なかなか寝付けなくなることや、睡眠の途中で起きてしまうこと、朝起きれないことに悩んでいる方も多いのではないでしょうか?
これらの症状は不眠症の可能性が高く、連日のように不眠症状が続けば仕事や通学にも支障をきたすでしょう。
また、不眠症になった場合、何科の病院を受診すればいいのか判断に迷われる方も少なくありません。結論から言えば、不眠症にはさまざまな原因があり、その原因によっても適切な診療科は異なります。
生活習慣の乱れが原因であれば一般の内科でも事足りますが、中にはうつ病や甲状腺機能異常症、睡眠時無呼吸症候群など専門の診療科で専門的な治療が必要となる病気の可能性もあるため、注意が必要です。
本記事では、不眠症の症状別に、受診すべき病院の診療科について解説します。また、病院を受診すべきタイミングや生活における注意点についても解説します。本記事を参考に、心地よい快眠を手に入れましょう。
【症状別】不眠症は何科を受診するべき?
不眠症を疑う場合、まずは一般内科を受診しましょう。一般内科・総合内科ではさまざまな病気を広く扱うため、悩みの原因である不眠症状が病的なものなのか、生活習慣の改善などセルフケアで改善可能なのか判断してくれるでしょう。
また、一言に不眠症と言っても、寝付きにくい入眠困難・寝ていても起きてしまう中途覚醒・早朝に起きてその後二度寝できない早朝覚醒などさまざまな症状があります。原因によって出現する症状も異なるため、まずは内科への受診が良いでしょう。
しかし、不眠症の原因の中には不眠以外の症状を伴う病気もあり、専門性の高い治療が必要となるケースもあります。具体的にはうつ病・睡眠時無呼吸症候群・甲状腺機能異常症・むずむず脚症候群などが挙げられます。
これらの疾患は極力早期からの治療介入が好ましいため、できればはじめから適切な診療科を受診するべきです。ここでは症状別に疑わしい病気と、その際に受診すべき診療科についてご紹介します。
抑うつ気分や意欲の減退などの精神症状の場合
抑うつ気分や意欲の減退などの精神症状を認める場合、うつ病の可能性があるため、精神科を受診しましょう。ストレス社会の日本ではうつ病罹患者数は増加傾向にあり、特に10代半ばから30代で発症しやすいと言われています。
うつ病では不眠症状以外に、抑うつ気分・興味や食欲の減退・易疲労感・思考力や集中力の低下・希死念慮・自殺企図などの精神症状が出現します。また不眠とは逆に睡眠過多になる方もいます。
うつ病による不眠症はもちろんのこと、ほかの原因による不眠症がうつ病の発症リスクを増加させることも知られており、不眠症とうつ病には深い関係性があります。
うつ病の発症には気質や遺伝的要素もありますが、病態としては脳内における神経伝達物質(セロトニンやノルアドレナリン)の機能低下と考えられており、医学的な介入が必要な病気です。上記症状を自覚する方は早期に精神科を受診しましょう。
生活上の注意点
うつ病の場合、ストレスの原因を少しでも除去することが重要です。会社や交友関係など、自分が強くストレスを感じるものから距離を置き、精神的・身体的にしっかりと休息するように意識しましょう。
また、相談できる家族や友人とのコミュニケーションも大切です。
しかし、これらのセルフケアには限界があり、最も重要なことは早期から適切な薬で治療を行うことです。症状が進行すると治療も長期化するため、早期から治療を始めましょう。
病院を受診するべきタイミング
うつ病による不眠症の場合、「自分ってうつ病かも?」と少しでも疑った時が病院を受診すべきタイミングです。前述したように、早期の医療介入が好ましく、進行すれば命に関わる可能性もあります。
また、セルフケアでは症状の改善が見込めない場合も多いです。さらに、うつ病以外の精神疾患(適応障害や不安障害・パーソナリティー障害など)の可能性もあるため、適切な診断のためにもまずは精神科を受診しましょう。
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浮腫や便秘の場合
不眠症状とともに浮腫や便秘などの症状を認める場合、甲状腺機能低下症の可能性があるため、代謝内分泌科を受診しましょう。
甲状腺とは全身の代謝に関わる臓器であり、甲状腺から分泌される甲状腺ホルモンによって体の代謝機能が維持されています。しかし、なんらかの原因で甲状腺ホルモンの分泌が低下する(これを甲状腺機能低下症という)と、不眠症状が出現します。
不眠症状以外に、浮腫・便秘・無気力・疲労感・寒がり・体重増加・動作緩慢・記憶力低下など、多彩な症状が出現します。また女性ホルモンとの関連も強く、生理不順や不正出血の原因となることもあります。
診断には血液検査や画像検査が必要であり、セルフケアでは改善が見込めないため必ず医療機関に受診しましょう。
生活上の注意点
甲状腺機能低下症の場合、初期症状として倦怠感や眠気・浮腫などが出現するため、自覚している方は注意が必要です。代謝能力が低下しているため、身体に負荷のかかるような無理な運動は避けましょう。
また、昆布やひじきなど、ヨウ素を豊富に含む食品を大量に摂取するとさらなる甲状腺機能の低下を招くため、過剰摂取は控えるように注意しましょう。
病院を受診するべきタイミング
甲状腺機能低下症における病院を受診すべきタイミングは、うつ病と同様、可能な限り早期にすべきです。甲状腺機能低下症を放置すると、血液中にLDLなどの悪玉コレステロールが増加し、動脈硬化が進展します。
動脈硬化が進めば、心筋梗塞や脳梗塞などの致死的な疾患を合併する可能性もあるため、可能な限り早期に受診するようにしましょう。
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いびきを伴う場合
いびきを伴う不眠症状を認める場合、睡眠時無呼吸症候群の可能性があるため、呼吸器内科や耳鼻科を受診しましょう。
家族やパートナーがいびきをかいて寝ている姿を見ると、ぱっと見は気持ちよさそうに見えますが、実はいびきをかいている本人の身体は悲鳴をあげています。空気の通り道である気道が睡眠中狭くなることでいびきをかいており、取り込める酸素の量が低下しているためです。
取り込める酸素の量が低下すると、脳は十分な栄養を得られず休めなくなるため、中途覚醒が増加して睡眠の質が低下することが知られています。逆に、日中は強い眠気を自覚し、交通事故や転倒の原因にもなるため注意が必要です。
気道が狭くなる原因は、肥満・小顎・巨舌・扁桃肥大などが挙げられ、特に肥満以外の原因が背景にある場合はセルフケアが困難なため、早期に医療機関を受診しましょう。
生活上の注意点
睡眠時無呼吸症候群の原因の多くは肥満であり、頸部に脂肪が沈着することで気道が狭くなります。そのため、最も効果的なセルフケアは食事や運動によるダイエットです。
規則正しい時間に、低脂質・低糖質・野菜の豊富な食事を心がけましょう。また、程よい負荷の有酸素運動を日常的に継続して減量に励みましょう。
睡眠中は仰向けでなく横向きで寝ることで舌根沈下を避けられるため、気道が広がる効果が期待できます。仰向けは避け、横向きで寝るようにしましょう。
病院を受診するべきタイミング
周囲からいびきを指摘された場合、可能な限り早急に医療機関を受診しましょう。睡眠時無呼吸症候群による持続的な低酸素は身体に強いストレスを与え、交感神経の活性化を招くことが知られています。
その結果、高血圧や糖尿病などの生活習慣病の悪化をもたらし、心筋梗塞や不整脈・脳血管障害などの致死的疾患の発症リスクを増加させることが知られています。進行すればCPAPという特殊な器具を用いた治療が必要となるため、早急に医療機関を受診しましょう。
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下肢の異常感覚を伴う場合
不眠症状に加え下肢の異常感覚を伴う場合は、むずむず脚症候群の可能性があるため、神経内科に受診しましょう。
むずむず脚症候群とは、下肢に異常感覚が生じることでどうしようもなく足を動かしたい衝動に駆られ、実際に足を動かすと異常感覚が軽減することから中々眠りにつけず、入眠困難に至る病気です。
原因ははっきりと解明されていませんが、脳内における神経伝達物質ドーパミンの分泌異常が関連していると考えられてます。また、鉄欠乏・貧血・妊娠を契機に発症することも知られています。
睡眠時無呼吸症候群と同様、睡眠不足に伴い日中の強い眠気の原因にもなるため、早期から対策することが重要です。
生活上の注意点
日中の眠気を自覚しやすいため、日常生活における事故に注意しましょう。特に運転をする方は眠気を自覚したときは無理をせず、しっかり休憩するように意識しましょう。
また、アルコールやカフェイン・喫煙によって不眠症状がさらに悪化するため、注意しましょう。
病院を受診するべきタイミング
むずむず脚症候群の場合、症状を自覚しやすいため、下肢に異常感覚を認めた場合は病院を受診しましょう。むずむず脚症候群は日常生活のちょっとした工夫で症状が改善することもありますが、改善は一時的である事がほとんどです。
放置すれば悪化していき、パーキンソン病などの発症にも関わるため、早期に専門の神経内科を受診して治療を始めましょう。
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不眠症の原因
不眠症の原因の多くは、生活習慣の乱れです。生活習慣が乱れると自律神経が乱れるため、夜に副交感神経が優位にならず、自然な眠気を得る事ができません。
具体的な原因としては不規則な食事摂取・夜更かし・就寝直前のスマホいじりや運動や入浴・過剰なアルコール摂取や喫煙などが挙げられます。これらの場合、生活習慣を改善するなどのセルフケアでも改善が見込めます。
しかし、不眠症の原因には上記で紹介したような病気が隠れている可能性もあるため、注意が必要です。放置すれば命に関わるような病態に進んでしまう可能性もあるため、早期から適切に対策しましょう。
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不眠症の治し方
不眠症の治し方は原因によっても異なります。まずは規則正しい生活を心がける事が大切です。特に、日中太陽光を多く浴びる事で体内ではセロトニンと呼ばれるホルモンが分泌され、夜間にはこのセロトニンを原料にメラトニンが分泌されます。
メラトニンは睡眠にとって重要なホルモンであり、メラトニンによって自然な眠気が誘発されます。そのため、朝起きたらなるべく太陽光を浴びる時間を意識しましょう。
一方で、原因がなんらかの病気の場合はセルフケアでの治療は困難です。適切な診療科で適切な治療を受ける事が重要なため、医療機関を受診しましょう。
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もしかしたら起立性調節障害の可能性がある
不眠症にお悩みの方は、もしかしたら起立性調節障害の可能性があります。起立性調節障害は自律神経が乱れる事でさまざまな全身症状をきたす病気であり、不眠症状もその1つです。
朝に活性化してくるはずの交感神経がうまく活性化しないため、なかなか起きる事ができず、逆に夜に交感神経が活性化してしまうため、眠くなりません。
起立性調節障害の場合、他にも腹痛や嘔気・起床後のめまいや立ちくらみなどが生じ、午後になると改善するという特徴があるため、心当たりのある方は医療機関を受診しましょう。
また、起立性調節障害には他にもいくつか特徴的な症状があり、自宅でもセルフチェックできます。放置すれば通学や通勤に支障をきたすため、早期診断に務めましょう。
下記の記事では、子供の起立性調節障害のセルフチェックについて詳しく解説しているため、ぜひ参考にしてください。
>>起立性調節障害のセルフチェックリスト(子ども)|すぐにできる診断テスト
下記の記事では、大人の起立性調節障害のセルフチェックについて詳しく解説しているため、ぜひ参考にしてください。
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【参考文献】
日本小児心身医学会 起立性調節障害(OD)
厚生労働省(不眠症)
厚生労働省(レストレスレッグス症候群 / むずむず脚症候群)
MSDマニュアル
日本内分泌学会