うつ病や適応障害などの精神疾患は、大人だけでなく子供にもみられます。特別な人だけが発症するものではなく、小学生や中学生でも、さまざまな要因が重なることで発症する可能性があります。
子供のうつ病では、気分の落ち込みだけでなく、イライラや頭痛、腹痛、倦怠感、睡眠の問題などが目立つ場合もあります。そのため、親御さんがうつ病の症状や受診の目安について知っておくことも大切です。
そこで本記事では、子供におけるうつ病の症状や原因、治療法、起立性調節障害(OD)との関係についてわかりやすく解説していきます。
思春期のうつ病では、気分の落ち込みだけでなく、イライラや身体の不調が目立つこともあります。思春期にみられるうつ病のサインについて詳しく知りたい方は、下記の記事も参考にしてください。
うつ病とは
うつ病という言葉は日常会話でもよく聞かれるようになりましたが、そもそもうつ病とはどのような病気なのでしょうか。
人はショックな出来事があると、気分が落ち込んだり、やる気がなくなったりすることがあります。多くの場合は時間の経過とともに少しずつ回復しますが、気分の落ち込みや物事を楽しめない状態などが長く続き、日常生活に支障をきたしている場合は、うつ病の可能性があります。
うつ病の主な症状には、抑うつ気分、興味や喜びの減退、食欲や体重の減少または増加、不眠や過眠、疲れやすさ、気力の低下、思考力や集中力の低下、死について繰り返し考えることなどがあります。
子供の場合は、気分の落ち込みをうまく言葉にできず、イライラする、怒りっぽくなる、頭痛や腹痛を繰り返す、学校に行けなくなるといった形で現れることもあります。
日本では、100人中約6人が生涯のうちにうつ病を経験するという調査結果があります。これは全年代を対象とした目安であり、厚生労働省では、青年期の有病率を100人に1〜7人程度としています(参照:「うつ病とは?:子どものSOSサイン:こころもメンテしよう ~家族の皆さんへ~」)。
症状が強くなると、自分を責めたり、将来に希望を持てなくなったりして、「死んでしまいたい」と考えることもあります。このような言動がみられた場合は、子供を一人にせず、速やかに医療機関や相談窓口へつなげることが大切です。
うつ病は、本人の気持ちの弱さや怠けによって生じるものではありません。気になる症状が続く場合は、早めに専門家へ相談しましょう。
では、具体的にどのような要因がうつ病の発症に関係するのでしょうか。
うつ病になりやすい人の特徴
うつ病の発症には、精神的・身体的なストレス、生活環境、考え方の傾向、遺伝的要因など、複数の要因が関係すると考えられています。どれか1つだけで発症するとは限らず、誰にでも起こる可能性があります。
生活習慣の面では、十分な休養や睡眠、規則正しい食生活、無理のない運動、リラックスできる時間を確保することが、心身の健康を保つ上で大切です。睡眠不足や疲労が続いている場合は、生活の負担を見直す必要があります。
うつ病との関連が指摘されてきた性格傾向の1つに、「メランコリー親和型」と呼ばれるものがあります。真面目で責任感が強い、几帳面で秩序を重んじる、周囲に気を使うといった傾向があり、つらい状況でも一人で抱え込んでしまうことがあります。
ただし、性格だけでうつ病を発症するわけではなく、このような特徴があるからといって必ずうつ病になるわけでもありません。子供の場合は、本人の性格だけに原因を求めず、学校や家庭での環境、友人関係、睡眠、身体の状態などを含めて考えることが大切です。
抑うつ気分が続くと、自分や周囲、将来に対して否定的に考えやすくなり、活動量が低下することがあります。活動量が低下すると、達成感や楽しさを感じる機会も減り、さらに気分が落ち込むという悪循環に陥る場合があります。
うつ病になる原因
うつ病の詳しい病態や原因は、現在も完全には解明されていません。遺伝的要因や脳の働き、本人の気質、生活環境、精神的・身体的なストレスなど、複数の要因が関係して発症すると考えられています。
うつ病の病態を説明する考え方の1つとして、セロトニンやノルアドレナリンなどの神経伝達物質の働きが関係するという「モノアミン仮説」があります。ただし、神経伝達物質の変化だけで、うつ病のすべてを説明できるわけではありません。
発症のきっかけとして、つらい出来事や過度な負担が関係することがあります。一方、結婚や進学、就職、引っ越しなど、一般的には喜ばしい出来事であっても、生活環境が大きく変化することで心身の負担になる場合があります。
子供の場合も、学校でのいじめや友人関係、進学、受験、クラス替え、部活動、家庭環境の変化などが負担になることがあります。こうした出来事だけを原因と決めつけず、症状や生活状況を総合的に確認することが大切です。
学校生活で感じるストレスへの対処法について詳しく知りたい方は、下記の記事も参考にしてください。
うつ病の治療法
うつ病の治療では、まず心身を休ませ、負担となっている環境を調整することが大切です。学校や家庭で強いストレスを感じている場合は、本人の状態に応じて一時的に距離を置いたり、周囲の配慮を受けたりすることも検討します。
医学的な治療には、薬物療法や精神療法・カウンセリングなどがあります。精神療法では、専門家との対話を通じて、気持ちや考え方を整理したり、ストレスへの対処方法を身につけたりします。
薬物療法では、症状に応じて抗うつ薬などが使用されることがあります。ただし、子供では年齢や症状、ほかの病気の有無などを踏まえて、必要性を慎重に検討します。
治療方法は一人ひとり異なるため、本人と家族だけで判断せず、小児科や児童精神科などの医療機関へ相談しましょう。
もしかしたら起立性調節障害かも
お子さんにうつ病のような症状がみられる場合、同じような症状が現れるほかの病気も考える必要があります。起立性調節障害もその1つです。
起立性調節障害では、立ち上がったときの血圧や心拍数を調節する自律神経の働きがうまく機能せず、めまい、立ちくらみ、倦怠感、起床困難、頭痛、動悸などの症状が現れます。疲れやすさや集中力の低下、睡眠の問題など、うつ病と共通する症状がみられることもあります。
一方で、起立性調節障害とうつ病が併存する場合もあります。症状だけでどちらか一方と判断することは難しいため、症状が現れる時間帯や姿勢との関係、気分の変化、生活への影響などを確認し、慎重に評価することが大切です。
では、具体的に2つの病気にはどのような違いがあるのでしょうか。
起立性調節障害とうつ病の違い
うつ病が気分の落ち込みや意欲の低下などを中心とする精神疾患であるのに対し、起立性調節障害は、自律神経による循環調節の異常が関係する身体疾患です。ただし、起立性調節障害の症状には心理社会的なストレスが影響する場合もあります。
疲れやすさ、倦怠感、食欲低下、集中力の低下、睡眠の問題などは、両者に共通してみられる症状です。
起立性調節障害では、起床時や立ち上がったときに症状が現れやすく、午前中に強く、午後から夕方にかけて軽くなる傾向があります。ただし、重症の場合は午後まで症状が続くこともあります。
一方、うつ病では、気分の落ち込みや興味・喜びの低下などが長く続きます。子供では、イライラや怒りっぽさ、頭痛、腹痛などが目立つ場合もあります。また、うつ病にも症状の日内変動がみられるため、時間帯だけで両者を区別することはできません。
診断では、起立時の血圧や心拍数の変化、症状が現れる状況、気分や行動の変化、学校生活への影響などを総合的に確認します。起立性調節障害とうつ病が併存するケースもあるため、気になる症状が続く場合は医療機関へ相談しましょう。
医療機関を受診する前に、起立性調節障害にみられる症状をセルフチェックで確認することもできます。ただし、セルフチェックだけで診断することはできないため、気になる症状が続く場合は医療機関へ相談しましょう。
子供向けの起立性調節障害のセルフチェックは、下記の記事を参考にしてください。
起立性調節障害の治療では、本人の症状を理解し、家庭や学校で無理のない環境を整えることも大切です。具体的な治療方法や親御さんができるサポートについては、下記の記事も参考にしてください。
【参考】
田中大介 監修『起立性調節障害(OD)朝起きられない子どもの病気がわかる本』 講談社
日本小児心身医学会 起立性調節障害(OD)










