病院で治らない方

起立性調節障害は治る病気?それとも治らない?

この記事の監修者

医師 伊藤 信久

医師 伊藤 信久

グレースメディカルクリニック院長
内科・循環器内科・糖尿病脂質代謝内科・外科
保有資格:日本外科学会認定登録医・日本循環器学会循環器専門医

 

起立性調節障害は治る病気?それとも治らない?

大切なお子さんがなかなか治らない病気にかかってしまった時、親御さんからしたらこれほど辛い経験はありません。

その病気の中には小児がんや先天性の病気のように難治性で、かつ命に関わるような病気もありますが、中には症状がそこまで派手ではないものの症状が継続する病気もあります。

起立性調節障害(OD)は、朝起きれなかったり起床後に体調が優れずふらついたりして日常生活に支障をきたす病気です。

がんや心臓病のように命に関わるほどの疾患ではありませんが、だからこそ医療機関に入院して治療を受けるわけではなく、基本的には自宅で親御さんがサポートしながら付き合っていく病気です。

人によっては症状が長引き、さらに治療効果が検査などで簡単に確認できないため、治らないかもしれない不安がつきまといます。本人や親御さんにとっても付き合っていくのが難しい病気だと思います。

そこで本記事では、起立性調節障害の中学生の症状がそもそも治るのか治らないのか、どんな人が治りにくいのかなど親御さんにとって気になるポイントをわかりやすく説明していきます。

起立性調節障害は治らない病気なの?

結論から言えば、決して不治の病などではありません。しかし、人によって症状が長引いたり、重症化する人がいるのも事実です。まずは起立性調節障害について理解しましょう。

人体の血流は起立時には足に多く取られるため、起立すると心臓よりも高い位置にある脳の血流は低下しやすくなります。そこで本来であれば自律神経が自動で活性化して脳の血流を維持しようと働きます。

具体的には心臓の鼓動を強めたり、足の血管を締め上げて血流が足に取られないようにします。自律神経が正常に作用すれば脳血流は維持されます。

しかし、自律神経の調節不全が原因である起立性調節障害ではそうはいきません。脳血流の低下に対して自律神経がうまく反応しなくなり脳血流が低下してしまいます。

小学校高学年以降から徐々に発症率が増加するのは、成長とともにホルモン分泌が不安定になり、肉体の成長にホルモンが追いつけないためです。

中学生ともなれば肉体の成長が著しく、心臓から脳の物理的な距離がどんどん開いてしまいます。それに対してホルモンの調節能力が間に合わないため脳血流が低下するのです。

こういった病気の特性上、ある程度肉体の成長が落ち着きホルモン分泌が安定化してくれば肉体と自律神経のバランスが保たれるため、症状は自然に治る可能性が高いです。

実際のデータをご紹介しますと、起立性調節障害の罹患率は小学生で約5%、中学生で約10%と言われ、特に中学生までに発症することが多いです。そのうち、発症後約1年で50%程度が、発症後2-3年もすれば80%程度が自然に症状が改善すると言われています。

つまり、起立性調節障害は難治性というよりも、むしろ多くの子供で治る疾患だと言えます。日本小児心身医学会によれば生活に大きな支障をきたすような重症例は全体の約1%程度と言われています。

症状改善までの具体的な期間に関しては個体差が大きく一概には言えませんが、前述したように肉体の成長がひと段落すれば自律神経も肉体に合わせた調節がしやすくなります。実際に大半の子供が、高校を卒業する頃までには症状が出にくくなっています。

あくまで病態は体の病気ですが、ストレスそのものが自律神経のバランスを乱す要因になるため、治療過程でのストレスの程度が症状改善までの期間に影響します。

また、一度治ったと思っても、就職や1人暮らし、妊娠や出産などの精神的ストレスがかかると再発することもあります。心理的な負担を大きく感じていれば症状改善までに時間を要することになるということはしっかりと理解しておく必要性があります。

症状が長引く人の特徴

前述したように起立性調節障害の本態は、あくまで自律神経の乱れと肉体の成長によるミスマッチです。つまり、本来であれば肉体の成長が落ち着けば症状は改善傾向に向かうことが多いです。

しかし、中には症状が長引く人もいます。症状が長引く主な原因は、疾患への適切な理解や対応ができていないこと、そして心理的な負担が大きいことなどが挙げられます。

起立性調節障害の治療過程では、疾患への適切な理解を持ち症状とうまく付き合っていく必要性があります。例えば、起き方1つとっても工夫する必要があります。

発症以前と同じようには起きられないわけですから、ゆっくり立ち上がることを心掛けて、俯き加減で動き出すようにすれば症状は緩和されます。

日中の過ごし方も、座り方や立ち方などを工夫することで多少なり症状の出現を未然に防ぐことができます。このように自分の症状を理解し、対策を考えて実践していくことが重要です。

起立性調節障害との付き合い方がわかってくれば、徐々に日常でできる行動にも幅と余裕が出てくるため、結果的に早期改善につながる可能性が高いのです。

次に、心理的負担も起立性調節障害の症状を長引かせる原因になります。

自慢の息子が突如学校に行けなくなり、夫婦間でも揉めるようなことがあれば子供はそれを感じ取ってしまいます。自分のせいで両親が揉めている状況に対して非常に強くストレスを感じてしまうでしょう。

また、母子間で揉めてしまう事もあります。治療に対する考え方や向き合い方の違いが母子間の仲を険悪にしてしまう可能性もあるのです。学校でも友人たちに心ない言葉を言われたり、学業の遅れに焦りを感じたり、様々な心理的負担が子供にのしかかってしまいます。

これらの心理的負担は自律神経の乱れを生み、結果的に肉体の成長が落ち着いてもホルモンが不安定であるため症状がなかなか改善しない可能性があります。いかに家庭内で子供の心理的負担を軽減しつつ病気と向き合えるかが重要になってくるのです。

なかには「もう一生治らない」と自分の症状に絶望を感じている人もいます。しかし、実際に検査をしてみると起立時の血圧や脈拍は正常で、身体的にはほぼ改善していることも珍しくありません。心理的にすっきりしない状態が続いてしまうことで症状が改善しない可能性もあるのです。

以上のことから、起立性調節障害に対する適切な理解と対応ができず、本人や家族での取り組み方がうまくいかなければ症状は長引く可能性があるということです。

下記記事では「起立性調節障害の症状がいつまで続くのか」について解説していますので、ぜひ参考にしてみてください。

 

 

下記記事では「起立性調節障害の子供に対して親御さんができること」をまとめていますので、ぜひ参考にしてみてください。

 

【参考】
田中大介 監修『起立性調節障害(OD)朝起きられない子どもの病気がわかる本』 講談社
日本小児心身医学会 起立性調節障害(OD)

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