嘔気(はきけ:「吐きそう」な不快感のこと)の原因は多岐に渡るためなかなか正確に診断をつけることは難しい症状の1つです。多くの疾患が考えられるため、正確に原因を評価する必要性があります。
なかでも、「夜になると気持ち悪くなる」と言っている場合は注意が必要です。起立性調節障害(OD)の可能性が高いからです。
また、他にも成長期に伴うホルモンバランスの乱れや、女性であれば月経などの影響もあり、翌朝には改善する原因不明の夜間の嘔気を訴える可能性があります。
そこで本記事では、夜になると気持ち悪くなる症状について分かりやすく解説します。
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夜になると気持ち悪くなるの原因
嘔気の原因は多くの疾患の可能性が挙げられます。しかし、夜間に出現し翌朝に改善しているのであれば、それはストレスや自律神経の乱れによる嘔気である可能性が高いと思われます。
人間が嘔気を自覚する場合、主に症状の原因は腸管にあります。腸管の動きが普段と異なったり、形態に問題が出ることで嘔気症状などが出現する可能性があるのです。
例えば、胃に炎症が起きれば胃の動きが悪くなるため、摂取した食事がうまく十二指腸に流れていかず心窩部の疼痛とともに嘔気が出現します。しかし、この場合、夜間以外にも常に症状が出現するはずです。
胃ガンの場合、胃の中でガンが徐々に大きくなることで食べ物が十二指腸に流れにくくなり、これによって嘔気を自覚する人もいます。しかし、この場合も夜間以外にも症状が出るはずです。
このように、胃がんや胃炎、腸炎の場合は嘔気症状が出現しやすい疾患ではありますが、特別夜間に症状が出現しやすいという訳ではありません。
では、「夜間になると気持ち悪くなる」という症状の主な原因はどんな疾患が考えられるのでしょうか?
本来、夜間や入眠前は朝や日中と比較して副交感神経が活性化して、体をリラックスモードに切り替えていきます。しかし、自律神経が乱れていると副交感神経ではなく交感神経が活性化してしまいます。
さらに、ストレスによっても同様の反応が生じます。ストレスは脳の視床下部という部位で感知され、その後交感神経の活性化を促進させます。
ストレスや自律神経の乱れに伴う夜間の交感神経の活性化により、腸管の動きは緩慢になってしまい、胃酸分泌量も増加するため心窩部不快感とともに夜間の嘔気が出現する可能性があるのです。
つまり、夜間の嘔気=ストレスや自律神経の乱れに伴う交感神経の活性化による腸管運動の機能異常、が最も考えらる原因となります。では、具体的にどんな病気があるのか見ていきましょう。
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夜になると気持ち悪くなるときに考えられる病気とは
「夜間になると気持ち悪くなる」可能性のある疾患として、機能性ディスペプシア、PMS、自律神経失調症などが挙げられます。
機能性ディスペプシアとは、胃には明らかな器質的原因が見つからないにも関わらず、食後の嘔気やもたれ感、胸焼けなどの自覚症状が継続してしまう疾患のことです。
胃は弛緩することで食事を一時的に溜め込んで、その後収縮して十二指腸に内容を送り出すという機能がありますが、ストレスや自律神経の乱れが発生すると上手に機能しなくなり、症状が出現します。
次に、PMSについてです。PMSはPremenstrual Syndromeの略で、日本語で月経前症候群と呼ばれる疾患です。その名の通り月経開始3-10日前の時期に様々な症状を引き起こします。
月経前になるとエストロゲンやプロゲステロンの濃度に変化が生じて、そのホルモンバランスの乱れによって身体的にも精神的にも不調をきたしてしまいます。
情緒不安定、抑うつ、不安、眠気、集中力の低下、睡眠障害などの精神症状や、のぼせ感、食欲不振などの自律神経症状、腹痛、頭痛、腰痛、嘔気などの身体的症状など様々な症状が出現します。
はっきりとした原因はわかっていませんが、女性ホルモンと自律神経は視床下部を介してお互いに影響し合うため、PMSによる女性ホルモンの乱れは自律神経にも影響を与えて夜間嘔気が出現すると考えられます。
次に、自律神経失調症についてです。ストレスなどが原因で自律神経のバランスが乱れることで、副交感神経と交感神経のバランスが崩れ様々な症状が出現する病気です。
食後に不必要に交感神経が活性化すれば、腸管の運動が緩慢になり嘔気が出現します。また、夜間に交感神経が不必要に活性化することで不眠になり、そのストレスがさらに腸管の動きを緩慢にする可能性もあります。
これらの疾患は、比較的成人に多く見られる疾患ですが、中には小学生高学年や中学生でも自律神経のバランスが乱れてしまう疾患があり、夜間に嘔気を自覚する可能性があります。それこそが起立性調節障害(OD)です。
もしかしたら起立性調節障害かも
起立性調節障害は自律神経のバランスが乱れることで様々な症状が出現する疾患です。起床時には交感神経がうまく活性化せず起床できません。逆に夜間には遅れて副交感神経が活性化してくるため、不眠や嘔気が出現します。
本来、副交感神経優位であるべき夜間に交感神経が活性化してしまうため、腸管の運動が緩慢になりうまく夕食を十二指腸に押し出すことができずに嘔気が出現しやすくなってしまいます。
子供が夜間の嘔気を訴えた場合、上記疾患以外に起立性調節障害も疑う必要があります。
夜になると気持ち悪くなるときの治療法
上記で挙げた疾患の診断次第で治療方法が異なりますが、基本的にはストレスを避けて、規則正しい生活を行うことで自律神経の乱れを改善していく必要性があります。
しかし、起立性調節障害の場合は身体の急激な成長に自律神経の発達が追いついていないことが原因であり、あくまで身体的な疾患です。
起立性調節障害の症状を改善するには、規則正しい生活以外にも多くのアプローチ法や、場合によっては内服薬による治療が必要になることもあります。
最近では、特定の乳酸菌で腸内環境を整える事で、対処する方法もあります。
下記記事では、起立性調節障害のセルフチェック方法が詳しく解説されています。気になる方はぜひ参考にしてください。セルフチェックで起立性調節障害が強く疑われる場合は、早期の医療機関受診をお勧めします。
下記記事では「起立性調節障害の治療法」をまとめていますので、ぜひ参考にしてみてください。
【参考】
小児心身医学会ガイドライン