子どもが貧血になるイメージはあまりないかもしれませんが、実は少なくありません。特に思春期の場合、身体が大きく成長する時期であり、色々な栄養素の需要が高まります。
特にこの時期は鉄欠乏に注意が必要です。鉄が不足すると、めまいや立ちくらみ、集中力の低下など貧血の症状が見られます。こちらの記事では、思春期の貧血の原因、対処法などについて解説していきます。
思春期の貧血の原因とは?男女別に解説
思春期における貧血の原因は、成長期特有の身体の変化や栄養バランスが大きく影響します。男女ともに共通した原因としては、鉄分の不足、過度な運動やストレスなどがあります。
その他、男女別に解説すると、以下のような特徴が見られます。
男子の場合
男子の場合、思春期に急激な成長を遂げるため、体内の血液量が増加します。
したがって、血液の成分を作るための鉄分が不足すると、貧血を引き起こしやすくなります。男子に多い原因は以下の通りです。
成長期における鉄不足
骨格や筋肉の発達により血液量が急激に増えるため、身体が必要とする鉄分も増加します。
食事からの鉄分摂取が追いつかない場合、貧血になりやすくなります。
運動による鉄消耗
男子はスポーツや激しい運動をすることが多く、その結果、汗や尿から鉄が排出されることがあります。これも貧血の原因となり得ます。
スポーツ貧血
激しい運動やランニングなどの繰り返しで、足底に強い衝撃が加わると、赤血球が破壊されやすくなります。
これを「溶血」と呼び、運動する際に血管内で赤血球が壊れてしまい、結果的に貧血になってしまいます。
女子の場合
女子は月経が始まることが大きな影響を与え、鉄不足による貧血がより一般的です。
特に思春期の女子は成長と月経が同時に進行するため、鉄不足が深刻になることがあります。
月経による鉄分喪失
月経が始まると、毎月の出血で鉄分を失います。これが大きな鉄分不足の原因となり、貧血を引き起こすリスクが高まります。
食生活の影響
痩せるためにダイエットをしたり偏った食生活が原因で、必要な鉄分を十分に摂取できないことも、思春期の女子に多い貧血の要因です。
成長に伴う鉄不足
男子同様、女子も成長期に血液量が増加するため、その分鉄分が多く必要になりますが、月経も加わることで鉄不足のリスクがさらに高まります。
思春期の貧血にはどんな特徴がある?症状を解説
思春期の貧血の特徴は下記の3つ要素に大きくまとめることができます。
- 身体の急成長に伴う鉄の需要増加
- 女子の場合は、さらに月経による鉄喪失のリスク上昇
- 男子は過剰な運動による赤血球の破壊などにも注意が必要
次に、症状について解説していきます。
疲労感や倦怠感
鉄不足により、身体に十分な酸素が供給できなくなり、疲れやすくなります。
思春期は学校生活や部活動、勉強などで体力を使う場面が多いですが、貧血が進行すると、日常的にだるさや疲労を感じやすくなります。
めまい・立ちくらみ
血液中の酸素量が不足すると、脳に十分な酸素が行き渡らなくなり、立ち上がった時や動いた時にめまいや立ちくらみを感じることがあります。
これらは日常生活に支障をきたすこともあります。
顔色が悪くなる
貧血になると、顔色や唇の色が青白くなることがあります。
皮膚や粘膜に血液が十分に行き渡らなくなるため、血色が悪くなり、顔や唇が白くなるのが特徴です。
息切れや動悸
少し運動しただけで息切れしたり、心臓が速く脈打つ感覚(動悸)を感じることがあります。
これも、酸素不足に対応しようと身体が過剰に反応しているためです。
爪がもろくなる
鉄欠乏が進行すると、爪が薄くなったり割れやすくなることがあります。
また、爪が平らになったり反り返る「スプーンネイル」と呼ばれる状態も見られることがあります。
集中力や学業成績の低下
酸素が脳に十分に届かないと、集中力が落ちたり、記憶力が低下することがあります。
思春期は学業に多くの時間を費やす時期でもあるため、貧血が原因で勉強に集中できないと感じることがあります。
思春期の貧血の対処法とは?
思春期の貧血に対処するためには、栄養管理や生活習慣の改善が重要です。
成長期に必要な鉄分や栄養素を十分に摂取し、無理のない運動や適切な休養を取り入れることで、貧血の予防と改善が期待できます。以下に、具体的な対処法を紹介します。
鉄分を意識したバランスの取れた食事
鉄分を多く含む食品を積極的に摂取することが貧血対策の基本です。
鉄分には「ヘム鉄」と「非ヘム鉄」の2種類があり、ヘム鉄の方が吸収されやすいです。ヘム鉄は動物性食品に多く含まれ、タンパク質と結合した状態で存在する鉄成分です。
非ヘム鉄に比べて、体内での吸収率が高いという特徴があります。非ヘム鉄は野菜や牛乳、卵など植物性食品に多く含まれており、ヘム鉄に比べると吸収率は低いですが、量を摂る、ビタミンCと組み合わせることで吸収率が高まります。
- ヘム鉄を含む食品(吸収されやすい)
- 赤身の肉(牛肉、豚肉、鶏肉)、レバー、魚(特に青魚)
- 非ヘム鉄を含む食品(吸収されにくいが量を多く摂取したり、ビタミンCの組み合わせて摂取するなど工夫次第で有効)
- 緑黄色野菜(ほうれん草、小松菜)、豆類、海藻類
- ビタミンCを含む食品(鉄の吸収を助ける)
- 柑橘類(オレンジ、レモン)、ブロッコリー、パプリカ、いちご
- タンパク質を含む食品(赤血球の生成に必要)
- 肉類、卵、大豆製品(豆腐、納豆)、乳製品(牛乳、ヨーグルト)
運動の見直し
激しい運動やトレーニングが貧血を悪化させることがあります。運動量を適切に調整し、過度なトレーニングや無理な運動を避けることが大切です。
疲労感や貧血の症状を感じた場合は、無理せず休息を取りましょう。
女子の場合、月経に伴う鉄分の喪失への対応
思春期の女性は、月経による鉄分の損失が原因で貧血になることが多いです。
普段以上に鉄分を意識した食事を摂取しましょう。月経量があまりにも多い場合は婦人科を受診し相談することも良いでしょう。
ダイエットや偏食の見直し
思春期には体型を気にして無理なダイエットや偏食をすることが多く、これが貧血の原因となることがあります。
無理なダイエットを避け、健康的な食生活を優先し、適切なカロリーと栄養素を摂取することが大切です。
もしかしたら起立性調節障害かも
思春期に「貧血」と思っていた症状が実は起立性調節障害だったというケースはよくあります。
両者の症状には似ている部分が多いため、特に思春期の子どもでは両者の診断が難しい場合もあります。しかし、原因や対処法が異なるため、正しい理解と診断が重要です。
貧血は、血液中の赤血球やヘモグロビンの量が正常よりも少なくなる状態を指します。
ヘモグロビンは体中に酸素を運ぶ役割を果たしているため、貧血になると体の各組織に十分な酸素が行き渡らなくなり、めまいや立ちくらみ、頭痛、倦怠感、息切れ、集中力低下など様々な症状が出現します。
一方、起立性調節障害は自律神経である交感神経と副交感神経のバランスが崩れることが主な原因で、めまいやふらつき、たちくらみ、頭痛、腹痛など様々な症状を来す病気です。
特に早朝起床時が1日のうちで最も症状が重く、午前中はめまいや立ちくらみなどの症状が見られ、午後になるにつれて症状も改善していくことが多いです。両者は症状が似ていますが、貧血の場合、午前と午後で症状に大きな変化がないことが異なります。
めまいやふらつき、たちくらみなどの症状で貧血ではないかと悩まれている方は、一度起立性調節障害のセルフチェックをされることをおすすめします。
下記記事ではセルフチェックについて解説していますので、是非ご一読ください。