起立性調節障害(OD)は中学生の約10%が罹患すると言われています。とても高い発症率である疾患ですが意外にも一般の方々からの認知度はそこまで高くありません。
場合によっては、親御さんが子供の起立性調節障害発症に気付くことができず、体調不良に至った子供に叱責してしまうような家庭も少なくありません。
実際に子供が朝起きれなかったり、学校に行けないような症状を最初から病気と考えるのは自分でも難しいのかもしれません。
しかし、起立性調節障害はあくまでも病気です。子供にとっては悪気もないのに症状のせいで親御さんから怒られていては非常に辛い経験になり兼ねません。
そこで本記事では、起立性調節障害の「6つの種類」ついて詳しく解説していきます。
起立性調節障害の6つの種類
人間は横になっている状態から急に立ち上がると、血液は重力の影響を受けてより下肢の方向に流れやすくなり脳の血流が低下する可能性があります。
しかし、人間の体の機能である自律神経が働くことで自動で上手に脳血流をコントロールしてくれます。自律神経とは交感神経や副交感神経のことで、起立時に血圧が下がると交感神経が活性化します。
その結果、心臓の収縮や鼓動は強くなり、下肢の血管を収縮させることで下肢への血流を抑えて脳血流が低下しないように自動調整してくれます。
起立とともに一過性に血圧は低下しますが、交換神経が心拍数を増加させて血管を収縮させることで脳血流を保ち、その後すぐに血圧や脈拍は安定していきます。
しかし、起立性調節障害の子供は自律神経のバランスが崩れているため、そういった生体反応が正常に働きません。結果として起立時に脈拍や血圧が異常な反応を示し脳虚血が生じて様々な症状が出現するのです。
起立性調節障害は血圧や心拍の変化様式で4つのサブタイプに分類されます。それぞれ起立後の血圧や脈拍によって規定されていて、起立直後性低血圧、体位性頻脈症候群、血管迷走神経性失神、遷延性起立性低血圧の4種です。
これらの診断によっては治療薬の選択や対応が変わる可能性もあるため、起立性調節障害を疑う子供に対してはどのサブタイプに属するかをしっかりと判断しなくてはなりません。
また、この4種に分類できないものもあり、脳血流低下型(起立性脳循環不全型)、過剰反応型(hyper response型)の2種があります。この2つは起立性調節障害全体の約15%を占めています。
この中で最も多いサブタイプは起立直後性低血圧で、ついで体位性頻脈症候群が多いです。血管迷走神経性失神や遷延性起立性低血圧は診断される頻度としては稀です。
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それぞれの種類の特徴
では、具体的に起立性調節障害のサブタイプについてそれぞれの特徴を解説していきます。
起立性低血圧
起立性低血圧は起立直後に血圧が著しく低下してしまう病型で血圧がなかなか回復しません。脳血流の低下により、立ちくらみやめまいなどの様々な症状が出現します。
起立後の血圧低下回復までの時間が25秒以上か、もしくは血圧低下回復まで20秒以上でかつ平均血圧の低下率が60%以上のものと定義されています。
平均血圧とは(収縮期血圧-拡張期血圧)÷3+拡張期血圧であり、臓器血流を考える上で重要な指標になります。一般的には平均血圧が60mmhg以上ないと臓器血流が低下している状態と評価されます。
軽症であれば徐々に血圧が改善し症状も緩和されていきますが、起立後3~7分で収縮期血圧が起立前と比較して15%以上低下するような重症型の場合には、回復が遅れ持続的な脳の虚血に陥り失神する可能性もあり得ます。
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体位性頻脈症候群
体位性頻脈症候群では起立に伴う血圧低下は認められませんが心拍数の著しい上昇を認めます。その結果ふらつきや倦怠感、頭痛などの症状が出現します。また、このタイプは最も頻度が多いです。
多くの場合、本人は意外にも動悸を自覚していないのが特徴です。起立後3分以降の心拍数が毎分115回以上、または起立中の心拍増加が毎分35回以上、と心拍数で定義された疾患です。
また、心拍数が毎分125回以上、または起立中の心拍増加が毎分45回以上の場合は重症型に分類されます。
関連記事:体位性頻脈症候群とは?治し方や原因、症状、セルフチェックについて解説
血管迷走神経性失神
血管迷走神経性失神では起立中に突然の血圧低下を認め脳の血流不足が生じる結果、意識が薄れたり突然意識がなくなったりします。校長先生の話が長い時に女子高生が急に倒れたりするシーンを想像すればわかりやすいかもしれません。
また、血管迷走神経性失神は起立直後性低血圧や体位性頻脈症候群を併発するケースがあり、併発した場合、重症型となることが多いです。
関連記事:血管迷走神経性失神とは?治し方や原因、症状、セルフチェックについて解説
遷延性起立性低血圧
遷延性起立性低血圧は起立直後は問題ありませんが、継続して立ち姿勢のままでいると血圧が低下し始めるのが特徴です。
具体的には起立後3~10分経過してから収縮期血圧が起立前と比較して15%以上低下する、もしくは20mmHg以上低下するものと定義されています。起立直後性低血圧との鑑別は血圧低下が起こるタイミングが起立直後かどうかによります。
脳血流低下型(起立性脳循環不全型)
脳血流低下型は起立後の血圧や脈拍にはなんら問題ないのに脳血流だけが低下する状態を指します。
診断には近赤外分光計と呼ばれる、脳の血流を評価することができる装置が必要です。
過剰反応型(hyper response型)
過剰反応型は起立直後の血圧が一時的に異常な高値を示し、めまいなどの症状を引き起こすものです。
以上に示したように起立性調節障害といっても複数のサブタイプが存在しており、体の示す反応も人によって様々です。重要なのは専門の病院でしっかりと診断をつけて適切な治療を行うということです。
下記の記事では、起立性調節障害における医学的治療法やご家庭での治し方などについて詳しく解説されていますのでぜひご参照ください。
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【参考】
田中大介 監修『起立性調節障害(OD)朝起きられない子どもの病気がわかる本』 講談社
日本小児心身医学会 起立性調節障害(OD)