平成26年と令和2年の不登校児童生徒の割合を比較すると、小学生で0.4%から1.0%に、中学生で2.8%から4.1%に増加しており、学校に通う子ども全体では約2%が不登校です。これは年々増加傾向にあります。
学校に通えなくなってしまう原因は、いじめや周囲との関係悪化、転校、病気など様々ですが、起立性調節障害(OD)を併発している子供は不登校になりやすいと言われています。
実際に、不登校児の中で起立性調節障害が並存している割合は約30-40%程度と言われ、子ども全体の約0.8%が起立性調節障害による不登校になってしまう計算になります。この数字を見ればどの家庭にも起こりうることであることがわかります。
実際に大切な自分の子供が起立性調節障害の影響で学校に通うことができなくなった時、親御さんはその対処法や疾患との向き合い方、学校との付き合い方をある程度理解しておく必要があります。
そこで本記事では、起立性調節障害の子供における通学や学校との連携などについて分かりやすく解説していきます。
登校拒否の子供に対して学校に行かせたほうがいいの?
小学校や中学校は義務教育ですので、起立性調節障害の症状によって学校に通えずとも卒業することは可能です。もちろん学業に遅れが生じることは考えられますが、学校以外に塾や家庭教師などの選択肢もあります。
しかし、高校生ともなれば話は変わってきます。規定の登校日数や単位を満たせない場合、全日制の高校では卒業や進級は難しいのです。
さらに学校生活で得られるものは学業だけではありません。部活動や普段の生活で周囲の子供たちと人間関係を構築し、場合によっては一生続くような関係性を築く機会も不登校では失われてしまいます。
だからと言って、起立性調節障害の症状で学校に通うのが難しい子供に対して強制的に通学させることが正しいのかといえば、それは子どもの病状にかえって逆効果になる可能性があるため勧められません。
結論から言えば、無理してまで通学させる必要はないかと思います。そもそも起立性調節障害は気合いや根性の問題でなはく身体的な病気であり、親御さんがどんなに通学を勧めても子供の体調的に無理なものは無理です。
起立性調節障害は急激な肉体の成長に自律神経の発達が追いつかず、起立時に本来活性化するはずの交感神経が活性化しないため脳血流が低下する病気です。起立時に症状が出るため、特に起床時や午前中に症状が出やすいです。
以上のことからも、朝の通学時に症状が出てしまいどうしても学校にいけない場合があります。そんなときに親御さんが学校に行けないことを叱責してしまうと、子供はさらにストレスを感じてしまいます。
ストレスによって自律神経のバランスがさらに崩れてしまうため、起立性調節障害自体が悪化してしまう可能性が高まってしまいます。まずは病気からの回復を最優先に考えて対応しましょう。
学校側の起立性調節障害の子供への配慮
起立性調節障害の症状に苦しんで通学に支障をきたす場合は本人や親御さんが改善を模索するのはもちろんですが、学校内で親御さんが介入することには限界があるため学校側にも協力してもらう必要があります。
起立性調節障害は起立時に症状が出現する病気ですので、例えば音楽の授業で合唱したり体育の授業で運動すれば症状が出現する可能性あります。そんな時は学校側の配慮でいつでも座って良いようなルールを作ることが望ましいです。
また、起立性調節障害は暑い場所で症状が出やすいため、子供が極力涼しい場所で過ごせるように、特に屋外での活動時には配慮が必要です。
さらに、激しい運動や部活動ではこまめな水分補給を促す必要があります。脱水は脳血流の低下を誘発しやすくなるため、起立性調節障害の子供にとって非常にハイリスクだからです。水筒の持参なども望ましいです。
これらの配慮は学校側の努力義務であり、そういったサポートを受けるために親御さんは学校側と密に連携を取っていく必要性があります。また周囲の子供の理解を促すことも必要です。
高校生といえどまだまだ精神的には大人ではなく未熟な部分もあります。他の子供が1人だけ座って休んでいたり、周囲と異なる行動を認められていることに疑問を感じ、場合によって心ない言葉を発する可能性もあります。
本人の希望を尊重した上で、可能であれば学校側は周囲の子供やその親たちに起立性調節障害という疾患に対する理解や知識をつけてもらうことで、起立性調節障害の子供はもっと快適に学校で過ごせるようになるかと思います。
また、校内での居場所を用意してあげることも重要です。起立性調節障害の子供は毎日同じ時間に通学できるわけではないので、授業の最中に途中で教室に入るのは実は勇気がいるのです。
そこで、少しでも心のハードルを下げるために保健室のような別室登校も選択肢の1つです。別室で他の生徒同様の課題に取り組めば、ある程度学業の遅れを取り戻し進級の可能性も高まるかと思います。
学校に行けない、行きたがらない子どもへの親の対応
登校に支障をきたした場合、それは親御さんにとってもショックな出来事だと思いますが、決して焦って子供にストレスを与えてはいけません。
前述したように、まずは子供の体調回復が最優先です。子供に学業に取り組むエネルギーがないときに発破をかけても症状が悪化するだけです。その上で親御さんは学校側と密にコミニケーションを取る必要性があります。
具体的には、今後の学業に対するプランを学校とともに計画していく必要があります。学校のテストを受け取って自宅で勉強させたり、体調の改善する午後に課題のプリントを受け取りに行くなど様々な方法があります。
また、あまりにも学業が遅れてしまうような場合、進路変更も1つの選択肢です。高校生の場合、不登校による留年もあり得ますが、思い切って学校を変えてみるのも良いかもしれません。
今は全日制の高校以外にも、通信制や定時制など様々なスタイルの高校が多くあります。全日制の高校に無理にこだわるよりも本人にとって良い決断になる可能性もあるため、親子間で慎重に相談する必要があります。
小学生や中学生と違い、高校生の場合自分の将来や進路に対する不安も強く、プレッシャーを感じている可能性が高いです。だからこそ大人は子供に多くの選択肢を与え、その決断を尊重してあげましょう。
さらに、学校の対応、親と学校の理解と協力とともに、早期から正しい生活指導と適切な治療による各者バランスの良いサポートが必要です。ベストなサポートを受けても、急に改善できない部分は学校の変更も含めた柔軟な適応も考慮しましょう。
下記記事では、特に高校生の起立性調節障害について解説しています。ぜひ参考にしてみてください。
下記記事では「起立性調節障害の子供に対して親御さんができること」をまとめていますので、ぜひ参考にしてみてください。
【参考】
田中大介 監修『起立性調節障害(OD)朝起きられない子どもの病気がわかる本』 講談社
日本小児心身医学会 起立性調節障害(OD)