「学校の校長先生の話がとても長かったので同級生の女の子が倒れて保健室に運ばれた」
そんな光景を目にしたことはありませんか?
貧血を疑う場合が多いかと思いますが、起立性調節障害(OD)の一種ということも想定されます。
実際に起立性調節障害と貧血の症状は類似しているため一般の方々には中々判別することは難しいと思いますが、病気としては全くの別物です。
そこで本記事では、起立性調節障害を疑われる子供やそのご家族のためにも起立性調節障害の症状と貧血の症状の違いや関連性について分かりやすく解説していきます。
起立性調節障害で貧血のような症状はあるの?
起立性調節障害の方は起立時に症状が出現しやすく、具体的にはふらついたり体が重く倦怠感を感じるような症状が出現します。この症状は貧血の症状と非常に酷似していますので症状だけみれば貧血のような症状があると言えます。
起立性調節障害と貧血の症状が酷似しているのには理由があります。これは、原因は違えど結果的には両方とも脳への酸素供給が低下することになるからです。
脳は酸素をエネルギー源にして機能していますので、供給が低下すれば当然機能がダウンして倦怠感や気分不快が生じます。特に貧血は医療機関で簡単に診断できますので、疑わしい症状があれば早期の医療機関への受診をお勧めします。
では、具体的になぜ起立性調節障害で貧血の症状が出現するのか解説します。
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起立性調節障害によって貧血になる原因
起立性調節障害で貧血のような症状が出る原因は、結論から言えば脳への血流が低下するためです。
起立性調節障害にはいくつかの病態が存在しますが、そのどれもが基本的には自律神経のバランスが悪化して引き起こります。起立性調節障害の場合、起床後に活性化しなくてはならない交感神経が起床後も活性化しないために症状が出現してしまいます。
交感神経の機能は多岐に渡りますが、心臓の鼓動を早めたり収縮を強めたりすることで酸素を含んだ血液をポンプのように全身に供給して血圧を高めることもそのひとつです。
交感神経が活性化してこないということは、体が求める行動に対して心臓のポンプとしての機能が追いつかなくなるため、その行動を全うする十分な酸素を得られなくなり動けなくなるのです。
急に立ち上がると脳への血液の供給が一気に低下するため、本来であれば交感神経が自動で活性化して脳への血流を維持するように働くのですが、起立性調節障害ではそれが出来ません。
その結果、脳への血流量が低下するため、脳への酸素供給が低下して機能がダウンしてしまうのです。
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貧血と起立性低血圧(起立性調節障害)の違い
では、この症状の似ている二つの疾患は具体的にどう異なるのでしょうか?
前述したように起立性調節障害は自律神経が乱れた結果、脳への血流が低下する病態です。脳への血液の量が少なくなることで酸素供給が間に合わなくなるのです。特に、夜間横になっていた後に起床すると脳血流は低下しやすいため午前中に症状が出やすいという特徴があります。
では、貧血とはどういった病気なのでしょうか?貧血を分かりやすく理解するには血液について少し解説する必要があります。
血液にはナトリウムやカリウムなどの電解質、糖分である血糖など生命維持に必要な要素がたくさん含まれています。その中には酸素も含まれていますが、酸素は血液内の赤血球によって運搬されます。
つまり、赤血球とは酸素を運搬するトロッコのようなものだとイメージしてください。
人間の細胞は全て酸素を使ってエネルギーを生み出していますので、酸素が細胞や組織に供給されなければ機能しなくなります。実際に起立性調節障害では脳への血液量が低下することで酸素不足に陥ることが症状の原因です。
次に、貧血とは何らかの原因で酸素を運搬する赤血球が減少し、その結果脳への酸素供給量が低下するため症状が出現している状態です。中々理解しにくい点ですが、あくまで貧血は赤血球の量が少ないという意味で、血液の量が少ないことではありません。
赤血球の少ない血液は、血液量が十分あっても酸素をあまり含んでいないためとても効率の悪いガソリンと言えるでしょう。
例えば、若い女性では生理などで一時的に出血しますが水分補給すれば血液量は元に戻ります。しかし、失われた赤血球はすぐに回復ません。すると、血液量は十分でも血液内の赤血球が減少している貧血状態ですので、酸素供給量が低下するため起立性調節障害と似たような症状が出現するのです。
つまり、起立性調節障害では血液の量が、貧血では血液の質が低下することで、結果として両方とも脳への酸素供給量が低下することで症状が出現するということです。
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起立性調節障害による貧血のような自覚症状を治す・軽減させる方法
起立性調節障害による貧血のような症状は脳への血液が低下することが原因ですので、それに見合った対策法があります。
- 朝はゆっくり自分のペースで立ち上がる
- 起き上がる前に水分を補給して脱水状態での起き上がるのを避ける
- 起床後はやや前かがみで極力脳が高い位置にならないようにする
- 立位(まっすぐに立った姿勢)の時には足をクロスさせて極力下肢に血液が行かないようにする
- 必要があれば医療機関で血圧を上げるような薬物療法も考える
症状に悩んでいる方は上記のような対策法に取り組んでみることをお勧めします。また、自分の症状が貧血なのか起立性調節障害なのか判断が難しいと感じる方もいるかと思います。
以下の記事では起立性調節障害におけるセルフチェックの方法などについて詳しく解説していますのでぜひご参照ください。
下記記事では「起立性調節障害の治し方・子供に対して親御さんができること」をまとめていますので、ぜひ参考にしてみてください。
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【参考】
田中大介 監修『起立性調節障害(OD)朝起きられない子どもの病気がわかる本』 講談社
日本小児心身医学会 起立性調節障害(OD)