朝起きると体調を崩したり、頭痛や嘔気や倦怠感で日常生活に支障をきたす病気、それが起立性調節障害(OD)です。もし、自分のお子さんにも同様の症状があれば怠惰だと叱責するのはやめてください。仮に起立性調節障害であればストレスが病状を悪化させるからです。
特に子供が高校生であれば部活や学校生活などの重要なライフイベントにも大きな影響が出ることになります。そこで本記事では、起立性調節障害を疑う高校生に対しての適切な対応方法や親御さんの取るべき対応を分かりやすくご紹介していきます。
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高校生が起立性調節障害を患った場合の治し方
起立性調節障害は主に小学生や中学生で発症することが多い疾患ですが、高校生で環境の変化などのストレスをきっかけに発症する子供も少なからずいます。もしくは中学生からの起立性調節障害をそのまま高校まで継続してしまい、高校進学のストレスでさらに症状が悪化することも少なくありません。
その場合どう対処すべきでしょうか?
高校生といえど小・中学生と同じ病態ですから基本的な治療の考え方は変わりません。では具体的にどう言った対応をすべきか解説していきます。
まず最初に、最も重要なことは本人も親御さんもしっかりと疾患に対する理解を深めることです。特に子供は小学生ならまだしも、高校生であれば十分自分が病気であることを受け止め理解することができると思います。
自分が起立性調節障害という病気を発症したこと、起立性調節障害は根性で治せるようなものではなく適切な治療と対応をしなくてはいけない病気であることを理解しましょう。
起立性調節障害の発症後1年には約半数が、2~3年経過すれば約8割の人が自然に回復することも理解して、今後の見通しを立てることから始めます。
次に、実際の治療についてです。治療の中心は非薬物療法と呼ばれる投薬に頼らない治療方法です。非薬物療法は基本的に本人や家族の持続的な努力が必要なので、その意味でも前述した疾患への理解が必要です。
起立性調節障害は自律神経が乱れることで脳への血流を心臓が適切に供給できなくなる病気です。通常は起立時に脳への血流が低下すると即座に交感神経が活性化します。
心臓は血液を供給するポンプですから、交感神経からの刺激で普段よりも強く働くことで脳への血流を確保します。しかし、起立性調節障害ではこの反応が起こらないのです。
脳への血流が低下することで倦怠感やふらつき、場合によっては失神など様々な症状をきたします。そこで、非薬物療法で重要なテーマは「いかに脳への血流を確保するか」です。
起床時は急に立ち上がるのではなくゆっくり時間をかけて立ち上がったほうが良いです。また、睡眠時には自分でも気づかないうちに発汗していて多くの水分を失っています。
脱水になれば脳への血流は低下しますので起床時に立ち上がる前にしっかりと水分摂取をしたほうが安全です。日中や夜間の暑さ対策も必要になります。
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さらに高校生の場合、自律神経の乱れは睡眠にも大きな影響を与えてしまいます。夜間眠れないためにスマホやゲームをして夜更かしすればさらに症状は悪化します。十分な睡眠時間を確保できるようにして、日中は可能であれば適度な運動をした方が筋力維持にもなり夜間も良質な睡眠が得られます。
起立性調節障害の治療経過は千差万別ですが、比較的軽症であれば非薬物療法で自然に改善する人が多いです。しかしそれでも症状が改善しない場合には薬物療法も併用していく必要性があります。
薬物療法では、ミドドリン塩酸塩と呼ばれる血管収縮剤を起床の30分から1時間前までに内服します。薬効が切れる可能性がありますので、内服した後は一定期間内に起床した方がいいです。
そのほかに病型によってはメチル硫酸アメジニウムと呼ばれる交感神経刺激薬や、プロプラノロール塩酸塩と呼ばれる不整脈の薬を内服することもあります。これらの内服薬で治療効果を得るにはある程度長期間の内服が必要になります。
必要に応じて心理療法、つまりカウンセリングも必要になります。特に高校生のように、ある程度精神的に成熟してきた段階での発症は自身の自我もあるため起立性調節障害に伴う精神的ストレスが強いと思われます。カウンセリングによる傾聴や助言は精神的ケアにある程度有効である可能性は高いです。
これらの治療過程でなかなか改善が見られない場合、本人の意思に反して無理な通院を強いることは病状を悪化させる可能性もあるのでお勧めできません。
治療の必要性を穏やかに説明したり、本人の治療への疑問や不信感を丁寧に聴き、それらをお子さんとともに主治医に質問し、疑問や不信を解消する手伝いをしてあげてください。
起立性調節障害の子どもに対して親ができること
次に親御さんにできることを解説して行きます。起立性調節障害という疾患の特性上、周囲のサポート、中でも親御さんの存在は非常に重要です。
もちろん親御さんにとっても辛い状況であることはよく理解できます。治療がうまくいかなかったりすれば憤りも生まれます。しかしあくまで子供の心と体のケアを優先することが重要です。
例えば、体のケアであれば子供が脱水にならないように水分をしっかり摂取させたり、食事内容を変えて不足している栄養源を料理で補充してあげることも立派な治療法です。
次に心のケアについてです。高校生であれば、自分の状況を鑑みて親御さんが思っている以上に病気のことで悩んでいるはずです。親御さんはそれを理解しなくてはなりません。
つい色々してあげてくなってしまうのが親心だと思いますが、身体面のセルフマネジメントに繋がる栄養や適度な運動、しっかりした補水、生活のリズム管理はよく手伝ってあげたうえで、心理面ではお子さんを焦らせないよう、少し過干渉をさけて、心理的な余裕や自信をとりもどせるよう少し時間をかけて見守ってあげることも、とても大事な勇気ある選択といえるでしょう。
親御さんは焦らずに子供の決断や意思を尊重してあげることも一つの心のケアに繋がることを理解する必要があります。
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学校や部活はどうしたらいい?
高校生にとって学校生活や部活はライフイベントとして非常に重要性が高いものです。人格形成にも大きな影響を与えます。
起立性調節障害の難しい点は、子供は周囲と同じように行動したいと思いつつもそれができない、けれども特別扱いは受けたくないと感じている点です。この場合、親御さんや担任、同級生の親などの大人たちには、しっかりと情報共有して子供が病気であるという認識を持ち対策を考える必要性があります。
例えば、午前の授業に出れないことや、体育でマラソンを走れないことを周囲の子供がサボりだと思わないように子供達に説明することも大人の役割です。
逆に起立性調節障害の子供が部活動だけでも参加できるなら、それを許容できるように整備するのも大人の役割だと思います。もちろん症状の度合いや本人の希望で対応は変わってきますので一概に決められるものではありません。重要なのは起立性調節障害の子供が学校での生活を前向きに捉えられるように考えてあげることです。
起立性調節障害の子供と向き合う親御さんにとっては多くの不安があると思います。もちろん1人で思い詰める必要性がありません。うまく医療機関を利用して負担を減らしていくことが重要です。
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【参考】
日本小児心身医学会 起立性調節障害(OD)