- 胃腸がムカムカして食欲が湧かない
- なんとなくぐったりしていて食欲がない
誰しも一度は、このような症状を経験したことがあるのではないでしょうか。
食欲の低下が続くと栄養不足につながり、特に成長期の子どもでは、身体の成長や日常生活に影響する可能性があります。
大人でも、仕事や家事などに力が入らず、日常生活に支障が出る場合があります。食欲が戻らない場合は、原因を確認し、症状に合った対処を行うことが大切です。
食欲低下は、胃腸の不調や感染症、疲労、ストレスなどによって一時的に現れることがあります。一方で、甲状腺疾患やうつ病、摂食障害、起立性調節障害(OD)などが関係している場合もあります。
そこで本記事では、食欲が低下する原因や考えられる病気、主な対処法について分かりやすく解説します。
食欲がない状態が続く場合、体調不良やほかの病気だけでなく、起立性調節障害が関係していることもあります。
朝起きられない症状や立ちくらみ、倦怠感なども伴う場合は、起立性調節障害のセルフチェックも参考にしてください。
食欲がない原因
食欲が低下する原因は非常に多岐に渡ります。そもそも人間の食欲は脳の視床下部に存在する摂食中枢と満腹中枢によってコントロールされていて、摂食中枢が刺激されると空腹感を自覚し食欲が増進します。
その一方で、満腹中枢が刺激されると空腹感が減退し食欲も低下します。例えば美味しそうな物を見たり、美味しそうな匂いを嗅ぐと、摂食中枢が刺激されるため食欲が湧き、空腹感を自覚します。
しかし、摂食中枢や満腹中枢はさまざまな刺激に影響されます。特に、胃腸や食道はもちろん、肝臓や心臓、肺、脳など、ほとんどの内臓のコンディションによって両中枢は影響を受け、食欲が増進・減退します。
そのため、ちょっとした胃腸のトラブルや、感冒による発熱などでも摂食中枢が抑制され、食欲は低下してしまうのです。また、器質的な病気ではなくても、精神的なストレスによって摂食中枢が抑制されることもあります。
では、食欲の低下を引き起こした場合、具体的にどのような疾患を疑うべきなのでしょうか?
食欲がない場合に考えられる病気
食欲がない場合に考えられる病気について解説していきます。
急性胃腸炎
最も代表的な病気として、急性胃腸炎が挙げられます。急性胃腸炎とは、口から侵入した病原菌によって胃や腸に炎症が引き起こる病気です。特に、胃の炎症が強いと嘔気が出現しやすく、食欲は低下しやすくなります。
食欲低下の原因は、胃や腸の炎症が摂食中枢を抑制するためです。他にも、胃酸が胃から食道へ逆流してしまう逆流性食道炎と呼ばれる病気では、逆流した胃酸が食道に炎症を引き起こし、食欲低下を招く原因となります。
どちらも適切な治療を行えば早期に改善可能な疾患ですが、頻回な嘔吐を繰り返す場合は脱水に陥る可能性が高く、早期に医療機関に受診することをおすすめします。
甲状腺機能低下症
甲状腺機能低下症とは、甲状腺ホルモンの働きが必要な量よりも低下した状態です。甲状腺ホルモンは全身の代謝や、子どもの成長・発達などに関わっています。
原因の一つとして、自己免疫によって甲状腺に慢性的な炎症が起こる橋本病があります。ただし、橋本病と診断されても、甲状腺機能が正常に保たれている場合もあります。
甲状腺機能が低下すると、疲労感や無気力、むくみ、寒がり、体重増加、便秘、皮膚の乾燥などが現れ、食欲が低下することもあります。
脳腫瘍
頻度は高くありませんが、脳腫瘍などの脳神経系の病気によって、吐き気や嘔吐、食欲低下が現れることもあります。
頭蓋骨の内部に腫瘍ができて頭蓋内の圧力が高まると、頭痛や吐き気、嘔吐などが現れる場合があります。特に、朝方に強い頭痛や嘔吐がある、けいれん、意識状態の変化、手足の動かしにくさなどを伴う場合は注意が必要です。
食欲低下だけで脳腫瘍と判断することはできませんが、こうした症状を伴う場合は速やかに医療機関を受診しましょう。
うつ病
うつ病は中高年だけでなく、小学生や中学生でも発症する可能性がある精神疾患です。気持ちの持ちようだけで改善できるものではありません。
精神的・身体的なストレスなど、複数の要因を背景に脳の働きに不調が生じることで、気分の落ち込みや意欲の低下、睡眠障害、疲労感、食欲の変化などが現れると考えられています。
食欲は低下する場合だけでなく、反対に増加する場合もあります。気分の落ち込みや興味の低下などが続き、日常生活に支障が出ている場合は、精神科や心療内科、小児科などへ相談しましょう。
うつ病の人にみられやすい行動や変化について詳しく知りたい方は、下記の記事も参考にしてください。
妊娠
妊娠初期には、つわりによって吐き気や嘔吐、食欲低下、匂いへの敏感さなどが現れることがあります。
つわりが起こる仕組みは完全には解明されていませんが、妊娠に伴うホルモンや身体の変化など、複数の要因が関係すると考えられています。また、妊娠後期には大きくなった子宮が胃を圧迫し、少量の食事でも満腹感を覚えることがあります。
症状の現れ方や続く期間には個人差があります。水分も取れない、嘔吐を繰り返す、体重が減少するといった場合は、妊娠悪阻の可能性があるため、産婦人科へ相談しましょう。
摂食障害
摂食障害は、食事や体重、体型に対する考え方や行動に問題が生じ、心身にさまざまな影響が現れる病気です。思春期から若年層に多くみられますが、年齢や性別を問わず発症する可能性があります。
神経性やせ症では、明らかに低体重であっても本人が深刻さを認識できず、体重が増えることを強く恐れて食事を制限することがあります。
一方で、食事制限の反動として過食し、その後に嘔吐したり下剤を不適切に使用したりする場合もあります。必ずしも食欲自体が低下しているわけではない点に注意が必要です。
低栄養が進むと治療が難しくなるため、急激な体重減少や食事制限、食後の嘔吐などがみられる場合は、早めに医療機関へ相談しましょう。
食欲がない場合の原因別の治療法
では、それぞれの食欲低下の治し方もご紹介します。
急性胃腸炎
まず、急性胃腸炎の場合、基本的には積極的な治療は行わず経過を見ます。あくまで一時的な炎症に伴う食欲低下が原因であるため、積極的に治療介入する必要はありません。
しかし、胃炎の症状が強く頻回に嘔吐してしまう場合、水分摂取ができなくなり脱水に陥るため、医療機関での点滴治療が必要となります。
逆流性食道炎の場合も、原因によっては内服治療や手術が必要となることがあるため、医療機関への受診をおすすめします。
甲状腺機能低下症
次に、橋本病などの甲状腺機能低下症の場合、体外からの甲状腺ホルモン補充を行う必要があるため、医療機関への受診が必須となります。
もし治療が遅れると、小児の場合は身体の成長や性線機能の発育にも支障をきたし、大人の場合は意識障害などをきたすため、早期の医療介入が必要となる病気です。
脳神経系疾患
脳腫瘍などの治療法は、腫瘍の種類や位置、大きさ、症状などによって異なります。手術や放射線治療、薬物療法などを組み合わせる場合があります。
強い頭痛や繰り返す嘔吐、けいれん、意識状態の変化などがある場合は、速やかな検査と治療が必要です。
うつ病
うつ病の場合、精神科へ受診し必要に応じてカウンセリングや内服療法を開始する必要があります。特にうつ病に対する内服薬でセロトニンやノルアドレナリンの作用が戻れば食欲の改善も期待できます。
また、カウンセリングによってストレスを軽減できれば、自律神経のバランスも整い、正常な蠕動運動が得られることで食欲も改善する可能性があります。
妊娠
妊娠に伴う食欲低下では、食べられるものを少量ずつ取り、まずは水分を確保することが大切です。症状の程度によっては、医師の判断で吐き気止めや点滴などを行う場合もあります。
妊娠中期になると症状が軽減する方もいますが、続く期間には個人差があります。水分を取れない、嘔吐を繰り返す、体重が減少するといった場合は、我慢せず産婦人科へ相談しましょう。
摂食障害
最後に摂食障害の場合、自身の身体に対する認識が周囲の認識と一致していないことを理解してもらうために心理教育を行うほか、栄養療法や薬物療法を行う必要があり、やはり医療機関への受診が必要となります。
特に食欲改善のためには心理教育が重要であり、摂食障害に対する正しい知識を身につけ、健康的な食生活に改善するための助言などを行います。摂食障害に対する特効薬はないため、認識をもとに戻す必要があります。
すぐにできる対処法
食欲がない場合は、無理に通常量を食べようとせず、まず水分を取れているか確認しましょう。
吐き気や胃の不快感がある場合は、消化しやすい食品を少量ずつ、複数回に分けて取る方法があります。1日3回にこだわらず、本人が食べやすい時間と量に調整してください。
必要な睡眠時間は年齢によって異なります。小学生は9~12時間、中学生・高校生は8~10時間、成人は少なくとも6時間以上を目安として、十分な睡眠を確保しましょう。
体調が安定している場合は、散歩などの軽い運動が食欲につながることもあります。ただし、発熱や脱水、強い倦怠感、低栄養がある場合は運動を控えてください。
脂肪分の多い食事や刺激の強い香辛料、アルコールは、胃の不快感や吐き気を悪化させることがあります。食欲を戻す目的でアルコールを摂取することは避けましょう。
水分を取れない、嘔吐を繰り返す、急激に体重が減っている、強い頭痛や腹痛、意識状態の変化などがある場合は、速やかに医療機関を受診してください。
もしかしたら起立性調節障害かも
食欲低下には、起立性調節障害(OD)が関係している可能性もあります。
起立性調節障害は、立ち上がったときの血圧や心拍数などを調節する働きがうまく機能せず、さまざまな症状が現れる病気です。小学校高学年から中学生ごろに多くみられますが、大人でも起立時の不調が続くことがあります。
主な症状には、朝起きられない、立ちくらみ、めまい、頭痛、倦怠感、動悸、腹痛、吐き気、食欲低下などがあります。朝から午前中に症状が強く、午後になると改善する場合もあります。
治療では、病気への理解を深めた上で、水分・塩分摂取や起立時の工夫、適度な運動などの非薬物療法を行います。症状や重症度によっては、薬物療法や家庭・学校での環境調整を組み合わせることもあります。
食欲低下に加えて、朝の起床困難や立ちくらみ、倦怠感などがみられる場合は、下記のセルフチェックも参考にしてください。
起立性調節障害の治し方や、家庭で親ができることについて詳しく知りたい方は、下記の記事も参考にしてください。
【参考】
摂食障害情報ポータルサイト
KMクリニック









