起立性調節障害は小学生高学年から高校生の身体的にも精神的にも大きく成長する思春期に多い病気です。
代表的な症状としては、早朝起床時にみられる体調不良のためなかなか起き上がることができないことや朝礼でバタッと倒れてしまうことです。
この朝礼でバタッと倒れることは「起立性低血圧」の症状と言えます。この記事では起立性調節障害の一つである起立性低血圧について解説していきます。
起立性低血圧とは
起立性低血圧とは、横なった状態や座っている状態から立ち上がる時に血圧が低下しめまいやふらつきなどが見られることです。起立性調節障害の一つで起立性調節障害の子どもによく見られるものです。
一般的に座っている時、血液は重力に従い下肢に溜りやすくなっています。
この状態から立ち上がるには、交感神経の働きによる下肢血管の収縮や下肢の筋肉によるポンプ作用により、重力に逆らって血液を心臓へ戻し、脳への血流が低下しないように私たちの体は自動調整をしています。
このため、倒れることはありません。
しかし、何らかの原因で交感神経の作用が不足すること、立ち上がる際や立っている間に脳への血流が低下し、めまい、立ちくらみなどの症状が出現し、重症になると失神してしまいます。
起立性低血圧と起立性調節障害との違い
起立性調節障害の子どもの多くが起立性低血圧の症状で悩まされます。
どちらも体位を変える際の体の働きに不具合が生じることで色々な症状が見られます。両者の違いとしては、起立性調節障害が起立性低血圧を含み、より大きな概念であるということです。
起立性低血圧は体位変換時に血圧が下がることで脳への血流が低下し、めまいや立ちくらみなどの症状が見られるのに対し、起立性調節障害は起立性低血圧以外にも多くの症状が見られます。
起立性調節障害は大きく4つのタイプに分けられ、起立後の血圧低下、脈拍数の変化、変化までの時間などで起立直後性低血圧、体位性頻脈症候群、神経調節性失神、遷延性起立性低血圧に分けられます。
これらの名前を見てもわかるように起立性低血圧は起立性調節障害に含まれた概念と考えることができるでしょう。
関連記事:起立性調節障害とは?治し方や原因、症状、セルフチェックについて解説
起立性低血圧の原因
医学的に起立性低血圧の原因は本態性/症候性や急性/慢性などに分けて考えることができます。
原因となる病気がある場合は症候性、ない場合は本態性となりますし、症状が急激に見られている場合は急性、長年にわたって見られている場合慢性となります。
どれに分類されるかが問題ではありませんが、原因となる病気がある場合はその病気を治療することで起立性低血圧の症状も改善するため、背景に病気が隠れていないかは注意しておく必要があります。
一般的に言われている原因としては、体を循環する血液量の減少、貧血、脱水症、薬物、糖尿病、自律神経機能の異常、加齢、副腎機能不全などがあります。
循環血液量の減少、貧血、脱水症、糖尿病、副腎機能不全などはもとの病気を治療することで起立性低血圧が改善する可能性があります。
関連記事:起立性低血圧の原因とは?ストレスが起因しているのか解説
起立性低血圧の症状
今までにご紹介してきましたが、起立性低血圧とは横なった状態や座っている状態から立ち上がる時に交感神経など体の “脳への血流維持” 機能に不具合が生じ、いわゆる脳貧血を起こした状態です。
脳への血流が低下することで、立ち上がる際に下記のような症状が見られます。
- めまい
- ふらつき
- 冷や汗
- 目の前が見えにくい
- 目の前が真っ暗になる
- 意識が遠のく
などの症状が見られます。
学校の朝礼や電車の中で起立中に冷や汗がでて気分不良のためしゃがみこんだり、ひどい場合には意識がなくなる場合もあります。
関連記事:起立性低血圧の症状とは?子ども・大人別に出やすい症状を解説
起立性低血圧のセルフチェック
以下のような症状がある場合は起立性低血圧の可能性あります。一度セルフチェックしてみてください。
<立ち上がる際の下記の症状>
- めまい
- ふらつき
- 冷や汗
- 目の前が見えにくい
- 目の前が真っ暗になる
- 症状は午前中に目立つ
- 症状は食後や運動後にひどくなる傾向がある
関連記事:起立性低血圧のセルフチェック法-大人・子ども別に出やすい症状を解説
起立性低血圧の治し方
まずは、セルフチェックで起立性低血圧の気になる症状がある場合、医療機関を受診し、本態性つまり原因となる病気がないか検査を受けましょう。
原因となる病気がある場合、それぞれの病気に対する治療を行いましょう。
症候性の場合、基本的には食事や運動など日常生活での注意点からなる非薬物療法と血圧を上げる薬剤を使用する薬物療法があります。特に非薬物療法が重要になるため、下記にご紹介いたします。
- 急な体位変換を避ける(寝ている状態から急に起き上がり座る、または立つ)
- ゆっくりと起き上がるようにする
- 長時間同じ姿勢をとることは避ける
- 規則正しい生活リズムを心がける
- 過度のアルコールは控える
- 適度な運動をする・特に下肢の筋力をつける
- 水泳やウォーキングなど全身運動、マッサージによる血液循環の改善を行う
- 激しい運動は身体に負担がかかるので急に行わず、運動前には必ずウォーミングアップを行う
- 弾性ストッキングを着用する
- 長時間入浴は避け、ぬるめのお風呂に入る
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