「夜になると目が冴えて眠れない」「不眠症を自力で治すことって可能なの?」このような疑問や不安を抱えている方も多いでしょう。
日常的に夜間眠れなくなると、朝の通勤や通学・日中の仕事や学業に支障をきたしてしまいます。寝不足が続いて朝起きる時間が遅くなれば、さらに夜眠れなくなって負のスパイラルに陥ってしまうでしょう。また、誤った知識で対策すると、より不眠症が悪化する可能性もあります。
しかし、正しい知識を持って対策すれば、セルフケアによって不眠症を自力で治すことや改善することができます。不眠症の原因にもよりますが、摂取する食べ物を意識することや不眠症に効くツボを押すなどの行動で、改善が期待できるでしょう。
本記事では不眠症の治し方について、医師である筆者の経験からおすすめの行動・食べ物・ツボなどを紹介します。
不眠症の治し方【行動】
ちょっとした行動面の変化でも不眠症は治る可能性があります。
そこで、不眠症を治すための行動を4つ紹介します。
起床後に朝日を浴びる
不眠症を治すためにも、起床したらまずは朝日を浴びましょう。
実生活は1日24時間周期ですが、体内時計は24時間よりも周期が若干長いと言われており、そのズレによって睡眠時間が後ろにずれ込みやすいです。起床後に朝日を浴びることで乱れた体内時計をリセットすることができ、睡眠のリズムを正常化できる効果が期待できます。
朝日を浴びる以外にも、同じ時間に通学や通勤をする・朝食を食べる、などのルーティンワークによって体内時計と実生活のズレを修正できるため、不眠症の方は意識しましょう。
また、朝日を浴びることはセロトニンの分泌も促すため、不眠症の方にはおすすめです。体内ではトリプトファンを原料に、日光刺激でセロトニンが生成され、夜間にはセロトニンが原料となって睡眠ホルモンであるメラトニンが分泌されます。
つまり、朝や日中に太陽光を浴びることでメラトニン分泌量が増加し、自然な入眠を得ることができます。
運動習慣を身につける
運動習慣を身につけることも、不眠症対策の1つです。
定期的な運動は自律神経のバランスを整え、夜間には身体を鎮静モードにしてくれる副交感神経が活性化しやすくなるため、入眠しやすくなるでしょう。また、運動に伴う程よい疲労感も入眠には重要です。
少なくとも30分以上の有酸素運動を週に3回以上は継続することがおすすめで、ジョギングやプール・ウォーキングなどがおすすめです。あまりに激しい運動や過度な負荷の筋力トレーニングは、筋肉痛などによって睡眠の質を下げる可能性もあるため、程よい負荷の運動を意識しましょう。
また、就寝直前の運動は交感神経を刺激してしまい、かえって睡眠の質を低下させる可能性があるため、少なくとも就寝2時間前までには運動を終わらせましょう。
夕食前に入浴を済ませる
入浴は、可能な限り夕食前に済ませましょう。
睡眠の質と深部体温には密接な関わりがあることが知られており、就寝直後から深部体温がしっかり低下することでより良い睡眠が得られます。
夕食前に入浴すれば、就寝時にはある程度深部体温が高いところから、就寝後に一気に深部体温が低下するため、睡眠の質は向上するでしょう。しかし、就寝直前の入浴は深部体温を上昇させ、就寝直後も深部体温の低下が得られないため、睡眠の質は低下してしまいます。
少なくとも就寝2時間前には入浴を済ませ、10〜15分ほど40℃のぬるま湯に浸かることがおすすめです。
就寝前のスマホいじりは控える
就寝前のスマホいじりは控えましょう。
就寝前にスマホやPCの画面から発されるブルーライトを浴びると、うまくメラトニンの分泌が進まないためです。セロトニンは脳の松果体と呼ばれる部位に取り込まれ、光刺激がなくなるとメラトニンに変換されます。光刺激が加わると、メラトニンがうまく分泌されず自然な眠気を感じにくくなります。
そのため、少なくとも就寝の2時間前からはスマホやPCを触るのは控え、不要な光刺激は避けましょう。
関連記事:不眠症を自力で治す6つの方法|自力で治せる状態や治せない状態も紹介
不眠症の治し方【食べ物】
普段摂取する食べ物や飲み物を意識する事で不眠症が治る可能性もあります。
そこで、不眠症を治すための食べ物・飲み物を3つ紹介します。
乳製品
不眠症を治す効果が期待できる食べ物の1つが、乳製品です。
乳製品に豊富に含まれるトリプトファンはセロトニンの原料であり、睡眠ホルモンであるメラトニンの分泌を促す効果が期待できます。
牛乳やチーズ・ヨーグルト、または豆乳にも豊富に含まれているため、意識して摂取するとよいでしょう。
特に、ホットミルクには気持ちをリラックスさせる安眠効果も期待できるため、夜のドリンクにおすすめです。
発酵食品
不眠症を治す効果が期待できる食べ物の1つが、発酵食品です。
発酵食品に豊富に含まれる「GABA」は、特に脳や脊髄で精神を安定させる抑制性の神経伝達物質として知られています。交感神経の働きを抑制して、心理的ストレスの一時的な緩和や精神のリラックス効果が期待できるため、睡眠にもよい影響を与える可能性があります。
キムチなどの発酵食品の他にも、きのこ類・トマト・雑穀類などに豊富に含まれており、意識して摂取するとよいでしょう。
なお、キムチなどがあまりに辛い場合はかえって身体のストレスとなり、睡眠の質が低下する可能性もあるため、注意が必要です。
ハーブ類
ハーブ類を積極的に活用することで、不眠症が改善する可能性があります。
ハーブには鎮静作用や鎮痛作用などを持つものが多く、多種多様なフレーバーで精神的緊張を緩和してくれる効果も期待できます。
特にカモミールは眠りのハーブとして代表的であり、ティーで飲んだり、料理に活用してもよいでしょう。
多くの種類がある点もハーブの魅力であり、自分の好みのフレーバーを見つけておくのもおすすめです。
関連記事:不眠症に効果的な薬を解説|おすすめの市販薬や副作用も紹介
関連記事:不眠症におすすめの市販漢方薬-ツムラ・クラシエの口コミ紹介
不眠症の治し方【ツボ】
眠れない夜は安眠効果のあるツボを自分で押してみるのもおすすめです。
ここでは、不眠症を治すためのツボを4つ紹介します。
失眠
不眠症を治すツボとして、「失眠」がおすすめです。
失眠とはその名の通り、失った睡眠を取り戻すツボという意味で、浅い睡眠を熟睡に変えてくれる効果が期待されます。
足の裏、踵の膨らんだ中央部に位置し、自分の指や棒で刺激する事で効果が得られます。少し温めてから刺激するとより効果が期待でき、おすすめです。
労宮
不眠症を治すツボとして、「労宮」がおすすめです。
労宮は身体的・精神的疲労を回復してくれるツボの代表格で、主に血行促進効果が期待されます。
手の平中央、手を握った時に中指が当たる場所に位置し、反対の手で刺激する事で効果が期待できます。
特に、ストレスを自覚して不眠症状が出ている方にはおすすめです。
だん中
不眠症を治すツボとして、「だん中」がおすすめです。
だん中は緊張や不安を緩和する効果が期待できるツボで、自律神経を整える効果も期待できます。
左右の乳頭を結んだ線の真ん中に位置し、痛みを感じない程度に軽く指で押しましょう。
精神的緊張が強く、情緒不安定な方には特におすすめのツボです。
完骨
不眠症を治すツボとして、「完骨」がおすすめです。
完骨は頭部の血流を促進し、乱れた自律神経を安定させる効果や精神不安の解消が期待できます。
耳の後ろにある骨の出っ張った部位を指し、両手の親指で下から上に押し上げるように刺激します。
不眠以外に頭痛の緩和も期待できるため、頭痛持ちの方には特におすすめのツボです。
関連記事:不眠症は何科を受診すべき?内科でもいいのか解説|病院に行くタイミングも紹介
関連記事:不眠症の症状とは?チェック方法やうつ病との関連性を解説
不眠症は突然治ることはある?
結論から言えば、不眠症が突然治ることは稀です。
もちろん不眠症の原因にもよりますが、生活習慣の乱れが原因の場合は基本的に意識しないと改善できず、うつ病などの病気によるものであればしっかり治療しないと改善は見込めません。
一方で、受験や試合などの重要なイベント前日の不眠症のように、明らかに不眠の原因が明確な場合はイベントさえ終われば突然解消される可能性もあります。
この場合、生活習慣の乱れや病気と比べて原因を自覚しやすため、不眠症の方はまずは原因に心当たりがないか確認するとよいでしょう。
関連記事:【医師解説】不眠症におすすめのアロマを5選-睡眠効果の有無や寝る時の使い方を紹介
不眠症が治ったきっかけの事例
不眠症をどうにか治したいと考えている方であれば、他の不眠症の人の体験や経験を知ることも非常に大切です。
不眠症に悩んでいた人の治ったきっかけを知ることで、自分自身の治療のきっかけにもなるかもしれません。
下記記事では、不眠症が治ったきっかけの事例について詳しく記載されているため、ぜひ参考にしてください。
関連記事:不眠症が治ったきっかけ・治った体験談|大人から子どもまで6事例紹介
不眠症の原因
不眠症の原因は多岐にわたり、原因によって治療法やセルフケアの方法も異なるため、早期に原因を突き止めることが肝要です。
セルフケアで改善可能な生活習慣の乱れが原因なのか、医療機関で治療しないといけないような病気に伴う不眠症状なのかの判別も重要です。
特に、睡眠時無呼吸症候群やうつ病・脳血管障害が背景にある場合は、命に関わるような事態を招く可能性もあります。
下記記事では、不眠症の原因について詳しく記載されているため、ぜひ参考にしてください。
関連記事:不眠症の原因を5つ解説-男女別の原因やストレスとの関連性を紹介
不眠症だと思っていたら起立性調節障害の場合もある
不眠症の原因として、起立性調節障害と呼ばれる病気の可能性もあります。
起立性調節障害は、急激な身体の成長に対して自律神経の成長が追いつかず、自律神経のバランスが乱れてしまうことでさまざまな症状を引き起こす病気です。
代表的な症状として、起床時や午前中に強いふらつき・めまいが挙げられますが、逆に午後や夕方になると活発さが増し、不眠症に陥る方もいます。
特に子どもに多い病気で、進行すれば進級や進学に影響する可能性もあるため、不安な方は早期にセルフチェックしましょう。
下記記事では、子どもで起立性調節障害の疑いがある場合のセルフチェックについて詳しく解説しています。
関連記事:起立性調節障害のセルフチェックリスト(子ども)|すぐにできる診断テスト
また、大人でも起立性調節障害を発症するリスクがあり、進行すれば仕事に支障まで出てしまうため、やはり早期発見が重要です。
下記記事では、大人で起立性調節障害の疑いがある場合のセルフチェックについても詳しく解説しています。ぜひ参考にしてください。
関連記事:大人の起立性調節障害セルフチェック項目|診断テスト
関連記事:不眠症のセルフチェック|うつ病など不眠症以外で考えられる病気も紹介
【参考文献】
不眠症 | e-ヘルスネット(厚生労働省)
体内時計 | e-ヘルスネット(厚生労働省)
快眠と生活習慣 | e-ヘルスネット(厚生労働省)