起立性調節障害とは

【医師解説】起立性調節障害はサプリで症状が改善されるの?

2022年4月22日

この記事の監修者

医師 武井 智昭

医師 武井 智昭

高座渋谷つばさクリニック院長
小児科・内科・アレルギー科
保有資格:小児科専門医・指導医・日本小児感染症学会認定・インフェクションコントロールドクター・臨床研修指導医・抗菌化学療法認定医・プライマリケア学会認定医・認知症サポート医・小児感染症学会認定医

一般社団法人 起立性調節障害改善協会

皆さんは普段体の不調を感じた時、どのようにして解決しようとしていますか?

一昔前は何かあっても自分で調べられる範囲に限界があったため、専門性のある医療機関に受診していたと思います。

しかし、近年はインターネットの普及に伴い、医療従事者以外の一般の方々でも簡単に様々な医療情報にアクセスすることが可能になりました。これにより非常に利便性が向上したことは間違いありません。

利便性は向上しましたが、その反面で情報の信頼性を判断するのも難しくなりました。情報が多すぎて、適切なものとそうでないものを見分けることが難しくなっているのです。

例えば、「ダイエット 自宅」と検索すれば、誰にも知られずにダイエット法がスマホ1つで検索可能ですが、実際に調べてみると怪しげで高額な治療法やサプリメントが大々的に広告されています。

起立性調節障害(OD)もその1つです。子供が長年、起立性調節障害に苦しんでいれば、多くの親御さんはインターネットで検索し、今まで試したことのない治療法や新しい治療法に手を出したくなるものです。

実際に起立性調節障害に対する多種多様なサプリメントが治療薬のように紹介されています。

そこで今回は、起立性調節障害の子供にサプリメントの内服がどう言った影響を及ぼすのか、親御さんにとって気になるポイントをわかりやすく説明していきます。

起立性調節障害(OD)改善ガイドブック

市販されているサプリの特徴

そもそも起立性調節障害とは、成長の過程で急激な肉体の変化に自律神経の発達が追いつかず、本来起立時に活性化すべき交感神経が活性化しないことで脳血流が低下する病気です。

脳血流の低下に伴い、めまい、意識障害、ふらつき、嘔気、食思不振などの様々な症状が出現します。

本人や親御さんによる疾患への理解を深め、身の回りの環境や自身の行動に対する非薬物療法、それでもダメなら薬物療法や心理カウンセリングを受けることが基本的な流れとなっています。

また近年では、子供の偏食や栄養バランスの乱れに伴い、ある特定の成分が枯渇することで起立性調節障害の症状が増悪する可能性があるため、新しい治療方法として栄養療法が注目されています。

栄養療法は、医師の管理下のもとで不足している栄養素、特に糖質、タンパク質、鉄分や亜鉛、ビタミンなどを検査して、不足が認められたものを補充していく治療方法です。

これらの栄養素は直接起立性調節障害とは関係なくても、不足することで症状を助長させてしまう可能性があり、実際にこれらの栄養素を的確に補充するだけで症状が劇的に改善した例は多数報告されています。

市場に出回っているサプリメントは、この栄養療法を模して作られた市販薬です。例えば、「睡眠効果があるGABA配合によるリラックス効果で起立性調節障害の症状が改善!」と書かれているものや、「抗ストレス作用のあるチアニン配合!」と書かれているものです。

悪い言い方をすれば、なんとなく精神的に安定しそうな成分を混ぜているような商品です。

栄養療法は、各個人で不足している栄養素を検査した上で補充することに意味があるということを忘れてはいけません。

起立性調節障害(OD)改善ガイドブック

サプリ選びは起立性調節障害の場合慎重に

前述したように起立性調節障害に対する治療方法は、すでに日本小児心身医学会のガイドラインである程度示されています。さらに言えば、日本小児心身医学会は2018年1月に「起立性調節障害の起立時の循環動態、および脳循環や脳代謝機能を改善するサプリメントは存在しないと考える」と明言しています。

ここまで明言する理由は、各種サプリメントについて的確な研究デザインによって明確な科学的根拠(エビデンス)を示した研究報告がこれまでに存在しないからです。市販のサプリメントについて、物によっては患者団体から懸念の声が多数寄せられているため購入には注意が必要であると警鐘を鳴らしています。

筆者の考えもある程度日本小児心身医学会の考えと一致しています。起立性調節障害に対する本質的な治療にはなり得ませんし、GABAなどの成分は経口摂取しても脳に到達しないため効果がありません。

しかし、栄養療法で症状が改善している例を多数認めていることから、不足している成分の補充という意味では効果がある可能性があります。つまり、たまたま不足していた成分が飲んだサプリメントに含まれていれば、起立性調節障害の症状が改善する可能性はゼロではないということです。

不足している成分を特定することが重要

起立性調節障害の治療に関しては、サプリメントはあくまで副次的なものとして捉えるべきであると感じます。起立性調節障害の治療のスタンダードは、非薬物療法です。

もし仮に、どうしてもサプリメントを内服して治療したいと考えている人がいるのであれば、せめて不足している成分を調べたうえで内服することをお勧めします。
十分足りている成分を内服しても意味がない上に、むしろ特定成分の過剰摂取による健康被害の可能性もあり得ます。

筆者が勧めるのは不足している成分を調べた上での栄養療法です。実際に有効な効果を得られた症例の報告もあり、試してみる価値はあると思います。

鉄分や、乳酸菌については起立性調節障害の人で取り入れられている方は多いです。

下記記事では起立性調節障害の症状に効く食べ物について解説していますので、ぜひ参考にしてみてください。

https://odod.or.jp/kiritsusei-toha/od-604/

下記記事では「起立性調節障害の子供に対して親御さんができること」をまとめていますので、ぜひ参考にしてみてください。

https://odod.or.jp/kiritsusei-toha/od-437/

【参考】
日本小児心身医学会 起立性調節障害(OD)

起立性調節障害(OD)改善ガイドブック

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トトノエライトプレーン

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