起立性調節障害と診断されて通院しているが、なかなか薬を飲んでも症状が良くならないことは、残念ながら実は少なくありません。
処方された薬をしっかりと飲んでいるにも関わらず体調不良が続き、症状がおさまらない場合、お子さんもご家族も非常に不安になると思います。
本記事では、起立性調節障害で薬は効果があるのか、効果がない場合はどの様に対応すればよいかなどについて解説していきます。少しでも参考になりましたら幸いです。

起立性調節障害に薬は効かない?治らない?
起立性調節障害は、起立した際の血圧や心拍数などを調節する自律神経の働きがうまく機能せず、さまざまな症状が現れる病気です。
現在のところ、自律神経の働きを直接正常な状態へ戻し、ODそのものを治す特効薬はありません。ただし、薬がまったく効かないという意味ではなく、血圧低下や心拍数の増加などを調節することで、症状の軽減が期待できる場合があります。
起立性調節障害に使われる主な薬
起立性調節障害の薬物療法では、ミドドリン塩酸塩、アメジニウムメチル硫酸塩、プロプラノロール塩酸塩などが使われることがあります。
ミドドリン塩酸塩やアメジニウムメチル硫酸塩は、血管を収縮させるなどして血圧を保つ目的で使用されます。プロプラノロール塩酸塩などのβ遮断薬は、心拍数の増加が目立つ体位性頻脈症候群(POTS)などで検討される場合があります。
起立性調節障害に使われる薬は、病型や症状によって異なります。ミドドリンの作用や服用時の注意点については、下記の記事も参考にしてください。
また、非薬物療法を行っても症状が続く中等症以上のケースなどで、薬物療法が検討されます。薬だけで治そうとせず、生活習慣の見直しや水分・塩分の摂取、運動などと組み合わせることが大切です。
漢方薬が使われる場合
西洋薬で十分な改善がみられない場合や、症状・体質などによっては、漢方薬が使用されることがあります。漢方薬によって症状が軽くなったと感じる方もいますが、効果には個人差があり、ODに対する医学的根拠が十分ではないものもあります。
漢方薬にも副作用やほかの薬との飲み合わせがあります。「西洋薬が効かなければ一度試してみる」と自己判断せず、医師や薬剤師へ相談した上で使用しましょう。
起立性調節障害に使用される漢方薬については、下記の記事で詳しく解説しています。中高生が服用する際の注意点も含めて参考にしてください。
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起立性調節障害が薬で治らない場合に考えられる原因
起立性調節障害の薬を服用しても症状が改善しない場合は、薬がまったく効かないと決めつけず、診断や病型、薬の種類、服用状況などを見直す必要があります。
起立性調節障害以外の病気が隠れている
ODと似た症状は、鉄欠乏性貧血、不整脈などの心疾患、甲状腺疾患などでも現れます。また、意識を失ったり身体がけいれんしたりする場合は、てんかん発作などとの区別が必要になることもあります。
起立性調節障害は思春期前後の子供に多くみられますが、この時期は身体の成長や月経などによって、鉄欠乏性貧血が起こることもあります。
貧血では、めまい、立ちくらみ、身体のだるさなど、ODと似た症状が現れます。不整脈や甲状腺の病気でも、動悸やめまい、倦怠感などがみられる場合があります。
通常はODを診断する際に問診や検査によってほかの病気を確認しますが、治療を続けても症状が改善しない場合は、診断を見直したり、追加の検査を行ったりすることがあります。
思春期は鉄欠乏性貧血も起こりやすく、めまいや倦怠感などODと似た症状が現れることがあります。中学生にみられる貧血の症状や原因については、下記の記事も参考にしてください。
薬の種類や服用状況が合っていない
起立性調節障害には複数の病型があり、病型によって適した薬が異なります。薬の種類や量、服用する時間が本人の状態に合っていないため、十分な効果が得られていない可能性もあります。
また、心理社会的なストレスや睡眠の問題、活動量の低下などが症状に影響している場合は、薬物療法だけでは十分に改善しないことがあります。この場合は、学校や家庭の環境調整、心理的な支援などを組み合わせることが大切です。
薬を飲み忘れていたり、副作用や錠剤の大きさなどを理由に服用できていなかったりする場合もあります。飲めていないことを責めるのではなく、本人が困っていることや服用しにくい理由を確認しましょう。
薬が合わない、服用を続けにくいと感じる場合は、自己判断で中止せず、主治医へ相談してください。
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起立性調節障害は非薬物療法で治療することが一般的
起立性調節障害の治療は、大きく薬物療法と非薬物療法の2つに分けられます。なかでも、日常生活を整えながら症状の軽減を目指す非薬物療法は、治療の基本となります。
非薬物療法には、水分・塩分摂取、起き上がり方の工夫、無理のない運動、生活リズムの見直しなどがあります。症状や重症度によっては薬物療法も行いますが、その場合も非薬物療法と組み合わせて治療を進めることが一般的です。
ただし、体調や持病によって適した方法は異なります。無理に生活リズムを変えたり運動したりせず、医師と相談しながら継続できる方法を取り入れることが大切です。
ここからは、起立性調節障害で行われる主な非薬物療法について解説します。

薬以外の非薬物療法で起立性調節障害を治す方法
起立性調節障害の非薬物療法には、生活リズムの見直し、水分・塩分の摂取、運動療法、起立時の身体操作などがあります。ここでは、それぞれの方法について解説します。
光療法
私たちの睡眠は光と密接に関係しています。睡眠のみならず、体内時計を適切に保つために光は非常に重要な働きをしています。まず、睡眠のメカニズムについてご説明します。
メラトニンという物質が私たちの睡眠に深く関与しています。メラトニンは脳内から分泌される眠りを司るホルモンです。1日中メラトニンは分泌されていますが、朝方は分泌が弱まり、夜は分泌が高まることで睡眠へと導きます。メラトニンの分泌が睡眠と覚醒のリズムを作り出し、私たちの体内時計も適切にコントロールしています。
想像がつきやすいかもしれませんが、睡眠と覚醒のリズムを作り出すメラトニンの分泌は光とも密接に関係しています。光を浴びることでメラトニンの分泌は抑えられます。
つまり、日中は日光をたくさん浴びることでメラトニン分泌が抑えられ、日が沈んだのち、夜間はメラトニン分泌が増え睡眠へと誘導します。日中にしっかり日光に浴びることが夜間の睡眠につながっていくのです。早朝起床後日の光を浴びることで体内時計がリセットされ、睡眠のリズムも整いやすくなります。
光療法は、朝に一定の明るさの光を浴びることで体内時計を整え、睡眠と覚醒のリズムを改善する治療法です。起立性調節障害に睡眠リズムの乱れがみられる場合、治療の選択肢となることがあります。
食事療法
健康を維持・増進すること、病気を改善させることの両方に重要なのが食事療法です。起立性調節障害でも同様に食事療法はとても重要です。
バランスの良い食事摂取を心がけて頂き、特に摂取してほしい栄養素については下記のものがあります。
- タンパク質:私たちの身体の臓器やホルモンなど様々な物質を構成しており、疲労回復、傷の修復などの効果があります。
- 鉄分:赤血球の構成成分で、貧血の予防に重要です。
- 亜鉛:エネルギー代謝や免疫反応など体内の様々な代謝活動をサポートしています。
- ビタミンB1:身体の糖代謝に重要で、エネルギーを作り出すことにも重要な物質です。
これらの栄養素を多く摂れば、必ずしもODが改善するわけではありませんが、食事から必要な栄養を摂ることは体調管理の基本です。
起立性調節障害で意識したい食べ物や栄養素については、下記の記事も参考にしてください。
運動療法
適切な運動習慣を身につけることは自律神経のバランス乱れを改善させる効果があります。
特に起立性調節障害の場合、下肢の筋力を中心に鍛えると効果的です。起床時や起立時、血圧が下がらないために重要な働きをするのは、交感神経だけではありまでん。下肢の筋肉も収縮することにより、下肢の血管を収縮させ、血圧を維持しています。
運動習慣をつけ、下肢の筋力低下を防ぐことが症状改善に重要です。無理に過剰な筋トレなどをする必要はなく、少し早歩きで散歩をする程度で十分に効果があります。体調と相談しながら、継続することを心掛けましょう。
具体的な運動方法や注意点については、下記の記事も参考にしてください。
起床時、起立時は頭を下げ、急に立ち上がらない
起立性調節障害の場合、早朝起床時の時間帯や体位を変換するポイントで症状が出現します。一般的に、起床時や起立時は交感神経の働きにより、末梢の血管を収縮し血圧が下がらないように調整がなされていますが、起立性調節障害の方はこの調整が働きにくいため、急に立ち上がるとめまいや、頭痛が出現します。
ですので、起床時は枕や腕枕で少し頭を上げ、次に上半身を起こします。座った状態を少し保ち、下肢をベッドから下ろします。立ち上がった後も、頭を下げ、うつむいた状態でゆっくりと歩きだしてください。
立ち上がる際も、同じように頭を下げ、うつむいた状態でゆっくりと動きだしましょう。全体的に動作はゆっくりと、体に“これから起き上がるよ/立ち上がるよ”と語りかけるように行うことがポイントです。
規則正しい生活リズムを体に刻む
交感神経と副交感神経のスイッチの問題から、朝がなかなか起き上がれず、午前中は体調が悪いですが、午後になると段々と体調がよくなり、逆に夜間はなかなか眠れないというのが起立性調節障害の方に多い特徴です。
しかし、このサイクルを繰り返すと、さらに悪循環につながりかねません。起床時は、時間をかけたり、場合によっては薬剤の力を借りたりしながら起き上がり、起床後は太陽光を浴び、部屋にも光を入れ、体内時計を調整しましょう。
調子がいいからと、夜遅くまで起きず、決まった時間に体を休め、翌朝に備えましょう。ブルーライトを発するスマートフォン操作は睡眠を遠ざけるため、眠る前には操作を控えることも重要です。自分のペースで少しずつ継続することで、体内リズムが整い、症状の改善につながります。
水分摂取と少し多めの塩分摂取
起立性調節障害のでよく見られる立ちくらみやめまいは脳への血流不足が原因で行っています。したがって、血流を維持させることが重要です。
水分と塩分は血流の維持に重要で、こまめな水分摂取(水分1.5-2.0L/日)と少し多めに塩分(塩分10-12g/日)を摂取することが推奨されています。
心臓の病気、腎臓の病気があると、水分、塩分ともに制限する必要がありますし、特に塩分に関しては、健常人では6-7g/日と言われているため、心臓病や腎臓病、高血圧などがある場合は、医師の指導のもと水分、塩分摂取を行いましょう。
心理カウンセリング
学校や家庭でのストレス、不安、抑うつなどがある場合は、心理社会的な負担がODの症状に影響することがあります。
このような場合は、身体症状への治療と並行して、カウンセリングなどの心理的な支援を取り入れることがあります。ただし、心理的な問題だけがODの原因であるという意味ではありません。
まずは主治医へ相談し、必要に応じて小児心身症を扱う医療機関や児童精神科、心理職などにつないでもらいましょう。
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起立性調節障害は薬以外の非薬物療法で根気強く治療することが重要
起立性調節障害の治療方法は薬物療法と非薬物療法があります。薬物療法は血圧や脈を調整する西洋の薬剤や漢方薬などがありますが、なかなかすんなりと症状が良くならないことも経験します。
非薬物療法は食事や運動、日常生活での工夫で地道ではありますが、少しずつ症状が改善することが期待で、起立性調節障害の治療においては特にこの非薬物療法が重要とされています。
簡単なことではありませんが、非薬物療法で根気強く治療することが一番の近道になるかもしれません。
起立性調節障害の治し方や親御さんができることについては、下記の記事も参考にしてください。











