小学生の子供を持つ親御さんにとっては、子供の一挙手一投足に目がいってしまうと思います。転んで怪我をしたり、他の子供と喧嘩してしまったり、中高生の子供よりも心配事は多いかもしれません。
小学生、特に高学年になると徐々に子供は成長するため、本来ならば心配も減っていくはずですが、中には成長とともにリスクが増加してくる病気があります。その1つが起立性調節障害(OD)です。
起立性調節障害は小学生高学年から徐々に発症リスクが増加し、小学生全体の約5%程度が罹患すると言われる疾患で決して稀な病気ではありません。
子供が急に朝起きれない、通学できない、立ち上がるとふらつくなどの症状が出現したら起立性調節障害の可能性があります。
大切な子供が起立性調節障害に罹患すれば、親御さんも不安が強くなり色々焦ってしまうと思います。そんな時に対応方法がわからないと子供はもっと不安になってしまいます。
そこで本記事では、起立性調節障害の症状や生活への影響、それに対する対応方法をご紹介していきます。起立性調節障害に対する理解が深まり子供自身や親御さんが適切な対応ができるようになれば幸いです。
小学生でも起立性調節障害になるの?
まず最初に、結論から言えば小学生でも起立性調節障害に罹患する可能性はもちろんあります。一般的に起立性調節障害は小学生では約5%が、中学生になれば約10%程度が罹患する疾患であり、決して稀な疾患ではありません。
特に疾患の特性上、成長とともに小学校高学年以降に罹患率が上昇する可能性があるということをまず親御さんは認識しておきましょう。
なぜ成長とともに起立性調節障害に罹患しやすくなるのでしょうか?理由は病態にあります。
起立性調節障害は自律神経のバランスが乱れることが原因です。自律神経は交感神経と副交感神経の総称で、それぞれ血圧や血糖値、ホルモンや睡眠、排泄など多くの機能に関わり、その時の肉体に合わせて自動調整しています。
起立時に血液が下肢に多く取られると脳血流が低下してしまいます。本来であれば交感神経が活性化して心臓の拍動を強めたり血管を締め上げることで、自動的に脳血流を確保します。
起立性調節障害では交感神経が適切に反応しないため、立ち上がると脳への血流が不足してしまい様々な症状が出現します。小学生になると徐々に肉体が成長しはじめ、心臓と脳の距離が開いて脳血流が低下しやすくなります。
これらの解剖学的な理由で起立性調節障害に罹患しやすくなっていくのです。
小学生が起立性調節障害を患う原因
小学生高学年は、中学への進学に対する憂いや転校、塾などの習い事など環境の変化が多く存在します。これらのストレスが起立性調節障害の発症のきっかけになり兼ねません。
仕方のないことですが小学生は大人と比較して精神的に未熟なため、環境の変化に伴うストレスが成人よりも大きく、自律神経のバランスに影響が出やすいです。
ストレスに伴い交感神経が不用意に刺激されてしまい、自律神経のバランスが乱れ起立性調節障害の症状が悪化する可能性があるのです。
また、女性の場合、年齢的に初潮(初回の月経)を迎える年頃ですが、月経によってエストロゲンやプロゲステロンなどの女性ホルモンのバランスが大きく崩れてしまいます。
エストロゲンやプロゲステロンの濃度変化は脳の一部である視床下部という部位に大きな影響を与えます。視床下部はもともと自律神経を調節しているため、結果的に月経により自律神経も乱れてしまいます。
つまり、小学生高学年から中学生にかけての女児の場合、月経や初潮が起立性調節障害の発症の原因になる可能性があるということを認識しておきましょう。
小学生に多い起立性調節障害の主な症状
起立性調節障害の症状は、起立時のふらつきや体調不調、全身倦怠感、頭痛、吐き気など多岐に渡り、ほかの病気と比較して特異的な症状に乏しいです。特に小学生高学年の起立性調節障害の子供にとって問題になるのは、これらの症状をうまく言語化して親御さんに伝えられない可能性がある点です。
起立性調節障害は表面上、体を見ても触ってもどこが悪いのか周囲の人には分かりません。つまり、いかに本人が症状を周囲に伝えられるかが重要ですが、小学生ではなかなか難しい可能性があります。
早期発見、早期診断のためには、起立性調節障害が疑わしい子供の親御さんは常に体調変化や症状を観察しておく必要があります。
小学生が起立性調節障害を患った場合どうなる?
小学生が起立性調節障害になるとまず問題になるのは、体調不良のあまり通学ができなくなる点です。起立とともに体調不良になってしまうため特に午前中は体調不良に悩まされ、突如通学困難になる例が多いです。
小学生にとって授業は中学校に向けての基礎的な教育でありとても重要です。通学できない以上授業にも参加困難なため、学業で遅れをとってしまう可能性が高いのです。
場合によっては、親御さんがいかにご家庭で勉強を教えてあげられるかが子供の将来に関わってくるかもしれません。また家庭教師や塾なども1つの選択肢かもしれません。
不登校になった場合の対応
起立性調節障害は発症から1年後には約50%が、2-3年後には約80%が自然に治ると言われています。
小学生の場合は義務教育ですので学業成績がどうであれ進学は可能ですが、育ち盛りの小学生にとって起立性調節障害に苦しむ数年は非常に長く感じる期間だと思います。
親御さんはそんな子供の負担を極力減らせるように、うまく学校と連携して子供の学業や対人関係について相談して行く必要性があります。
それでも症状が改善しない場合には、子供の体調回復を最優先に考えて行動することが重要です。また医療機関への受診を必ず検討しましょう。
うつ病と起立性調節障害の違い
起立性調節障害とうつ病は意欲や集中力の低下、食欲低下など症状が類似しています。2つの疾患の相違点は、起立性調節障害の場合午後や夕方になるにつれて症状が緩和しますが、うつ病には日内変動が少ない点です。
うつ病と誤診してしまった場合に内服する抗うつ剤は起立性調節障害の症状を増悪する可能性があるため、調節障害に対して診療経験のある医療機関で適切な診断を受ける必要があります。
もし小学生で起立性調節障害を疑った場合には、まずはご家庭でセルフチェックを行いましょう。下記記事でセルフチェックの項目について詳しく解説されています。ぜひ参考にしてください。
下記記事では「起立性調節障害の治し方・子供に対して親御さんができること」をまとめていますので、ぜひ参考にしてみてください。
【参考】
田中大介 監修『起立性調節障害(OD)朝起きられない子どもの病気がわかる本』 講談社
日本小児心身医学会 起立性調節障害(OD)