「起立生調節障害にはメトリジンという薬が効くって聞いたけど本当?」「メトリジンにはどのような効果があるの?」このような疑問をお持ちの方も少なくないでしょう。
起立性調節障害にはさまざまな治療方法がありますが、そのうちの1つに薬物療法が挙げられ、中でも代表的な治療薬としてメトリジンが挙げられます。
メトリジンは簡単に言えば血管を収縮させ、血圧を増加させることで起立時や起床時に低下する脳血流を維持する薬であり、起立性調節障害の循環器症状には特に有効な治療薬です。
一方で、誤った使用法では思ったような効果は得られず、また副作用が出現する可能性もあるため、使用する上では正しい知識を持っておくことが重要です。そこでこの記事では、起立性調節障害に対するメトリジンの使用法について詳しく解説します。
起立性調節障害にメトリジンは効果がある?ない?
結論から言えば、適切に使用できていれば起立性調節障害に対してメトリジンは効果があります。
そもそも、起立性調節障害とは身体が急速に成長する小学生高学年〜中学生で発症する身体疾患であり、身体の急速な成長に自律神経の発達が追いつかないことで生じる病気です。もちろん成人でも発症することがあります。
起立時や起床時、血液は重力によって下肢に多く取られてしまいますが、自律神経が正常に機能することで下肢の血管が収縮し、心臓が強く拍動することで血圧が維持され、脳の血流も維持されます。
しかし、起立性調節障害では自律神経が乱れてしまうため、うまく交感神経が活性化せず、上記のような生理的反応が起こらないために脳血流が低下します。そこで、血管に存在するα受容体に作用し血管収縮作用を持つメトリジンを体外から投与することで脳血流を強制的に増加させるわけです。
一方で、メトリジンの効果は内服後比較的早期に発現し、その後時間の経過とともに薬理作用は消失していくため、内服からある程度早い段階で起き上がらないといけません。
起床するタイミングが遅れると、すでに薬効は失われ、思ったような効果を実感できない可能性が高くなるため、遅くても内服から1時間〜1時間半の間には起床するよう心がけましょう。
また、1回の内服でずっと効果を示すわけでもないため、効果を得るためには比較的長期間の継続的な内服が必要となることも理解しておく必要があります。
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メトリジンは起立性調節障害のどんな症状に効果がある?
自律神経が乱れる起立性調節障害はめまいや腹痛・嘔気・不眠などさまざまな症状をきたしますが、メトリジンは上記で記したように主に血圧に作用する薬であるため、循環器症状の改善に役立ちます。
具体的に改善が期待できる症状は、繰り返す立ちくらみやめまい・起立時の気分不快や意識消失・入浴時や精神的ストレスに伴う気分不快・体動に伴う激しい息切れや動悸・朝や午前中に強い体調不良などです。
一方で、脳血流の上昇に伴う嘔気や頭痛を訴える方もいるため、使用量や内服のタイミングは医師の指示に従う必要があります。
起立性調節障害はメトリジン以外の非薬物療法で治すのが一般的
ここまで、起立性調節障害に対するメトリジンの効果について解説しましたが、メトリジンを含む薬物療法は起立性調節障害の根本の原因を是正するわけではないため、あくまで症状の程度が強い場合のオプションの1つにしか過ぎません。
起立性調節障害はメトリジン以外の非薬物療法で治すのが一般的です。非薬物療法とは、起立性調節障害がどのような病気なのか理解した上で、日常生活で症状を改善するためにできる工夫のことを指します。
非薬物療法には食事療法・運動療法・光療法の3つのアプローチがあるため、それぞれについて詳しく解説します。
食事療法
起立性調節障害の改善のためには、食事療法が重要です。偏った食事や乱れた食生活は自律神経のバランスを乱し、起立性調節障害の悪化につながります。
ただし、ある特定の成分を摂取すれば症状が改善するということではなく、バランスの良い食事を規則正しく摂取することが治療の上でも最も重要です。
特に、たんぱく質・ビタミンB群・鉄分不足は症状を悪化させる可能性があるため、十分意識して摂取することを勧めます。
成人における摂取量の目安ですが、たんぱく質の場合、1日あたり0.65g/kgであり、体重50kgの方であれば最低でも32.5g以上は摂取する必要があります。これは鳥ササミ肉約150gに相当する量です。
ビタミンB1であれば1日あたり1.5mgが推奨量であり、これは豚の肩肉400gに相当します。
最後に、鉄分は1日あたり6.5〜7.5mgが必要ですが、月経中の女性は鉄分喪失が多いため、11mgの摂取が推奨されます。これは、納豆300g以上に相当する量です。普段の食事から少しでも意識して、食生活の乱れを改善すると良いでしょう。
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運動療法
運動によっても自律神経が安定化するためおすすめです。適度な負荷の運動は自律神経のバランスを整える効果が期待でき、起立性調節障害の症状改善に効果的です。
また、下肢の筋力が維持・増強されれば、下肢に血液が溜まっても筋肉が血管を外から収縮させることができ、ポンプとしての機能を果たすため、脳血流の維持に繋がります。
おすすめの運動はランニング・水泳・縄跳び・スクワットなどですが、症状の程度によってはこれらの運動すら困難な場合もあるでしょう。その場合は、マットを敷いて横になった状態で行う運動や、イスの立ち上がり運動だけでも効果的です。
体調に対して負荷の強すぎる運動はかえってストレスになり、症状を悪化させる可能性もあるため、注意が必要です。
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光療法
光療法とは、脳に光の刺激を当てることで自律神経の乱れを整える治療法のことです。起立性調節障害を発症すると、午前中に交感神経が活性化しないため、さまざまな症状をきたします。
一方で、午後や夕方になると遅れて交感神経が活性化してくるため、夜に身体がアクティブモードになってしまい眠れなくなります。その結果、不眠症状とともに自律神経のバランスがさらに乱れてしまうわけです。
そこで、午前中に強い光を当てると、網膜から脳に刺激が入り、日中にセロトニンというホルモンがたくさん分泌され、夜にはこのセロトニンを原料に睡眠ホルモン「メラトニン」がたくさん分泌されるようになります。
そのため、乱れた睡眠リズムの改善が期待され、同時に自律神経の乱れの是正も期待されるわけです。主に、睡眠障害の重度な起立性調節障害の方におすすめの治療法です。
日常生活においては、起床とともに外に出て太陽光を浴びることで実践可能ですが、専用の高照度専用器具を用いて人工的に光療法を実践することも可能です。
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【まとめ】起立性調節障害は非薬物療法で根気強く治療しましょう
今回の記事では、起立性調節障害に対するメトリジンの効果について詳しく解説しました。メトリジンは血管収縮作用を有し、起立性調節障害で生じやすい起立時・起床時の脳血流低下を予防・改善する効果が期待できます。
そのため、起立時のめまいやふらつき、転倒、意識消失などの症状がある場合は、治療の選択肢の1つとして検討すべきでしょう。一方で、メトリジンはあくまで症状を一時的に緩和する薬であり、乱れた自律神経を元に戻すような治療法ではありません。
起立性調節障害の原因である自律神経の乱れに直接的にアプローチするためには、非薬物療法で根気強く治療する必要があります。非薬物療法には食事・運動などにアプローチするさまざまな方法があり、自身の身体に合った方法を見つけることが長期的に治療する上では非常に重要です。
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