起立性調節障害とは

起立性調節障害はいつまで続くの?治療期間を現役医師が解説

2022年3月23日

この記事の監修者

医師 星野綾美

医師 星野 綾美

五百山クリニック院長
内科
保有資格:医学博士(総合医療学)

一般社団法人 起立性調節障害改善協会

「どうして自分だけが朝起きられない?どうしてみんなと同じように運動ができない?」

そんな風に起立性調節障害(OD)で悩んでいる方はたくさんいると思います。起立性調節障害の子供の中でも多い悩みの1つが「一体いつまでこの症状が続くのか?」という疑問です。

自然経過で改善する例も少なくないですが、中には症状が改善せず長引く人もいます。子供本人はもちろんのこと、特に子供の親御さんにとってももどかしい時間が続いてしまいます。

そこで本記事では、起立性調節障害の症状がいつまで続くのか(治療期間)、それに対する親御さんの対応方法を解説していきます。起立性調節障害に対する理解が深まり子供自身や親御さんが適切な対応ができるようになれば幸いです。

起立性調節障害(OD)改善ガイドブック

起立性調節障害はいつまで続く?

起立性調節障害は軽症例も含めれば小学生の約5%、中学生の約10%が罹患すると言われており比較的有病率の高い病気です。また、日本小児心身医学会によれば、日常生活に大きな支障をきたすような重症例は約1%ほどです。

つまり、起立性調節障害に罹患する人は少なくありませんが、その上で症状の重さには個人差があって重症化する人はそこまで多くないということがわかります。

発症の原因は成長に伴うホルモンのバランス悪化による自律神経系の調節不全などが挙げられ、主に小学生高学年から中学生、高校生での新規発症が多いです。

しかし、成長とともに徐々にホルモンバランスは安定化しますので、それによって自律神経の調節不全も解消されていく可能性が高いです。よって、医学的介入がなくても症状が自然に治る可能性が高いです。

具体的には、発症の1年後に約50%が、2-3年後には約80%の子供が症状改善傾向に至りますが、中には重症化して成人期まで症状が改善しない人もいます。もちろん発症時期にもよりますが、ホルモンの安定化してくる高校の卒業ころまでにはほとんどの子供で症状が改善している可能性が高いです。

次に薬物療法などの医学的な介入を行った場合についてです。起立性調節障害ではすでに安全性と有効性が確認されているミドドリン塩酸塩、メチル硫酸アメジニウム、プロプラノロール塩酸塩などの薬が存在します。

特にミドドリン塩酸塩は血管を収縮させることで低下した脳血流を改善させるため、一定の効果が期待されます。

これらの内服を開始してから約1-2週間で立ちくらみなどの症状の改善は期待できますが、実際に以前通りの日常生活に戻るレベルの活動性を得るには約1-2ヶ月程度の期間を要するとされています。

内服開始後も症状がなかなか改善せず痺れを切らして治療を中断してしまう親御さんや子供は少なくありません。起立性調節障害の内服治療には時間がかかることや個人差があることをよく理解しておく必要があります。

起立性調節障害(OD)改善ガイドブック

起立性調節障害の子供への親の対応方法

さて、なかなか症状が改善しない起立性調節障害の場合、親御さんはどのように対応していくべきでしょうか?

親御さんには子供の精神的ケアと身体的ケアの両方を行う必要性があります。身体的ケアとはその名の通り体の血圧や心拍にとってより良い環境を作り出すことです。

起立性調節障害の子供の場合、体動で症状が悪化してしまうためついつい運動不足になり筋力が低下してしまいます。特に下肢の筋力低下は起立時の脳血流低下を誘発するため治療の妨げになり兼ねません。

そこで自宅での軽い運動を促すことも親御さんにできることと言えます。他にもなんらかの栄養素が不足することで起立性調節障害の症状は悪化します。よって、親御さんが子供に提供する食事も治療の一環になります。

次に精神的ケアについてですが、親御さんにとって重要なことは子供の精神的ストレスをいかに緩和してあげられるかです。ストレスは不用意に交感神経を刺激してしまい自律神経系に影響を与えてしまうため、極力避けるべきなのです。

例えば、学校に通えないことによる学業の遅れは、それだけでも子供にとってかなりのストレスになります。可能な限り親御さんが自宅で学業を教えてあげることも1つの手段です。

医療機関や学校と連携を取り、いかにして子供にとってストレスフリーな環境を整えてあげられるかが親御さんにとって重要な仕事になります。

精神的ケアにおいてもう1つ重要なことがあります。それは、心配のあまり過干渉になってしまうことを避けることです。愛する子供をケアしようと何でもかんでも親御さん主体でことを進めてしまうと、案外子供にとってはストレスがかかってしまうこともあります。

多くの子供は親御さんが思っている以上に自分の症状と向き合い、どうすればよくなるのか自問自答して過ごしていることを忘れてはいけません。

特に症状の回復に時間がかかる場合は、起立性調節障害に対する治療や向き合い方に前向きな気持ちを保つのが難しくなっていきます。思春期の子供であれば親子関係がギクシャクしてくることもあると思います。

そんな時こそ、最大の味方である親御さんが子供に対して優しく情熱を持って接してあげることで子供の精神に安定を与えます。

下記記事では、起立性調節障害の子どもに親ができること・治し方を解説していますので、ぜひ参考にされてください。

【参考】
田中大介 監修『起立性調節障害(OD)朝起きられない子どもの病気がわかる本』 講談社
日本小児心身医学会 起立性調節障害(OD)

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