起立性調節障害とは

起立性調節障害患者への生理食塩水による点滴の効果を解説

2023年6月3日

この記事の監修者

医師 錦惠那

医師 錦 惠那

内科一般・腎臓内科・透析科・産業医
保有資格:日本内科学会内科専門医・日本医師会認定産業医
2018年から起立性調節障害患者の診療を行い、累計30人以上の起立性調節障害患者を担当。

一般社団法人 起立性調節障害改善協会

起立性調節障害(OD)は、特に朝の時間帯に体調不良が現れやすい病気です。その背景には、起立した際の血圧や心拍数などを調節する自律神経の働きが関係しています。

自律神経による循環調節がうまく働かないと、脳への血流が一時的に低下し、めまいや立ちくらみが現れ、場合によっては失神することもあります。

ODの治療では、生活習慣の見直しなどの非薬物療法を基本とし、症状に応じて薬物療法が行われます。また、脱水や経口での水分摂取が難しい場合、症状が著しく悪化した場合などには、点滴が検討されることもあります。

本記事では、起立性調節障害に対して点滴が行われるケースや、生理食塩水の点滴で期待される効果について解説します。

起立性調節障害(OD)改善ガイドブック

起立性調節障害の治療で点滴をすることはある?

結論からいえば、起立性調節障害の治療で点滴が行われる場合はあります。ただし、すべての患者に必要な治療ではなく、脱水の有無や症状、経口で水分を摂取できるかなどを踏まえて医師が判断します。

起立性調節障害は、交感神経と副交感神経からなる自律神経による循環調節がうまく働かず、身体にさまざまな不調が現れる病気です。

特に起床時や起立時、長時間立っているときなどは、姿勢の変化に合わせて血圧や脳への血流を調節する必要があるため、症状が現れやすくなります。

一般的に、横になっている状態から立ち上がると、重力によって血液が下半身に移動します。このとき何の調節も行われなければ、心臓へ戻る血液が減少し、脳への血流も低下してしまいます。

しかし、健康な状態では、立ち上がったときに交感神経が働いて下半身の血管を収縮させます。さらに、脚の筋肉が収縮するポンプ作用によって血液を心臓へ戻し、血圧と脳への血流を保ちます。

一方、ODではこうした循環調節がうまく働かないため、立ち上がったときや立っている間に脳への血流が一時的に低下し、めまいや立ちくらみなどが現れます。症状が強い場合は、失神することもあります。

起立性調節障害による失神は、起立時の血圧や脳への血流の変化などによって起こることがあります。失神が起こる原因や対処法については、下記の記事も参考にしてください。

また、脱水や水分摂取不足などによって体内を循環する血液量が不足していると、症状が悪化する可能性があります。

経口で十分な水分を摂取できない場合や、症状が著しく悪化している場合には、医師の判断で生理食塩水などの点滴を行うことがあります。

起立性調節障害(OD)改善ガイドブック

起立性調節障害で点滴が検討される状態

起床時や起立時に交感神経の作用が不足し、下肢の血管を収縮させることができず、下肢に溜った血液を心臓へ戻すことができないため、めまいや立ちくらみ、失神を来してしまう場合、点滴により相対的に血流量を補うことで症状の改善を期待します。

起立性調節障害には起立直後性低血圧、体位性頻脈症候群、神経調節性失神、遷延性起立性低血圧の4つのサブタイプがありますが、特に起立直後性低血圧に有効との報告があります。

症状増悪時に生理食塩水500㎖~1.5Lを30分~2時間以上かけ静脈内注射することにより、効果が即座に発現し、さらに数日間持続すると報告されています。

生理食塩水の点滴で期待される効果

点滴には多くの種類があり、Na(ナトリウム)、K(カリウム)、Cl(クロール)などの電解質や糖分の組成によって、使用する目的が異なります。

生理食塩水は、体液に近い濃度の塩化ナトリウムを含む点滴液です。水分とナトリウムを補給し、体内を循環する血液量を一時的に増やす目的で使用されます。

起立性調節障害に対して点滴を行う場合は、体内を循環する血液量を補う目的で、生理食塩水が使用されることがあります。投与後に、めまいや立ちくらみ、動悸などの症状が速やかに軽減するケースもあります。

ただし、効果の現れ方や持続時間には個人差があり、すべての患者に効果がみられるわけではありません。また、点滴の効果は一時的であり、起立性調節障害そのものを治すものではありません。

点滴には、針を刺した部分の痛みや腫れ、血管炎、感染などのリスクがあります。また、過剰な水分やナトリウムの投与によって身体に負担がかかる可能性もあるため、繰り返し点滴を行う場合は特に慎重な判断が必要です。

ODの治療では、医師の指示に従った水分・塩分の摂取や、生活習慣の見直しなどが基本です。点滴を希望する場合も、自己判断ではなく、必要性や期待できる効果について医師へ相談しましょう。

起立性調節障害の治し方や家族ができるサポートについては、下記の記事で詳しくご紹介しています。

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