでさまざまな症状をきたす疾患です。
特に小学生高学年〜中学生の、身体が急速に成長する時期に発症しやすい病気であり、倦怠感の原因にもなります。主な症状としては起立時や起床時に強いめまい・嘔気・腹痛・ふらつき・倦怠感などが挙げられ、夕方や夜になるにつれて症状が改善していくのが特徴です。
基本的には自然軽快する病気ですが、子供の発症者の1%は重症化し、1日を通して眠気や倦怠感に襲われることで不登校の原因にもなるため注意が必要です。
起立性調節障害の子供で症状が悪化すると通学や通塾もままならず、進級や進学にも支障をきたすため、早期発見・早期治療が重要です。
下記の記事では、子どもにおける起立性調節障害のセルフチェック方法を詳しく紹介しているため、気になる方はぜひ一度チェックしてみましょう。