子供が体調不良を起こした時、中学3年生までを対象年齢の上限とする小児科がほとんどであり、中学生は肉体的にも精神的にも大人と子供の狭間に立つ存在です。
実際に、中学生の子供はある程度自立しつつも、親御さんからすれば常に心配な存在であることに変わりありません。
そんな中学生の子供が腹痛を自覚した時には、ほとんどの場合大人と変わらない病気であることが多いですが、中にはその年齢独自の病気の可能性もあり注意が必要です。
また、腹痛という症状は非常に一般的な症状の1つですが、場合によっては医療機関での点滴治療や緊急手術が必要となる場合もあり、命に関わる病気の可能性もあるため、早期に適切な対応を取る必要があります。
そこで、本記事では中学生の腹痛について分かりやすく解説していきます。本記事を読むことで、中学生が腹痛を訴える原因や病態を理解し、適切な対処法を知っていただければ幸いです。
中学生の腹痛の原因
腹痛とはその名の通り腹部の痛みのことですが、腹部には多くの臓器が存在するため、その中のどの臓器に問題があるか鑑別も難しい部位です。
さらに中学生の場合、自身の症状をうまく言語化できない可能性もあり、原因の把握はより困難となります。
腹部にある臓器としては、食道・胃・十二指腸・小腸・大腸などの消化管や胆嚢・膵臓・肝臓・脾臓・腎臓などの内臓、尿管や膀胱などの泌尿器系器官、さらに女性では子宮や卵巣、男性では精巣などが位置しています。
これらの臓器のどこかに炎症や異常が生じると痛覚が刺激されて痛みを感じます。中でも腹痛の原因の中で最も頻度の高いものは消化管の異常でしょう。なぜ消化管に異常が生じると腹痛を感じるのでしょうか?
本来、消化管そのものには痛覚は含まれず、胃や腸を切断したり電気メスで焼いても痛みを感じることはありません。しかし、消化管を形成する平滑筋と呼ばれる筋肉が過伸展もしくは過収縮したり、虚血に陥り壊死すると痛みを感じます。
例えば、下痢になって腹痛を感じるのは消化管の平滑筋が過収縮しているからです。そのほかに、臓器の表面を覆っている腹膜と呼ばれる膜にも痛みを感じる神経が含まれており、腹膜への刺激は腹痛として自覚します。
急性虫垂炎では虫垂に生じた炎症が周囲の腹膜に波及することで痛みとして感知されます。消化管を含むほとんどの臓器で、これら2つの機序から腹痛を自覚することになります。
他にも、尿管に結石が閉塞する尿管結石では、尿管が結石を押し出そうと過収縮することで痛みが出現します。腎臓に細菌が感染して生じる腎盂腎炎では周囲の腹膜に炎症が波及することで痛みが生じています。
また、例外として、中学生の場合は自律神経が不安定であるため、腸の動きをうまくコントロールできないことがあります。
自律神経とは交感神経と副交感神経の総称であり、交感神経が活性化すると腸管の運動は弱まり、副交感神経が活性化すると腸管の運動は亢進します。
精神的ストレスなどが原因となり自律神経が乱れることで腸管の運動が乱れ、腹痛として自覚する可能性もあるため、中学生くらいの年代の子供の場合は腹痛対策としてメンタルケアも重要です。
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中学生で腹痛がする時に考えられる病気
中学生の腹痛の原因の中で緊急性が低いものとしては、過敏性腸症候群、便秘症、急性胃腸炎、生理痛などが挙げられます。一方で、緊急性の高いものとしては急性虫垂炎、卵巣(精巣)捻転、腸重積などが挙げられます。
過敏性腸症候群
過敏性腸症候群とは、中学生などの年代で罹患しやすい腸の蠕動運動に関する病気です。
前述したように、腸の運動は自律神経によってコントロールされていますが、過敏性腸症候群では精神的ストレスなどをきっかけに脳から腸への刺激が亢進し、腸の運動が過剰となり腹痛を自覚します。
過敏性腸症候群の方は腸管の知覚過敏状態であり、痛みを感じやすい状態であるため、腹痛を強く自覚してしまい、よりストレスとなって悪循環を招きます。
また腹痛以外に、腹痛と関連して便秘や下痢などの排便異常が数ヵ月以上続く状態となります。緊急性はありませんが、胃腸炎と異なり長期間症状が継続する厄介な病気です。
便秘症
便秘症は、中学生の腹痛の原因の中で最も多い疾患です。明確な診断基準があるわけではありませんが、普段から排便が1週間に2回以下の場合は便秘症の可能性があります。
便秘症の原因はさまざまで、お腹の手術後の癒着による器質性便秘、糖尿病や甲状腺機能低下に伴う全身性疾患による便秘、抗精神病薬や麻薬による薬剤性便秘、腸管の運動機能低下に伴う機能性便秘などが挙げられます。
中学生では特に機能性便秘の可能性が高いです。精神的ストレスや水分・食物繊維の少ない食事摂取などが原因となり腸管の動きが緩慢でなかなか排便を得られず腹痛に繋がります。
急性胃腸炎
急性胃腸炎とは、その名の通り胃や腸でなんらかの病原菌が繁殖し、炎症が生じることでさまざまな症状が出現する病気です。炎症が主に胃の場合は腹部の中でも上腹部に腹痛が生じ、嘔気嘔吐を伴うことが多いです。
一方で、炎症が主に小腸や大腸の場合は腹部の中でもヘソ周囲や下腹部で腹痛が生じ、下痢を伴うことが多いです。この時、下痢や嘔吐は病原菌を体から強制的に排出するための人間の生理的防衛反応です。
そのため、下痢や嘔吐を無理に止める必要はありませんが、嘔吐が激しい場合は脱水になる可能性があるため注意が必要です。特に成人と比較して中学生は脱水になりやすい点も要注意です。
生理痛
女児の場合は生理痛の可能性もあります。生理中、妊娠が成立しなければ子宮内膜が剥がれ落ちますが、この際の出血を止めるため、プロスタグランジンが分泌されて子宮が収縮します。
この際に起こる子宮の過剰収縮によって、持続的な腹部の鈍痛として生理痛が生じます。
急性虫垂炎
一方で、緊急性の高い疾患として急性虫垂炎は頻度が高い疾患です。腸炎と同じく、虫垂と呼ばれる部位に病原菌が繁殖し炎症を引き起こしますが、虫垂は他の腸管と比較して流れが悪くなかなか菌が排出されないため、重症化するリスクが高いです。
卵巣(精巣)捻転は、卵巣や精巣が捻れてしまい、これらを栄養する血管も捻じれることで血流が途絶えてしまう病気です。組織が壊死していくため、強烈な痛みを伴います。早急に手術が必要となる病気です。
腸重積
腸重積とは、隣り合う腸が肛門側の腸に入り込んでしまい、閉塞する病気です。閉塞するため腸管内の内圧が上昇して急激な腹痛を招きますが、その後進行すると血流も途絶えてしまい腸が壊死する可能性もあります。
中学生の腹痛の治し方
では、それぞれの腹痛の治し方もご紹介します。
過敏性腸症候群
過敏性腸症候群の場合、まずは食生活の見直しが必要となります。しっかり3食摂取し、暴飲暴食や夜間の大食を避け、高脂肪食なども控えましょう。またストレスを溜めず、睡眠、休養もしっかり摂る必要があります。
食事や行動面を気をつけても改善が得られない場合は薬物療法を行うこともあります。過敏性腸症候群に対する薬物療法の選択肢は多岐にわたるため、まずは専門の医療機関に受診するようにしましょう。
便秘症
便秘症の対策も基本的には同じです。食事や行動面に注意し、ストレスを溜め込まずに睡眠をしっかりとって、自律神経を安定させましょう。
特に便秘症の場合は、便が硬く排出されにくいことが多いため、水分摂取と食物繊維の摂取を心がけましょう。
便秘症にも薬物療法があり、浣腸などは市販のドラッグストアなどでも購入可能です。しかし、原因によっては浣腸は腹痛を悪化させる可能性があるため、使用する上では慎重に判断しましょう。
急性胃腸炎
急性胃腸炎では、原因となる病原菌がウイルスの場合、自前の免疫細胞で食い止めることができるため問題はありませんが、原因が細菌感染の場合は自前の免疫細胞だけでは勝つことができないため、抗生物質の服薬が必要になります。
前述したように、腹痛以外に頻回の嘔吐を伴う場合は水分や内服薬を摂取できなくなるため、脱水になる可能性があります。命に関わる危険性もあるため、早期に医療機関に受診しましょう。
生理痛
生理痛の場合、生理痛のコントロール目的でピルを内服する方もいます。月経開始以降であれば内服は問題ないため、中学生でも年齢によっては問題なく使用できます。婦人科で相談しましょう。
急性虫垂炎
急性虫垂炎の場合、虫垂内に蓄積した病原菌を殺すための薬物療法か、もしくは手術で直接虫垂を切除する手術療法があります。
薬物療法では再発リスクもありますが、中学生の場合は手術に踏み切れない方も多いため、医療機関で相談しましょう。
また、炎症が強く腹膜にも炎症が波及しているような場合は、早急に緊急手術が必要となります。
腸重積
腸重積や卵巣(精巣)捻転では、それぞれの組織への血流途絶が問題となり、壊死する前に緊急手術で血流を回復させる必要があります。
もし判断が遅れ手術が遅れると、完全に組織が壊死してしまうため、卵巣(精巣)や腸管を切除する必要があり、将来に影響を及ぼす事態になりかねません。
急激かつ激烈な腹痛を訴える場合は迷わず医療機関を受診しましょう。
すぐにできる対処法
中学生が腹痛を自覚した場合、すぐにできる対処法を紹介します。
まず、不用意な食事は避け、水分だけは欠かさず摂取しましょう。多くの場合、炎症が生じており、脱水になる可能性が高いからです。
不用意な食事摂取は腸管に負担がかかるだけでなく、緊急手術の際にお腹の食べ物が邪魔になる可能性があります。
急激な腹痛でない場合は便秘症や過敏性腸症候群の可能性が高いため、生活習慣を整え、健康的な食事を心がけましょう。
逆に急激な腹痛の場合はその場で手術が必要となる場合もあるため、早急に医療機関を受診して原因を判明させましょう。
もしかしたら起立性調節障害かも
中学生が腹痛をきたす疾患として、起立性調節障害(OD)の可能性もあります。ODとは、体の急激な成長に自律神経の発達が追いつかず、様々な症状をきたす身体疾患です。
ODでは自律神経のバランスが乱れるため、腸管に負担がかかり腹痛や嘔気を伴うことがあります。特に症状は起床後や午前中に強いといいう特徴があります。
また、ODにおける腹痛は「おへその周りの差し込むような痛み」と表現され、これを臍疝痛(さいせんつう)と言います。臍疝痛は比較的繰り返しやすく、心当たりのある方は専門の医療機関に受診しましょう。
ODには他にも様々な特徴や症状があり、医療機関に受診する前に自宅でも簡単にセルフチェックすることができます。
下記記事では起立性調節障害の子どもでも自宅できるセルフチェック法について解説されていますので、ぜひ参考にしてください。