疲れているのに眠れない、日中特に昼食後は特に眠たい、など睡眠に対する不調が見られている方は多いのではないでしょうか。
眠れない原因は多岐にわたりますが、日常の生活習慣にヒントがある場合もありますし、実は背後に病気が隠れている可能性もあります。こちらの記事では、眠れない時に考えられる病気を中心に解説していきます。
眠れない時に考えられる病気
眠れないこと(不眠)は大きく3つの状態に分類されます。布団に入ってからなかなか寝付けない入眠困難、睡眠の途中で目が覚めてしまう中途覚醒、早朝に目覚めて二度寝することができない早朝覚醒のいずれかの症状がある方は15~25%程度いると言われています。
年齢層によって、見られる症状は異なりますが、中高年層では中途覚醒や早朝覚醒など睡眠を維持することが困難であることが多い傾向にあります。
現代では、子供にも睡眠障害見られることが多くなっており、3〜4 人に一人が睡眠障害もしくは睡眠習慣に関する問題を抱えていると言われています。小児の慢性的な睡眠障害は情緒の形成や学習能力などへも影響するため非常に重要な問題です。
米国睡眠医学会による睡眠障害国際分類では、睡眠障害を以下の7つに分類しています。
- 不眠症
- 睡眠関連呼吸障害(睡眠時無呼吸症候群など)
- 中枢性過眠症(ナルコレプシー、特発性過眠症など)
- 概日リズム睡眠-覚醒障害(睡眠相後退型など)
- 睡眠時随伴症(夢中遊行、レム睡眠行動障害など)
- 睡眠関連運動障害(むずむず脚症候群など)
- その他の睡眠障害
これらの病気に関して、それぞれ解説していきます。
うつ病
はっきりとした原因はわかっていませんが、精神的・身体的ストレスなどを背景に、脳の働きに何らかの不調が起きることで発症するとされています。
症状
気分の落ち込み、何事にも興味が持てない、不安、食欲低下、疲れやすい、頭が重い・頭痛、首や肩のこりなど
セルフチェック方法
日常生活で大きな環境変化(引っ越し、失恋、親しい人との別れなど)があった後に上記の症状が見られている場合は注意が必要です。
診療科目
心療内科、精神科
生活上の注意点
無理しすぎず、特に体調・メンタルの不調が見られている場合は休息が重要です。
重要な物事の決定は行わず、しっかり休むこと、早めに受診しましょう。
睡眠時無呼吸症候群
睡眠中に一時的に無呼吸になり、日中の眠気や集中力低下、身体のだるさなどが出現し、将来的には高血圧、心不全などの心血管系への影響もある病気です。睡眠中は無呼吸のため、良質な睡眠が得られず睡眠障害を伴います。
また最悪の場合、急激な眠気により運転中に居眠り運転を引き起こし、死亡するケースもあるため注意が必要です。
症状
日中の眠気・集中力低下、身体のだるさ、頭痛、熟眠感が無い、夜間のいびき・睡眠中の無呼吸を家族などから指摘されるなど
セルフチェック方法
自分では寝ている際のいびきや無呼吸は感じることができないため、家族に状況を確認するといいでしょう。
日中の会議中や運転中など眠ってはいけない状況で激しい眠気を感じ居眠りをしてしまう場合、夜間息苦しくて目が覚めたり、起床時に熟眠感が無いか確認しましょう。
診療科目
呼吸器内科、耳鼻科
生活上の注意点
日中に激しい眠気に襲われる病気です。特に運転には注意が必要です。
また、将来的には血管や心臓などへも影響を及ぼすため、早期の受診が望ましいです。
ナルコレプシー
過眠症の一つで、特に10歳代~20歳代前半に多く、通常寝てはならない場面で我慢できないほどの眠気に襲われ突然眠ってしまうことが特徴です。
治療が遅れることで社会生活に支障を来す恐れがあり、早期治療の開始が望ましいです。
症状
繰り返す居眠り、情動脱力発作(覚醒時、気持ちの高ぶりやびっくりした際に身体の一部が脱力すること)、金縛り、抑うつ気分、不安障害など
セルフチェック方法
重要な場面で抵抗できないほどの強い眠気に襲われ居眠りをしてしまうことが繰り返し起こっている場合注意が必要です。
金縛りや寝付くときに幻覚が見える、笑ったり驚いた時にふっと力が抜けてしまうなどの症状もないか確認しましょう。
診療科目
神経内科
生活上の注意点
発症には遺伝が関与していると言われていますが、ストレスや睡眠不足などが発症のきっかけになると考えられており、ストレスの発散や十分な睡眠、日中の短時間の昼寝などを取り入れるといいでしょう。
また、早期治療により社会生活への支障が最小限になるため、早期の受診が望ましいです。
関連記事:眠れない時は病院を受診するべき?症状別に受診したほうがよい場合を解説
概日リズム睡眠障害
体内時計によって睡眠や覚醒のリズムを整えていますが、この体内時計が乱れることで睡眠時間が夕方に早まってしまったり、就寝時間が来ても眠気が来なかったりします。
概日リズム障害には様々なタイプがあり、朝方に寝つき昼過ぎに覚醒する睡眠後退型、夕方に強い眠気が生じて午前3時頃に覚醒する睡眠相前進型などがあります。
症状
頭痛、倦怠感、食欲不振、眠気、集中力低下、抑うつ気分など
セルフチェック方法
就寝、起床時間が大きくずれている場合や日中の強い眠気、集中力低下が見られないか確認してみてください。
診療科目
精神科、心療内科
生活上の注意点
なるべく一般的な就寝、起床時間になるように少しずつ睡眠習慣をずらしていったり、起床後は日に当たるなどは体内時計のリセットに役立ちます。
レム睡眠行動障害
睡眠は、脳が働いているレム睡眠と脳が休息しているノンレム睡眠が一定の割合で繰り返されることで脳や身体を休ませています。
通常は、レム睡眠中に身体が動くことはありませんが、レム睡眠行動障害の場合はレム睡眠中に無意識のうちに様々な行動が現れます。パーキンソン病やレビー小体型認知症などの神経疾患に関連して現れることがあります。
症状
夢に反応する形で睡眠中に大声を上げる、怒鳴る、手足を動かすなど
セルフチェック方法
同じベッドの人に危害が及ぶこともあり、睡眠中の行動を指摘された場合や睡眠中にケガをしていた場合などはこの病気の可能性があります。
診療科目
神経内科
生活上の注意点
睡眠中の行動により自分自身や一緒に寝ている人にケガをさせてしまうことがあるので、枕元から物を移動させてることが重要です。
また、正常な睡眠習慣をなるべく保つように心がけることも重要です。
むずむず脚症候群
足の異常な感覚(虫が這うような感覚、むずむずするなど)により、足を動かさずにはいられなくなる病気で、特に夜間に見られることが多いです。
原因がはっきりわからないことも多いですが、鉄欠乏性貧血、糖尿病、血液透析などに関連して症状が出現することもあります。
症状
足の異常な感覚(虫が這うような感覚、むずむずするなど)、足を動かすと症状がおさまることが多いなど
セルフチェック方法
足の異常な感覚(虫が這うような感覚、むずむずするなど)、足を動かすと症状がおさまることが多いなどの症状がないか確認してみてください。
診療科目
神経内科
生活上の注意点
規則正しい生活習慣を心がけ、適度な運動も有効です。カフェイン摂取や喫煙は症状が悪化する可能性があり控える方がいいと思います。
ここまで、眠れない時に考えられる病気について解説しましたが、上記以外にも、心臓病や腎臓病、脳出血や脳梗塞などの身体の病気に不眠が伴うこともあります。
関連記事:【医師解説】眠れない時におすすめの飲み物7選|控えるべき飲み物も紹介
眠れない時の対処法
眠れない時にまず介入できることとしては、生活習慣の見直しがとても重要です。生活習慣が乱れていると睡眠へも影響します。
具体的には、バランスのとれた食事をできているか、就寝時間や睡眠時間、寝室の環境は適切か、適度な運動をしているか、ストレス発散・気分転換ができているかなどです。
下記記事では、それ以外にも、眠れない時に効果的な対処法をご紹介しています。是非ご一読ください。
もしかしたら起立性調節障害の可能性がある
起立性調節障害という病気をご存じでしょうか。
この病気は思春期によく見られる病気の一つであり、睡眠に支障を来します。起立性調節障害は自律神経である交感神経と副交感神経の調整のバランスが崩れることで様々な症状がみられる病気です。
典型的には、朝起き上がれない、午前中は頭痛やめまい、ふらつき、全身倦怠感などの様々な症状が見られ調子が悪く、午後にかけて次第に症状が改善します。午前中は集中力や注意力が散漫で、ベッド上やソファーで横になっていることも多く、午後には症状は改善していき、逆に就寝時間になっても眠気が見られず、夜更かしをしてしまう状態になります。
起立性調節障害は睡眠の質やリズム障害を来します。子どもに多い病気ではありますが、大人でも見られることがあり注意が必要です。
眠れない以外にも、体調不良が続いている場合、早めに医療機関を受診することをおすすめします。以下の記事では、起立性調節障害のセルフチェックについてご紹介しております。是非一度ご覧ください。
◆起立性調節障害のセルフチェックリスト(子ども)|すぐにできる診断テスト
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