自律神経の調整のバランスが崩れることで多様な症状を来す自律神経失調症ですが、受診のタイミングや受診先などについて解説していきます。
また、同じように自律神経の異常が原因である起立性調節障害の可能性がないかについても最後に解説したいと思います。
自律神経失調症は何科を受診するべき?
自律神経失調症は交感神経と副交感神経のバランスが崩れた時に生じる病気ですが、確立した疾患概念や診断基準があるわけではありません。
日本心身医学会では、自律神経失調症とは、多様な自律神経系の症状を有し、しかも検査では器質的な病変が認められず、かつ顕著な精神障害のないもの、と定義されています。つまり、様々な自律神経症状が認められること、検査で身体疾患が見つからないこと、明らかな精神障害が認められないこと、これらを満たすような状態のことを自律神経失調症としています。
症状は人によって様々です。頭痛、めまい、口の渇き、倦怠感など全身の多彩な症状が見られます。症状は良くなったり、悪くなったりを繰り返すことが特徴で、イライラや不安などの精神症状を伴うこともありますし、天候や気候によっても左右されることがあります。
自律神経は全身の臓器、血管などに分布し、呼吸や消化活動など生命維持に必要なあらゆる代謝活動に関与しているので、全身の多彩な症状が見られます。したがって、受診する際にどの科にかかれば良いのか、迷われることも多いと思います。
医療機関に総合内科がある場合は総合内科を受診し、総合内科がない場合、見られている症状に応じて受診する診療科を決定すると良いです。
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症状に合わせて受診しましょう
自律神経の異常で見られる症状を臓器ごとに分けて以下にご紹介します。参考にそれらの症状が見られた場合に受診を検討する診療科も併せてご紹介します。
- 心臓・血管:動悸、胸痛、立ちくらみなど →循環器内科
- 肺:息苦しさなど →呼吸器内科
- 胃腸:吐き気、下痢、便秘、腹痛など →消化器内科
- 頭:頭痛など →脳神経内科
- 目:疲れ目、目の乾燥など →眼科、内科
- 耳:耳鳴り、めまいなど →耳鼻科、脳神経内科
- 口:口の渇きなど →内科
- 手足:冷え、しびれ、痛みなど →内科、整形外科
- 筋肉・関節:肩こり、関節痛、筋肉痛など →整形外科、内科
- 膀胱:排尿困難、残尿感など →泌尿器科
- 生殖器:勃起障害、生理不順など →婦人科、内科
- 精神:不眠、イライラ、気分の落ち込みなど →精神科、内科
- 全身:全身倦怠感、食欲低下など →内科
また、自律神経失調症は身体疾患に関連して出現し治療をされることも多く、深く関連がある病気についてもご紹介します。
- 心臓血管系:起立性低血圧など
- 呼吸器系:過換気症候群など
- 消化器系:過敏性腸症候群、機能性ディスペプシアなど
- 神経系:片頭痛、パーキンソン病など
- 泌尿器系:過活動膀胱、勃起不全症など
- 精神科:不眠症、摂食障害、身体表現性障害など
ストレスに関する悩みがある場合は精神科や心療内科も検討しましょう
自律神経は非常に敏感な神経で、ストレスにさらされると容易に自律神経の機能異常が起こってしまいます。
精神的な不調が自律神経失調症の症状をさらに悪化させてしまうことも多いため、眠れない、気分が落ち込む、何事にも興味がなくなり、集中できなくなったなど精神的な不調が見られている場合は、精神科や心療内科を受診することで症状改善につながることも多いです。
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自律神経失調症が疑わしい場合は病院を受診すべきか?
「自律神経失調症になった場合、病院へ行った方が良いのか?」と迷われている方も多いのではないでしょうか。
迷われる原因としては、初期の症状の出はじめの時期は「ただの疲れだろう」と思うことが多いからです。仕事や学業で忙しく、睡眠不足で疲れているため、頭痛や倦怠感が見られている、のだろうと思ってしまうような形で症状は始まります。そして時間が経過するに伴って、今まで感じたことのない身体的・精神的な症状が出はじめ、「なんか変だな」と思うようになってくるのです。
自律神経失調症は、放置すると症状が悪化しまうこともありますので、病院へ行くタイミングとしては、できるだけ早めが良いと考えています。
受診した場合でも、簡単に診断できるものではなく、治療も劇的に症状が良くなる治療薬が存在するわけでもないため、非常に難しいことも事実です。
しかし、今までとは何か違った身体の感じがしてきたり、該当する自律神経失調症の症状が出てきたり、疑わしい場合は、すぐに病院へ行くことをおすすめします。自律神経失調症以外の要因も場合によっては検索する必要があります。
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もしかしたら起立性調節障害かも?
自律神経失調症、起立性調節障害はいずれも自律神経である交感神経と副交感神経の働きのバランスが崩れることで様々な症状が出現します。症状自体に大きな違いは見られにくく、共通した症状も多く、非常に似通った状態です。
起立性調節障害の特徴としては、特に急激な体位の変動時に循環動態が変化することで症状が見られやすいため、早朝起床時、長時間の座位から急に立ち上がる際に、めまいや立ちくらみなどの症状が見られやすいです。
中学生前後の思春期頃に好発し、ホルモンバランスの変化や体の急激な成長に伴う身体疾患でるため、中学生や高校生のお子さんが朝起き上がることができない、午前中は特に調子が悪い、というような場合は、起立性調節障害の可能性が高いです。
起立性調節障害の治し方の詳細は下記の記事でご紹介していますので、是非一度お読みになってください。
◆自律神経失調症が治ったきっかけ-子どもから大人まで5事例紹介
【参考】
日本小児心身医学会 起立性調節障害(OD)
自律神経失調症 | e-ヘルスネット(厚生労働省)
日本臨床内科医会(自律神経失調症)