「起立性調節障害に効く薬はあるのだろうか」「市販薬で改善できるのだろうか」と疑問に思う方も多いのではないでしょうか。
起立性調節障害の治療に用いられる主な薬には、ミドドリン塩酸塩、メチル硫酸アメジニウム、プロプラノロール塩酸塩などがあります。症状や体質に応じて、漢方薬が処方されることもあります。
一部は市販薬として販売されていますが、重要なのはお子さんの症状や体質に適した薬を選ぶことです。自己判断で市販薬を使うのではなく、必ず医師の診断を受けたうえで適切に服用することが大切です。
この記事では、起立性調節障害に対する薬物療法の種類や、メリット・デメリットを解説します。さらに、実際に薬を使用した方の体験談も紹介しますので、服薬に不安を抱えている方はぜひ参考にしてください。
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起立性調節障害に効果的な市販薬はある?
起立性調節障害は、基本的に非薬物療法(光療法など)で治療していくことがメインです。
しかし、薬物療法の一つとして漢方薬を用いる場合もあります。下記の3つの漢方薬は、ドラッグストアや通販サイトなどで購入できます。
- 半夏白朮天麻湯(ハンゲビャクジュツテンマトウ)
- 小建中湯(ショウケンチュウトウ)
- 柴胡桂枝湯(サイコケイシトウ)
漢方薬は、一人ひとりの症状や年齢に合ったものを服用することで効果を発揮します。漢方薬の詳細は下記記事で解説していますので、ぜひご覧ください。
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起立性調節障害の治療に用いる主な薬と効果について
「起立性調節障害といえばコレ」というような薬はないものの、長期的に服用することで症状の緩和や改善が期待できる薬はあります。主に用いられるのは3つです。
起立性調節障害の治療で用いる薬
起立性調節障害(OD)の治療では、症状のタイプや重症度に応じて薬が処方されることがあります。代表的な薬は以下のとおりです。
<ミドドリン塩酸塩(メトリジン錠、メトリジンD錠)>
血管を収縮させ、血圧を上げる効果があります。
<メチル硫酸アメジニウム(リズミック)>
交感神経の働きを促進し、血圧を上げる効果があります。
<プロプラノロール塩酸塩(インデラル)>
心拍数を抑えることで、血圧を下げる効果があります。
起立性調節障害は、起立直後に血圧が急低下する「起立直後性低血圧(INOH)」や、起立後に心拍数が急増する「体位性頻脈症候群(POTS)」など、4つのサブタイプに分類されます。医師はこれらのタイプや症状の程度を見極めたうえで、最適な薬を選択します。
なお、薬物療法はあくまで非薬物療法(生活習慣改善・水分塩分摂取・運動など)と併用して行う治療であり、薬だけで確実に治るわけではありません。
また、症状や体質に応じて漢方薬が処方される場合もあります。同じような症状でも処方される漢方の種類は人によって異なるため、自己判断せず必ず医師に相談することが大切です。
起立性調節障害の治療で用いる漢方薬
起立性調節障害(OD)の治療では、西洋薬だけでなく漢方薬が用いられることもあります。
症状や体質に応じて処方される漢方は異なり、同じ病名でも患者さんごとに選ばれる薬が違うのが特徴です。代表的な漢方薬には次のようなものがあります。
<半夏白朮天麻湯(ハンゲビャクジュツテンマトウ)>
頭痛・めまい・立ちくらみといった症状が目立つ方
<小建中湯(ショウケンチュウトウ)>
食欲不振・腹痛・倦怠感といった症状があり、胃腸の弱い方
<柴胡桂枝湯(サイコケイシトウ)>
精神的なストレスが強い方
起立性調節障害の治療に漢方を取り入れる場合は、症状や体質を丁寧に見極めることが大切です。自己判断での使用は避け、必ず医師に相談したうえで適切に処方を受けましょう。
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起立性調節障害を薬物療法で治療するメリット・デメリット
「起立性調節障害の症状を改善したいからとりあえず薬を服用したい」と考える方もいるかもしれません。
しかし、薬物療法にはメリットとデメリットがあります。正しく理解したうえで、身体に負担のない治療方法を選択していきましょう。
メリット
薬物療法の大きなメリットは、症状の緩和や改善が期待できることです。薬は体に直接作用するため、非薬物療法だけでは十分な改善が見られなかった方にとって有効な手助けとなります。実際に、薬を使用することで「以前より学校へ行きやすくなった」「体調の良い時間が増えた」といった前向きな変化が得られることがあります。
一方で、漢方薬は体の自然な回復力(自己治癒力)を高め、症状の改善を目指すものです。西洋薬のように直接的に作用するわけではないため、効果のあらわれ方は比較的ゆるやかですが、体質の改善や全身のバランスを整える点で有用とされています。
薬物療法は、症状の程度や体質に応じて西洋薬と漢方薬を使い分けたり、併用したりする場合があります。どの薬が適しているかは個々の状態によって異なるため、必ず医師と相談しながら治療を進めていくことが重要です。
デメリット
薬物療法には症状の緩和や改善が期待できる一方で、副作用というデメリットもあります。
例えば、メチル硫酸アメジニウム(リズミック)では、動悸・頭痛・吐き気・ほてり感といった副作用が報告されています。また、「ドロキシドパ」や「ノルアドレナリン」を服用している方がリズミックを併用すると、相互作用によって血圧が異常に上昇する恐れがあるため注意が必要です。
さらに、以下に該当する方はリズミックを使用してはいけません。
- 高血圧症のある方
- 甲状腺機能亢進症のある方
- 褐色細胞腫のある方
- 閉塞隅角緑内障のある方
- 残尿を伴う前立腺肥大のある方
一方で、漢方薬は一般的に副作用が少ないとされていますが、ゼロではありません。体質や持病、併用している薬によっては思わぬ影響が出ることもあります。
そのため、すでに他の病気を治療中の方や薬を服用している方は、必ず医師に伝えたうえで処方を受けることが大切です。服薬後に体調の変化を感じた場合も、自己判断せず速やかに医師へ相談しましょう。
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起立性調節障害の薬を服用してから効果が出るまでの期間
起立性調節障害の治療に用いられる薬は、服用してすぐに効果が出るわけではなく、効果を実感するまでに1〜2週間程度かかることが一般的です。
中には、起床時間の30分〜1時間前に服用する必要がある薬もあり、毎日続けるのが負担に感じられる場合もあります。しかし、症状の改善を目指すには長期的かつ継続的な服用が非常に重要です。
また、服薬をやめたいと思ったときは、必ず医師に相談してから中止してください。自己判断で急に服用をやめると、かえって症状が悪化する恐れがあります。
治療効果を最大限に得るためにも、医師の指示に従って服薬を継続することが大切です。
起立性調節障害の治療に用いる薬を試した人の声
起立性調節障害の症状を改善させる薬を探している方のほとんどが、薬の効き目について気になっているのではないでしょうか。ここでは、WebページやSNSで見かけた実際の声を紹介します。
まず、漢方薬を服用して症状の改善が見られた中学生の事例を紹介します。
<事例>
『14歳Aさん。小学6年生のころから朝起きにくくなった。近医にて起立性調節障害(以下ODと略)と診断され、内服薬(ミドドリン塩酸塩)などで軽快したことがあるものの、その後頭痛・倦怠感にて他院で『補中益気湯(ホチュウエッキトウ)』を処方され症状は一時改善した。中学1年の夏休み前から、朝起きられず登校できなくなり、ミドドリン塩酸塩と『小建中湯(ショウケンチュウトウ)』を処方されたが、改善されず当院に来院。』
ODは思春期初期にみられる自律神経失調症とされ、不登校の原因の一つにもなっています。起立時の血圧低下にはミドドリン塩酸塩などの昇圧剤がよく用いられますが、動悸などの副作用のため治療困難な例は少なくありません。
Aさんの症状で「口渇、立ちくらみ、心下部振水音(みぞおちのあたりを揺らすとポチャポチャと音がする状態)」は「水毒」、「疲れやすい、身体が「だるい、体が重い、食欲がない」は「気虚」と漢方医学的にとらえらえましたが、「朝起きられない」症状をODとみるか、うつ症状とみるかが問題でした。気分の抑うつなどは明らかでなかったため、基本病態を「気虚」ではなく「水毒」とみて『苓桂朮甘湯(リョウケイジュツカントウ)』を処方しました。
二週間後、「朝起きやすくなり、学校へは週2回午前中行けるようになった。」との事。頭痛がひどいときには『五苓散(ゴレイサン)』を併用してもらいました。4週間後、「午前中は毎日登校できた。」母親がかわりに来院したので追加処方し、良くなれば廃薬としました。
「朝起きられない」という主訴に対しては、うつ症状との鑑別が重要になります。Aさんの場合には明らかな精神症状や学校でのいじめなどのエピソードを認めなかったのでODを主とした病態を考えました。もしメンタルヘルス的不調が主となる場合であれば、「気虚」に対しては『補中益気湯』『六君子湯(リックンシトウ)』が有効でしょうが、ODに類似したうつ症状に対する効果は期待しがたいと思われます。
以下の記事では、起立性調節障害に対するそのほかの治療や親ができることを解説していますのでぜひご参照ください。
【参考】
日本小児心身医学会 起立性調節障害(OD)