睡眠は身体を休め、組織の修復や記憶の整理など身体にとってとても重要なものです。
近年、睡眠と色々な疾患との関連性が研究されています。日中に眠気の発作が起こるナルコレプシーという病気と睡眠に異常が見られるうつ病は間違われやすく注意が必要です。
こちらの記事ではナルコレプシーとうつ病の関係について私の個人的な見解も含め解説していきたいと思います。
ナルコレプシーとうつ病は併発しやすい?
ナルコレプシーは過眠を引き起こす疾患の一つです。何らかの原因で身体を覚醒させておくオレキシンという物質を産生することができないために、通常寝てはならない場面で我慢できないほどの眠気に襲われ突然眠ってしまう病気です。
一方で、うつ病も過眠を引き起こすことがあります。はっきりとした原因はわかっていませんが、精神的・身体的ストレスなどを背景に、脳の働きに何らかの不調が起きることで発症するとされています。
症状としては、気分の落ち込み、何事にも興味が持てない、不安、食欲低下、疲れやすい、頭が重い・頭痛、首や肩のこりなどがみられます。
うつ病も睡眠に影響を及ぼすことがよくあります。夜間の不眠が原因で日中の過眠がみられることがあり、ナルコレプシーとうつ病は間違われやすいと言えます。
両者は間違われやすいという特徴もありますが、実際にはナルコレプシー方の3人に1人はうつ病などの気分障害を合併しているとの報告もあり、両者は非常に関連が深いともいえるでしょう。
両者が共存することは、患者さんの日常生活に深刻な影響を与える可能性があります。ナルコレプシーによる日中の睡眠攻撃や睡眠の不規則さは、うつ病の症状を悪化させる可能性があります。
また、うつ病の症状がナルコレプシーを悪化させることもあります。両方の状態が同時に管理されない場合、患者の生活の質や日常の機能が損なわれる可能性があるため、適切な専門家のもと適切な介入が必要となります。
ナルコレプシーでうつ病が併発する原因
上記でもお話しましたが、ナルコレプシーの方の3人に1人がうつ病などの気分障害を合併していると報告されています。
しかし、両者が合併する原因に関しては、はっきりしたことはわかっておらず、こちらでご説明することは推測になりますが、ご参考になれば幸いです。
遺伝的要因
解明されていない部分も多いのですが、遺伝的な要素が関係しているとの研究結果もあるため、両親や兄弟にナルコレプシーの方がいる場合、ナルコレプシーになりやすいと言われています。
同様に、うつ病の場合も、一卵性双生児のうち一人がうつ病であった場合、もう一人も70-90%という高い確率でうつ病を発症することが研究で示されており、遺伝的要因は大いに関連していると言えます。
神経伝達物質の要因
ナルコレプシーは身体を覚醒状態にする作用があるオレキシンという神経伝達物質がの産生が低下するために引き起こされると言われています。
一方で、うつ病発症のメカニズムに関しては多くの仮説がありますが、従来より脳内におけるノルアドレナリンやセロトニンなどの神経伝達物質の作用が低下しているという仮説があります。
したがって、脳内の神経伝達物質の不均衡が、ナルコレプシーとうつ病の両方に影響を与える可能性があると考えます。
睡眠障害
ナルコレプシーによる睡眠攻撃や不規則な睡眠パターンは、ストレスとなり、うつ病の発症や悪化に寄与する可能性があります。
睡眠の質や量が不十分な場合、うつ病の症状が悪化することがあります。
ナルコレプシーでうつ病を併発した場合の対処法
ナルコレプシーでうつ病を併発した場合の対処法を詳細に解説していきます。
精神科・メンタルクリニックを受診する
ナルコレプシーとうつ病の併発は個々の症状や状況によって異なるため、適切な治療計画が必要です。
一般的には、内科ではなく、精神科やメンタルヘルスの医師が専門としているため、精神科がある医療機関やメンタルクリニックを受診すると良いでしょう。
専門医師の指導に従い、治療計画を実施することで、症状の管理や生活の質の向上が期待できます。
睡眠環境の改善
ナルコレプシーもうつ病も睡眠と非常に深い関連があり、適切な睡眠習慣を獲得することは症状緩和に重要と考えます。
良好な睡眠環境を整えることで、睡眠の質を向上させることができます。安定した睡眠スケジュールを確立し、快適な睡眠環境を整えることが重要です。
日常生活の管理
どの病気にも言えますが、ナルコレプシーとうつ病の両方を管理するためには、健康的な生活習慣を維持することが重要です。
バランスのとれた食事、適度な運動、ストレスの管理、適切な睡眠環境の確保などを行い、症状の悪化を防ぎましょう。
もしかしたら起立性調節障害かも
ナルコレプシーは日中の強い眠気発作が特徴的で、うつ病は夜間の不眠のために日中過眠状態になることがある疾患で、両者ともに睡眠・過眠と関連がある疾患と言えます。日中の過眠で考えられる別の疾患としては、起立性調節障害があります。
起立性調節障害は自律神経である交感神経と副交感神経のバランスが崩れることが主な原因で、日中特に朝、午前中の眠気(過眠)、気分不良が特徴的な疾患です。
交感神経が優位に活動することで私たちは朝すっきりと目覚めることができるのですが、起立性調節障害の方の場合、起床時間になっても交感神経の活性が緩やかであるため、起きることができない、眠気、倦怠感、めまい、頭痛、腹痛など実に様々な症状に悩まされます。
午前中をかけて徐々に交感神経が活性化するため、次第に症状は緩和され、午後には症状がずいぶんと改善することが多いです。日中の過眠、その他の症状で悩まれている場合は起立性調節障害の可能性もあるので、是非一度セルフチェックをしてみてください。
下記記事では、起立性調節障害のセルフチェックについて解説しておりますので、是非ご一読ください。
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【参考文献】
・日本小児心身医学会
・バイオメカニズム学会誌,Vol. 35, No. 1 (2011)