中学生は思春期真っ最中で精神的に非常に繊細な時期です。小学校から進学して、新たな人間関係の構築や部活動、さらには高校進学のための勉強など多くのストレスを抱える年齢です。
そんな繊細な時期に発症しやすい病気の1つが起立性調節障害(OD)です。ODは小学校高学年から中学生にかけて発症しやすく、急激な肉体の成長に対して自律神経の発達が追いつかず様々な症状が出現します。
あくまで身体的疾患の1つではありますが、ストレスなどの心理的負担でも症状に影響を及ぼしてしまうため、精神疾患と認識されやすい疾患でもあります。自分の大切な子供がODに罹患した場合、親御さんにとっても多くの不安や焦りを感じてしまうと思います。
しかし、親御さんが慌ててしまうと子供はさらに不安やストレスを感じてしまい、病状が悪化する可能性もあります。
そこで本記事では、起立性調節障害とストレスの関係性について分かりやすく解説します。子供のストレスを軽減する方法や必要性を理解していただければ幸いです。
起立性調節障害はストレスが原因で発症するの?
結論から言えば、ストレスによって起立性調節障害が発症するわけではありません。起立性調節障害は急激な肉体の成長によって心臓と脳の距離が開くのに対して、自律神経の発達が追いつかないため脳への血流が維持できなくなる疾患です。
人間は起立すると重力に伴って多くの血液が足に取られてしまい、脳血流が低下してしまいます。そこで脳血流が低下しないように自動で交感神経が活性化して、足の血管を締め上げたり心臓の拍動を強めます。
すると足に取られる血液が減り、心臓が強く拍動して脳に多くの血液を送るため脳血流は維持されます。これが正常なシステムですが、起立性調節障害の場合は交感神経がうまく活性化しないため脳血流が低下してしまいます。
脳血流が低下することで、血圧低下、脈拍増加、めまい、ふらつき、嘔気、腹痛などの多種多様な症状が出現するのです。小学校高学年から中学生にかけて肉体が急激に成長するため心臓と脳の距離が開くことで発症しやすい時期になります。
面倒だから学校に行きたくないのではなく、起床時に体がだるくて学校に行きたくても行けない病気であることをまず理解しましょう。起立性調節障害の基本的な病態を理解したところで、次にストレスとの関係を解説していきます。
人間がストレスに晒された時の肉体に起こる反応はすでに医学的に解明されています。ストレスの原因であるストレッサーを大脳皮質で感知すると、大脳辺縁系を経て視床下部に刺激を伝達します。
視床下部からは交感神経や副交感神経などの自律神経系と、下垂体を介したホルモン系の2つの方法で刺激伝達を行います。最終的にはコルチゾール、ノルアドレナリン、アドレナリンなどの分泌を行いストレス防御反応に至ります。
例を挙げると、仮に他人から突然誹謗中傷を受けた場合、誹謗中傷というストレッサーを大脳皮質で感知し、大脳辺縁系を経て視床下部に刺激が入ります。すると視床下部では交感神経系が賦活し血圧や心拍数は上昇します。
つまり、ストレスは自律神経を司る視床下部という脳の一部分に影響を及ぼし、交感神経や副交感神経などの自律神経のバランスを乱してしまうのです。
急激な肉体の成長が起きている子供であれば、ストレスによって起立性調節障害の症状が悪化する可能性は十分あり得ます。しかし、うつ病やパニック障害のようにストレスが発症の原因である精神疾患とは異なるのです。
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「怠け者」など病気を理解してもらえず、ストレスでさらに症状が悪化
朝起きることのできない子供に対して、なかには叱責してしまう親御さんもいます。怠けていると勘違いして怒ってしまうと、子供には多大なストレスがかかってしまい結局は起立性調節障害が悪化する可能性もあります。
また、問題は家庭内だけでは留まりません。むしろ親御さんの目の届きにくい学校ではさらにリスクが伴います。
起立性調節障害の子供は本人の意思とは関係なく、退屈な授業にも遅れてきて、辛いマラソン大会にも参加できません。周囲の子供と同じようには行動できないのです。
そんな起立性調節障害の子供を、周囲の中学生はどんな風に思うでしょうか?
中学生はまだまだ精神的に未熟で、起立性調節障害という疾患に対する理解もままなりません。心ない発言を直接ぶつけてくるような子供もいるかもしれません。
上記で解説したように、ストレスは自律神経のバランスに影響を与え、結果的に起立性調節障害の症状が悪化する可能性があります。逆に言えば、いかにストレスを軽減してあげられるかが起立性調節障害の改善に繋がるのです。
ストレスを軽減させるには
子供のストレスを軽減させるには、家庭内、家庭外で様々な方法があります。家庭内であれば、過干渉は避けるべきです。子供を心配するあまり色々と介入したくなってしまう親心も理解できますが、起立性調節障害の子供にとってはストレスになる可能性が高いのです。
程よい距離感を保ち、適切な食事や運動、睡眠をサポートしてあげることに徹する必要があります。また中学生であれば学業の遅れがストレスになるため、家庭内でできる限りの学業のサポートも行ってあげましょう。
家庭外では、本人の希望を尊重しつつ、可能であれば周囲の子供やその親へ起立性調節障害への理解を促すことも重要です。怠惰ではなく病気であることを理解してもらいサポートしてもらうことで子供のストレスも軽減します。
下記記事では「起立性調節障害の治し方・子供に対して親御さんができること」をまとめていますので、ぜひ参考にしてみてください。
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【参考】
田中大介 監修『起立性調節障害(OD)朝起きられない子どもの病気がわかる本』 講談社
日本小児心身医学会 起立性調節障害(OD)