起立性調節障害とは

今すぐ実践できる運動療法|起立性調節障害

この記事の監修者

医師 錦惠那

医師 錦 惠那

内科一般・腎臓内科・透析科・産業医
保有資格:日本内科学会内科専門医・日本医師会認定産業医

 

今すぐ実践できる運動療法|起立性調節障害

起立性調節障害を患っているお子さんをお持ちの親御さんで「運動をさせてもいいのか」「体育の授業を受けさせていいのか」と悩まれている方は多いのではないでしょうか。

起立性調節障害の方は自律神経系の働きがうまく整わず多彩な症状が見られ、疲労も溜りやすいため、運動やスポーツを敬遠しがちだと思います。激しい運動や過剰な運動は確かに症状を悪化させてしまうこともあります。

一方で、運動は心身の発達には必要不可欠であり、運動により筋力をつけることで起立時や起床時の様々な症状を改善させることができる可能性もあります。起立性調節障害の方への運動の利点、注意点を含め、この項では運動療法について解説していきます。

起立性調節障害の運動療法とは?

起立性調節障害の方は起床時や起立時、長時間の立位時に交感神経の活性化に不具合が生じることで、めまいや立ちくらみなどの多様な症状が見られます。

午前中は特に調子が悪く、そのために学校や社会への参加が難しくなるケースもあり、不登校や引きこもりへ至ってしまうこともあり社会問題にもなっています。

起立性調節障害の方はどうしても活動量が低下し、そのために筋肉量が低下しやすい傾向にあると言えます。筋肉量のみならず、呼吸や循環などその他の身体機能低下を引き起こしてしまうこともあります。

この様に、活動量が低下することで引き起こされる筋、骨格、循環、呼吸機能などの身体機能の低下をデコンディショニングと呼ばれ、特に長期間不登校が続いている起立性調節障害の方はこのデコンディショニングの状態になっている可能性が高いと言われており、注意が必要です。

このためにも、適切な運動は重要であると言えます。日本小児心身医学会が提唱している小児起立性調節障害診断・治療ガイドラインでは軽めの運動が推奨されており、また、海外でも、早くより、特に若年者の起立性調節障害の方はフィジカルトレーニングが推奨されています。

運動療法によって期待される効果

実際に運動療法によって期待される効果は以下のものが挙げられます。

<筋肉の発達>
運動をすることで起立性調節障害の方に不足しがちな、「下半身の筋肉」の強化をすることができます。下半身の筋肉は起床時や起立時、立位を保っている間、心臓や脳への血流を維持するためにポンプの機能を果たしており、非常に重要です。

<心肺機能の発達>
一般的に、運動をすることで、体全体の酸素需要が上がるため、心臓は心拍数を上げ、呼吸数を増やし体全体に酸素を送り届けるよう頑張ります。そうすることで、心肺機能が鍛えられ、また、それらを支配している自律神経を鍛えることにもつながります。

<成長ホルモン分泌の促進>
小学生高学年~高校生前後の思春期を迎える子どもに好発する起立性調節障害ですが、この時期は特に成長ホルモンが重要になります。成長ホルモンは、運動と睡眠により分泌が刺激されるため、適切な運動を行い、心身の発達につなげましょう。

<ストレス発散>
体を動かすことは、ストレス発散の効果があると言われております。ストレスは自律神経へ与える影響が大きく、ストレスが起立性調節障害の症状を増悪させる一因であるため、これからご紹介する運動や自分にあった運動を行うことで、ストレスを発散させましょう。

起立性調節障害の方のみならず、健康維持には運動は不可欠です。若いころからの運動習慣は将来の骨粗鬆症の予防につながると言われています。

また、メタボリックシンドローム、生活習慣病の予防にもつながり、運動は健康づくりのためにどの年代にとっても必要不可欠であると、厚生労働省や様々なガイドラインで推奨されています。

運動療法の種類と仕組み

小児起立性調節障害診断・治療ガイドラインでは軽めの運動が推奨されていますが、具体的な運動方法は明記されていません。

では、実際にはどの様な運動方法があるのでしょうか。よく行われている起立性調節障害の方に向けた運動方法をいくつかご紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。

起立性調節障害の病気の特性から、症状が改善していきやすい午後に体の調子と相談しながら少しずつ運動療法を行っていきましょう。

<散歩>
30分程度を目安に散歩することをおすすめします。最初は短時間から行い、5分程度でも良いでしょう。無理なく散歩をできるようであれば、少しずつ時間を延ばしたり、少し早歩きをしてみることも下半身の筋肉強化により効果的です。

<水泳や水中歩行>
水中は浮力により体への負担が少ないことがポイントです。水位や水温、個人差もありますが、全身を使った運動が出来きることも利点です。転倒のリスクも少なく、水深の深い足もとには大きな水圧がかかることで、足の筋肉・水圧によるポンプ機能が活性化され、心臓や脳への血流が維持されやすくもなります。

<サイクリング>
サイクリングは、下半身の筋肉強化と心肺機能の強化に効果的です。風景を見ながらのサイクリングはストレス発散にもなります。

運動時の注意点

最後に、運動を行う際に注意するべきポイントをお話致します。

・暑い場所での運動は要注意

・激しい運動は要注意

・長時間の運動、長時間立位を継続する運動は要注意

・こまめな水分補給や塩分補給を忘れずに

長時間立ちっぱなしになるようなスポーツ、例えば、サッカー、バスケット、テニス、野球、陸上などのメジャースポーツを長時間行うことは、特に症状が見られている際には控える必要があります。

長時間の立位は、下肢への血流が溜まりやすく、脳血流が低下しやすい状態であるため、起立性調節障害の方には不向きと言えます。

また、暑い時期、炎天下での運動も控える方が良いでしょう。暑い時期は副交感神経が優位になりやすく、症状が増悪しやすくなります。さらに、炎天下での運動により、多量に発汗することで体内が脱水になると、脳血流の低下が増悪しやすく、症状が見られやすくなってしまいます。

夏場は熱中症にも注意が必要です。こまめに水分補給を行い、一緒に塩分補給も行いましょう。スポーツ飲料や経口補水液、塩飴などを活用してみてください。

運動中に気分が悪くなったり、めまいや吐き気、気分不良などを感じた場合は、直ちに運動を中止して、涼しい場所で休むようにしましょう。気になる体育の授業への参加については、下記記事で詳細に説明をしていますので、ぜひ参考にしてみてください。

 

 

下記記事では「起立性調節障害の子供に対して親御さんができること」をまとめていますので、ぜひ参考にしてみてください。

 

【参考】
日本小児心身医学会 起立性調節障害(OD)
日本心身学会 自律神経失調症
田中大介 監修『起立性調節障害(OD)朝起きられない子どもの病気がわかる本』 講談社

トトノエライト なおくん

キーワードから探す

-起立性調節障害とは
-