起立性調節障害とは

「立つと目の前が暗くなる」時の原因や対策・治療法を解説

この記事の監修者

医師 錦惠那

医師 錦 惠那

内科一般・腎臓内科・透析科・産業医
保有資格:日本内科学会内科専門医・日本医師会認定産業医

 

「立つと目の前が暗くなる」時の原因や対策・治療法を解説

急に目の前が暗くなり、倒れてしまうとすごく不安になると思います。目の前が暗くなる原因や考えられる病気、その治療法について解説していきます。

また、起立性調節障害の方でも急に立ち上がったり、起き上がる際にこの様な症状が見られることがあり、起立性調節障害の方にみられる特徴、他の疾患との違いなどについても解説していきます。

「立つと目の前が暗くなる」の原因

目の前が暗くなる症状は医学的には「眼前暗黒感」と呼び、脳血流が低下することでこの症状が見られます。まずは、眼前暗黒感の症状について少し解説していきます。

読んで字のごとく、目の前が暗くなる症状ですが、下記に示す色々な原因で脳血流が低下することで見られます。

◆心臓や血管などに問題がある循環器疾患

私たち体内では、心臓というポンプが血液を拍出することで各臓器に血液がいきわたり、全身を血液が循環しています。

不整脈や弁膜症など心臓に病気があると、心臓のポンプ機能に不具合が生じ、全身に血液が行き渡らなくなってしまい、結果的に脳への血流も低下し症状が出現します。

◆体を循環する血液量の低下

心臓のポンプ機能が正常に働いていても、体を循環する血液の量自体が減少することで、各臓器、脳への血流が低下します。

◆迷走神経反射

心臓のポンプ機能、血液量に問題がなくても、自律神経のバランスに不具合が生じることでも脳血流が低下することがあります。

予防接種などの注射や採血の際に倒れてしまう方はこの病気に該当します。慣れていない注射や採血のために過剰に緊張してしまい、そのストレスが迷走神経を刺激します。

迷走神経は副交感神経に分類されるため、迷走神経が刺激されることで末梢の血管が広がり、脳への血流が低下してしまうのです。

◆薬の副作用

もともと血圧を下げる降圧薬やむくみの改善などに使用される利尿剤などを服用している状況で、薬が効きすぎているような場合も脳血流を低下させてしまいます。

降圧薬が効きすぎることで低血圧になりますし、利尿剤が効きすぎることで体内は脱水傾向になりかねず、結果的に脳血流低下を招いてしまいます。"

◆体位の変動

心臓のポンプ機能、血液量に問題がなくても、血液の分布の問題で脳血流が低下することがあります。起き上がる時、座っている状態から急に立ち上がる時など、体位の変化に伴って血液の分布は変化します。

座位の状態では重力に従って血液は下肢に溜りやすくなります。この状態から立ち上がる時、重力に従い全身の血液はさらに下肢へ向かいやすい状況になります。

そうなると、脳への血流は不足しやすく、症状が出現してしまいます。一般的には、脳血流が低下しないよう、立ち上がってすぐに私たちの体内では交感神経を活性化させ末梢の血管を収縮させることで脳への血流を維持します。

起立性調節障害の方は交感神経の活性化に不具合があるため、体位変動時に脳血流低下を起こしやすく、立つと目の前が暗くなる症状が現れます。

「立つと目の前が暗くなる」場合に考えられる病気とは

眼前暗黒感が出現する病気をいくつかご説明します。

<心臓や血管などに問題がある循環器疾患>

◆不整脈

不整脈には脈が速くなる頻脈タイプ、脈が遅くなる徐脈タイプがあります。頻脈タイプであれば、心室頻拍や心室細動、徐脈タイプであれば洞不全症候群や房室ブロックなどがあります。

動悸や息苦しさなどの症状も一緒にみられることもあります。

◆弁膜症

心臓には左、右それぞれに心房、心室という部屋があり、全部で4つの部屋に分かれています。それぞれの部屋と部屋、部屋と大血管との間には弁があり、心臓の収縮に伴って弁が開いたり、閉じたりしています。

弁膜症とはその弁が閉まりきらなかったり、開きにくくなることで血液の逆流や拍出量の低下を来し、心房や心室などに負担をかけることで心臓の機能が低下します。

◆心筋症

細菌やウイルスの感染、膠原病などが原因で心臓の筋肉自体に炎症を及ぼし心臓の機能低下を招く病気です。原因がはっきりしないこともあります。立ちくらみや息切れなどの症状が見られることがあります。

<体を循環する血液量の低下>

◆出血

体表面の傷からの出血であれば、気づきやすく対処もしやすいため、血液量が低下するまでに至ることはあまりありません。しかし、体内の出血は気づくことが困難であるため慢性的な出血で血液量が低下し、貧血に至ることもあります。胃や十二指腸の潰瘍などに注意が必要です。

空腹時の腹痛や食後の腹痛などが見られることもあります。

◆脱水

脱水になると、体内の血液量が少なくなるため、脳への血流も低下しやすくなってしまいます。夏場は熱中症に特に注意が必要です。熱中症は以前は熱射病とも言われており、屋外でもかかるものと思いがちですが、近年は屋内での報告例も多く、屋内にいるからといって安心はできません。

「立つと目の前が暗くなる」の治療法

上記でご説明した眼前暗黒感が見られる病態、病気についての診断や治療方法について解説していきます。

◆不整脈

動悸や息切れ、脈が飛ぶ、ふーと気が遠くなるなどの症状が見られた場合は、何らかの不整脈の可能性があります。必ず医療機関を受診し、心電図などの検査を行いましょう。

心電図でどのタイプの不整脈かがわかります。1度の心電図で異常波形がひろえなかった場合は、ホルター心電図といい携帯式の機械を持参頂き、24時間全ての脈を記録し、異常を詳しく調べることができます。

治療に関しては、抗不整脈薬の使用や場合によってはペースメーカーや植え込み型除細動器などが必要になることもあります。

◆弁膜症

大動脈弁狭窄症、大動脈弁閉鎖不全、僧帽弁狭窄症、僧帽弁閉鎖不全などがあり、心臓のエコー検査で評価します。どのタイプの弁膜症があり、狭窄の度合いや逆流の度合い、それぞれの部屋にかかっている負担などがわかり、これに基づいて手術の適応などが検討されます。

いずれの場合も、むくみや息切れなど心不全の症状がある場合は、お薬による治療が必要です。"

◆心筋症

心臓の筋肉自体の病気のうち、原因および全身疾患との関連がはっきりしているものと、そうでないもの(特発性)がありますが、特に原因不明の「特発性」の場合を「心筋症」と呼んでいます。

肥大型心筋症、拡張型心筋症、拘束型心筋症に分類され、はっきりしたメカニズムはわかってはいませんが、遺伝的な要素、感染による免疫反応などが関与している可能性が指摘されています。

症状がない場合も少なくありません。他疾患の除外、確定診断のためには心エコーや心臓カテーテル検査などが必要になります。治療ですが、この病気に特化した治療はなく、むくみや動悸、息切れなどの症状がある場合は、心不全治療薬を使用します。

◆胃潰瘍・十二指腸潰瘍

症状がない場合もありますが、多くはお腹の痛みがみられます。典型的には、胃潰瘍では食後の痛み、十二指腸潰瘍では空腹時の痛みが多いです。内視鏡検査(胃カメラ)により診断することができます。

胃酸の分泌を抑える薬が治療に使用されます。潰瘍の原因の多くはピロリ菌であり、ピロリ菌除菌が必要であることも多いです。

◆脱水症

脱水症を予防するには、こまめな水分補給が重要です。血管内の血流を維持するためには、水分とともにナトリウム・塩分を摂取することも重要です。

普段通り食事摂取ができていれば水やお茶を補給することで十分問題ないです。食欲がなく、食事を食べれない場合は塩分や糖分などが含まれている経口補水液などを摂取するようにしましょう。

糖尿病や高血圧、心臓病や腎臓病がある方は必要以上に塩分や、水分を摂取することが望ましくない場合もありますので、主治医に確認しましょう。また、起立性調節障害の子どもの場合は、基本的には水分、塩分ともに少し多めに摂取することが推奨されています。

◆熱中症

脱水の予防とともに、暑い日は外出しない、屋内ではクーラーをつけ適温に調整するようにしてください。また、日ごろよりしっかり汗をかくことも重要です。適度な運動習慣、湯船に浸かることでしっかり汗をかく体にすることが重要です。

もしかしたら起立性調節障害かも

目の前が暗くなる「眼前暗黒感」は脳への血流不足の結果見られる症状です。上記でご説明したように、色々な病気で症状が出現しますが、起床時や起立時など体位で症状が見られる場合は、起立性調節障害の可能性があります。

起立性調節障害の方は交感神経と副交感神経の働きのバランスが崩れることで多様な症状が見られます。

一般的には、起床時に交感神経が活性化しますが、起立性調節障害の方は交感神経の活性化が弱く、末梢血管の収縮が起こらず、心臓へ血流が戻りにくく、結果的に心臓から拍出される血液が低下し、脳血流が低下します。

脱水の予防、下肢筋力の増強などの対策を行い、体位変動時はなるべくゆっくりとした動作を心がけ、症状出現を予防することが重要です。

起立性調節障害と思っていたら、実は貧血や不整脈など別の疾患が合併している可能性もあるため、症状が見られた場合には医療機関を受診することをおすすめします。

下記の記事では、起立性調節障害のセルフチェックについて解説していますので、ぜひ参考にしてみてください。

 

 

下記記事では「起立性調節障害の子供に対して親御さんができること」をまとめていますので、ぜひ参考にしてみてください。

 

【参考】
田中大介 監修『起立性調節障害(OD)朝起きられない子どもの病気がわかる本』 講談社
小児心身医学会ガイドライン

トトノエライト なおくん

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