- ここ最近急に夜眠れなくなった
- 寝ていても途中で目が覚めてしまう
このような不眠症状にお悩みの方も少なくないでしょう。一般成人の30〜40%が何らかの不眠症状を有していると言われており、特に女性は陥りやすいため注意が必要です。
不眠症はちょっとした心身のストレスや生活習慣の乱れが原因のこともあれば、何らかの病気が背景に隠れている可能性もあります。
病気が原因の場合は早期から医療機関での治療が必要ですが、ストレスや生活習慣が原因の場合はセルフケアでも改善が見込めるため、ぜひ実践すべきです。なかでも、自然由来の生薬である漢方薬は体を内側から整え、不眠症にも効果があるためおすすめです。
本記事では、医師である筆者の経験から、市販で購入できる不眠症におすすめの漢方薬を紹介します。この記事を読むことで、不眠症の症状別におすすめの漢方や、漢方でも改善しない場合の対策がわかります。ぜひご一読ください。
市販で購入できる不眠症におすすめの漢方薬3選
市販で購入できる不眠症におすすめの漢方を3つ紹介します。
ツムラ 加味逍遙散(かみしょうようさん)エキス顆粒
不眠症にお悩みの方には、加味逍遙散(かみしょうようさん)エキス顆粒がおすすめです。
効果
加味逍遙散は体内の血の巡りを改善し、体内にこもった熱を冷ますことでさまざまな臓器や神経の機能を改善させる効果が期待されます。
特に、交感神経の活性化に伴う精神興奮やイライラを沈静化する作用が期待され、自律神経も安定化させるため、不眠症にもよく用いられます。
副作用
発疹・発赤などの皮膚症状や、吐き気・嘔吐・胃部不快感などの消化器症状が挙げられます。
まれに、肝機能障害や腸間膜静脈硬化症などの重篤な合併症を伴うことがあるため、注意が必要です。
こんな方におすすめ
体力が中等度以下に低下し、のぼせ感・肩こり・易疲労感・精神不安や苛立ちなどの精神神経症状・便秘などを認める方にはおすすめです。
また、中高年の女性特有の更年期症状や、月経・妊娠・出産などの女性ホルモンの変動による精神症状に対しても有効です。
服用した方の口コミ
初の漢方です。めまい、偏頭痛、不眠症(3時間置きに起床、眠りの浅さ)、冷え、首から肩甲骨にかけての凝り、イライラ、急な不安焦燥感など様々な不調に1ヶ月近く悩まされていました。
自分なりに解消法を試しても一向に良くならず、、漢方が良いとネットで見て購入し1週間程で効果を感じました。心身共に正常に戻ってきたので嬉しいです。
原因が季節の変わり目やストレスもあるかと思いますが、自分には合っていました。同時に白湯生活を続けていて、血行が良くなったこともあるかな?と思います。少々値段は良いですが続けていきたいです。
引用:@cosme
ツムラ 酸棗仁湯(さんそうにんとう)
不眠症にお悩みの方には、酸棗仁湯(さんそうにんとう)がおすすめです。
効果
酸棗仁湯の主成分である酸棗仁はサネブトナツメの種子で、気を鎮めるような作用があり、心臓の働きの不調を緩和する効果が期待されます。
その効果から、不眠症の改善によく用いられますが、特に覚醒と睡眠のリズムが乱れて、夜間目が冴えて眠れない、夢見が多い、熟睡感がないといった症状があるような場合に適します。
また、翌日大切な用事があって寝付けない方にも有用な漢方です。
参考:北里大学
副作用
軽い副作用として、悪心・嘔吐・胃部不快感などの消化器症状が挙げられます。
また、酸棗仁湯に含まれる「甘草」という成分には、体内に存在する副腎皮質ホルモン「アルドステロン」と同じ作用をもたらすことが知られており、長期内服によって「偽性アルドステロン症」と呼ばれる合併症を引き起こすため注意が必要です。
偽性アルドステロン症を発症すると、尿細管におけるナトリウムの再吸収とカリウムの排泄が促進し、ナトリウム貯留や血圧上昇、低カリウム血症による手足の麻痺などが出現する可能性があります。
甘草は他の漢方にもよく含まれる成分であり、それらの漢方では偽性アルドステロン症のリスクがあります。
こんな方におすすめ
身体的に疲れているにもかかわらず中々寝付けない方や、精神不安が強い方におすすめです。
特に、細身で体力がなく寒がりな、いわゆる「虚弱体質」な方には効果的といわれており、よりおすすめです。
参考:DI Online
服用した方の口コミ
この薬を飲む前は、軽い睡眠障害でした。 精神科で、色んな睡眠導入剤などを試しては、合わないの繰り返しでした。 しかし、「漢方薬は良いよ」とのことで、漢方薬の睡眠薬を処方して貰いました。
人に寄りけりとのことで、効かない人もいるようですが、私には抜群に効果的でした。 副作用もほとんどなく、飲んだ後に、すぐ頭がクラクラグルグルすることもありませんでした。 また、悪夢を見たとかいうことも、記憶にありません。
寝る前に、大体、漢方薬をお湯で溶かしてから飲む、というスタイルでした。 枯れ葉のような味がしました。 おいしいわけではありませんが、一定の期間飲んで、やっと正常な眠りへとつくことができるようになりました。 依存するのではなく、普通に眠れるようになれて嬉しかったです。
引用:クスリミル
クラシエ 柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)
不眠症にお悩みの方には、柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)がおすすめです。
効果
その名の通り、柴胡・竜骨・牡蛎などを主成分としており、それぞれ下記のような効果を持ちます。
- 柴胡:解熱・鎮痛・鎮静効果
- 竜骨:炭酸カルシウムであり、動悸や不眠に用いられる
- 牡蛎:牡蠣の殻であり、ストレスや疲れの解消
これらの成分によって、精神的興奮を鎮め不眠を解消する効果が期待できます。
副作用
発疹・発赤などの皮膚症状や、吐き気・嘔吐・胃部不快感などの消化器症状が挙げられます。
まれに、肝機能障害や間質性肺炎などの重篤な合併症を伴うことがあるため、注意が必要です。
こんな方におすすめ
体力はある程度保たれているが、精神的なイライラや興奮で眠れない方におすすめです。
悪夢を見ることが多い方にも有効性を認めており、おすすめです。
参考:J-STAGE
服用した方の口コミ
以前ストレスによる自律神経の不調でひどい不眠に悩まされていた時に、藁にもすがる思いで購入しました。
飲み始めてからすっと眠れて気付いたら朝という状態にまで改善し、大変お世話になりました。最近また不眠気味なので、飲もうかと思っているところです。
引用:@cosme
関連記事:不眠症に効果的な薬を解説|おすすめの市販薬や副作用も紹介
不眠症の症状別におすすめの漢方薬を紹介
不眠症の症状別におすすめの漢方薬を紹介します。
症状:神経過敏
神経過敏で不眠の方には、クラシエの桂枝加竜骨牡蠣湯(けいしかりゅうこつぼれいとう)がおすすめです。
桂枝加竜骨牡蠣湯に含まれる竜骨や牡蠣には神経の高ぶりを抑える効果が期待でき、桂枝には身体のバランスを整える効果が期待できます。
普段から緊張しやすく、些細なことが気になる方にはおすすめです。
症状:身体の疲れ
身体の疲れで不眠の方には、ツムラの加味逍遙散(かみしょうようさん)がおすすめです。
加味逍遙散は神経のみならず、内臓の機能も調整する作用があるため、体力が低下している方に向いている漢方と言えます。
特に、ほてりやめまいなど更年期症状を持つ女性にはよいでしょう。
症状:不安感
不安感が強くて眠れない方には、クラシエの加味帰脾湯(かみきひとう)がおすすめです。
加味帰脾湯には、気分を落ち着かせ、精神を安定化させる作用が期待できます。
不安感が強く寝付けない、もしくは寝ても睡眠が浅くて悪夢を見てしまうという方にはおすすめです。
関連記事:【医師解説】不眠症におすすめのアロマを5選-睡眠効果の有無や寝る時の使い方を紹介
関連記事:不眠症を自力で治す6つの方法|自力で治せる状態や治せない状態も紹介
不眠症は漢方薬で治る?治らない?
医師としてのこれまでの経験からいえば、不眠症は漢方薬で治る可能性があるため、ぜひ治療の選択肢の1つに取り入れるべきです。
漢方薬は不安や抑うつなどの精神不安を除去し、神経や内臓の機能を安定化することで不眠の原因を取り除き、間接的に不眠を改善します。
一方で、西洋医学で用いられるベンゾジアゼピン系睡眠薬は化学的に睡眠を誘発するため、依存性の形成や離脱症状などのリスクがあります。
より自然な形で入眠作用を得たい方には、生活習慣の改善やストレス発散に加え、漢方薬を取り入れることもおすすめです。
関連記事:不眠症の治し方をツボ・食べ物・行動の観点から解説-突然治るのかも紹介
参考:J-STAGE
漢方薬を服用しても不眠症が改善しない場合の対応方法
漢方薬を服用しても不眠症が改善しない場合の対応方法は主に2つです。
- 改めて自分の生活習慣や睡眠習慣をチェックする
- 医療機関を受診する
漢方薬を服用しても不眠症状が改善しない場合、不眠症の原因となるような生活習慣の乱れや不適切な睡眠習慣が背景に隠れている可能性があります。
具体的には、就寝直前の過剰な飲酒や入浴・激しい運動、光刺激や音刺激の強い就寝環境、カフェインの過剰摂取などが挙げられます。
改めて自分の生活習慣や睡眠習慣をチェックし、睡眠の質を低下させるような要因があれば改善しましょう。
それでも不眠症が改善しない場合は、うつ病・睡眠時無呼吸症候群・脳卒中などの危険な病気を発症している可能性もあるため、早期に医療機関を受診すべきです。
関連記事:不眠症は何科を受診すべき?内科でもいいのか解説|病院に行くタイミングも紹介
不眠症と思っていたら起立性調節障害の場合もある
不眠症と思っていたら起立性調節障害の場合もあるため、注意が必要です。
起立性調節障害とは、小学生高学年から中学生にかけて発症しやすい身体疾患であり、急激な肉体の成長に自律神経の発達が追いつかないことでさまざまな症状をきたします。
特に、午前中や起立時に生じるめまい・立ちくらみ、夜間の不眠症状などが代表的な症状であり、進行すれば通学や学業に支障をきたす可能性もあるため、早期発見が重要です。
小児に多い疾患であり、下記の記事では子供における起立性調節障害のセルフチェックについて詳しく解説しています。ぜひ参考にしてください。
>>起立性調節障害のセルフチェックリスト(子ども)|すぐにできる診断テスト
また、大人でも発症する可能性があり、仕事や通勤に影響が出れば小児期の発症よりも生活に与えるダメージは深刻です。
下記の記事では大人における起立性調節障害のセルフチェックについて詳しく解説しています。こちらもぜひ参考にしてください。
関連記事:不眠症のセルフチェックシート|うつ病など不眠症以外で考えられる病気も紹介