起立性調節障害(OD)で苦しむ子供は少なくありません。また、その子供を育てる親御さんにとっても日々苦しむ姿を見るのは辛いものです。
特に症状が重症化してくれば親御さん自身にも負担がかかり、手に負えないと感じる方々も出てくるでしょう。そんな中で医療機関を頼りたくなるのは当然のことだと思います。
そこで本記事では起立性調節障害に対する医学的介入や、より重症度の高い場合における入院の必要性や基準を紹介します。本記事を読むことでお子さんとともに親御さんの精神的負担が少しでも緩和されれば幸いです。
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起立性調節障害の重症で入院する場合の症状
起立性調節障害における重症度分類では重要とされるいくつかの定義が決められています。
- 起立後3-7分の間に起立前の血圧より15%以上の血圧低下が出現した場合
- 起立時の心拍数が125bpm以上、もしくは起立前よりも45bpm以上増加
- 症状が強く、ほとんど毎日学校生活や日常生活に支障をきたす
このように重篤な症状であれば血圧低下が著しく日常生活に支障をきたすレベルであるということです。しかしながら、入院についての明確な基準は決まっていません。
本来は子供のみならず親御さんにも病気を理解してもらうための疾病教育や、薬物以外の非薬物治療などの外来治療がメインになります。しかし、場合によっては医療機関での薬物療法や、体内時計を合わせるための経過観察入院が必要になるケースも稀にあります。
そもそも人間は起床して運動を行ったり活動的に動くときには交感神経系が優位な状態にあります。逆に休憩したり入眠するときには副交感神経系が優位になり休息モードに入ります。
これが規則正しいリズムで訪れるからこそ人間は定期的に夜間に睡眠しています。
それに対してODの子供は自律神経のバランスに失調をきたしている状態です。
その結果、睡眠のバランスにも大きな失調を与えてしまい体内時計にズレが生じます。日常生活とのリズムに乖離が生まれてくるのです。
朝起きる時間になっても体は休息モードで活発に動く気になれません。逆に夜になると交感神経がようやく機能を取り戻し夜間寝れなくなってしまいます。
このような事態が深刻化すれば当然日常生活に常に支障をきたしてしまいます。こういったときには病院に入院して体内時計のズレを戻すような非薬物療法を実施する必要性があります。
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起立性調節障害で入院した場合の実態
まず、入院する診療科についてですが各年齢で適切な診療科を受診すべきです。
中学生の場合
中学生以下であれば小児科が推奨されます。有病率が高く医師も慣れた疾患であり適切な診療が期待できます。
また、この時期のODにはほかの疾患の可能性も隠れているため総合的な診察が望ましいです。さらに、重症度が高い場合は専門度の高いODの専門外来を行っている病院を受診すべきです。
高校生や大人の場合
高校生以上であれば、年齢的に小児科の範疇を超えていますので基本的には成人の診療科を受診すべきです。症状にもよりますが、血圧の問題が主であれば循環器内科を受診するのが良いでしょう。
自律神経の問題が主であれば神経内科、精神的な影響が大きいと判断する場合は心療内科などが適切です。何れにせよこれらの診療科のどれかを受診するのが適切だと思います。入院の期間は症状にもよりますが長くても1-2週間と考えられます。
起立性調節障害で入院中の経過
入院の主な目的は前述した通り薬物療法と、入院生活の中での非薬物療法や心理療法です。
薬物療法
ミドドリン塩酸塩と言われる薬物を第一選択とします。これは血管収縮薬であり起立時の血圧低下を予防する効果があります。
就寝前に内服し、一定期間内に起床することで効果持続時間内に起立しても低血圧を起こしにくくします。逆に効果時間を過ぎて起床すると効果は薄れてしまいます。
内服から比較的短期的に効果は得られますが、内服期間は長期間継続する必要性があります。
また、可及的な治療として生理食塩水を1Lほど一気に点滴で投与することで血管内の水分量を確保し血圧低下を防ぐような緊急的な治療もありますが、持続時間は数日ほどと言われています。
非薬物療法
前述したように起床時間をコントロールしたり夜更かしをしないようにして、入院期間中に体内時計のズレを修正するようにします。また、日中の適度な運動を促し筋力を維持することも血圧維持には重要です。
そのほかにも疾病に対する理解を深めたり、心理的、精神的なサポートも行います。これに関しては患者や親御さんの治療に対する理解によって治療効果や期間は異なります。
ここで紹介した治療方法は代表的なものですが、起立性調節障害の患者さんは個々に体質が異なりますので、外来や入院で行うベストな治療の範囲もそれぞれに異なります。内服の種類も、昇圧剤だけでなく、病状に応じて様々なお薬が工夫されています。
重症の方全員が入院治療を必要とするわけではない場合もあるでしょう。地域の実情や患者さんの状態に合わせて、最適な治療を主治医と組み立てていくことが重要です。
起立性調節障害の治し方・親ができることは以下の記事で詳しく紹介していますので、ぜひご覧ください。
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【参考】
田中大介 監修『起立性調節障害(OD)朝起きられない子どもの病気がわかる本』 講談社
日本小児心身医学会 起立性調節障害(OD)