起立性調節障害とは

【医師解説】自律神経失調症と起立性調節障害の違いとは

この記事の監修者

医師 錦惠那

医師 錦 惠那

内科一般・腎臓内科・透析科・産業医
保有資格:日本内科学会内科専門医・日本医師会認定産業医

 

【医師解説】自律神経失調症と起立性調節障害の違いとは

・起立性調節障害

・自律神経失調症

いずれも自律神経の調整のバランスが崩れることで多様な症状を来す病気ですが、どの様な点が似ていて、どの様な点が異なるのか。

それぞれの特徴を踏まえながら症状、原因、検査、治療方法などを解説していきたいと思います。

自律神経失調症と起立性調節障害の違いは?

自律神経失調症は交感神経と副交感神経のバランスが崩れた時に生じる病気ですが、確立した疾患概念や診断基準があるわけではありません。

日本心身医学会では、自律神経失調症とは、多様な自律神経系の症状を有し、しかも検査では器質的な病変が認められず、かつ顕著な精神障害のないもの、と定義されています。

つまり、様々な自律神経症状が認められること、検査で身体疾患が見つからないこと、明らかな精神障害が認められないこと、これらを満たすような状態のことを自律神経失調症としています。

症状は人によって様々ですが、頭痛、めまい、口の渇き、倦怠感など様々です。症状は良くなったり、悪くなったりを繰り返すことが特徴で、イライラや不安などの精神症状を伴うこともあります。

起立性調節障害とは、自律神経失調症の一種とも考えられ、交感神経と副交感神経のバランスが崩れることで様々な症状が見られる病気です。中学生前後の思春期頃に好発し、ホルモンバランスの変化や体の急激な成長に伴う身体疾患です。

自律神経失調症は出現した症状に対する検査で器質的な問題がなければ診断されます。つまりは、他の疾患を除外することで診断されるのに対し、起立性調節障害は診断基準や手順があり、この点は大きな違いと言えます。

自律神経失調症と起立性調節障害における「症状」の違い

自律神経失調症、起立性調節障害はいずれも自律神経である交感神経と副交感神経の働きのバランスが崩れることで様々な症状が出現します。症状自体に大きな違いは見られにくく、気温や季節によって症状が良くなったり悪くなったりすることも共通しています。

見られる症状としては、以下のようなものがあります。

・心臓・血管:動悸、胸痛、立ちくらみなど

・肺:息苦しさなど

・胃腸:吐き気、下痢、便秘、腹痛など

・頭:頭痛など

・目:疲れ目、目の乾燥など

・耳:耳鳴り、めまいなど

・口:口の渇きなど

・手足:冷え、しびれ、痛みなど

・筋肉・関節:肩こり、関節痛、筋肉痛など

・膀胱:排尿困難、残尿感など

・生殖器:勃起障害、生理不順など

・精神:不眠、イライラ、気分の落ち込みなど

・全身:全身倦怠感、食欲低下など

起立性調節障害は特に急激な体位の変動時に循環動態が変化することで症状が見られやすいため、早朝起床時、長時間の座位から急に立ち上がる際に、めまいや立ちくらみなどの症状が見られやすいです。

自律神経失調症と起立性調節障害における「原因」の違い

自律神経のバランスが乱れることで症状が見られやすくなるため、ストレスや生活習慣の乱れ、過度の緊張状態の持続などが両者に共通する原因となります。

自律神経失調症は身体疾患に関連して出現し治療をされることも多く、深く関連がある病気をご紹介します。

・心臓血管系:起立性低血圧など

・呼吸器系:過換気症候群など

・消化器系:過敏性腸症候群、機能性ディスペプシアなど

・神経系:片頭痛、パーキンソン病など

・泌尿器系:過活動膀胱、勃起不全症など

・精神科:不眠症、摂食障害、身体表現性障害など

自律神経失調症と起立性調節障害における「検査・診断基準」の違い

上記でもご説明した通り、自律神経失調症には明確な診断基準はなく、見られている症状に対する検査を行い、特に異常がない場合に診断されます。自律神経の検査としては、シェロング試験などがあり、場合によって行うことがあります。

自律神経失調症とは異なり、起立性調節障害は診断の手順や診断基準があります。日本小児心身医学会のガイドラインに手順や診断基準に関して記載があるので、ご紹介したいと思います。

<手順>

①起立性調節障害を疑わせる症状が下記の11項目のうち3つ以上当てはまる場合、医療機関を受診しましょう。

・立ちくらみやめまい・

・起立時の気分不良や失神

・入浴時や嫌なことで気分不良

・動悸や息切れ

・朝なかなか起きられず午前中調子が悪い

・顔色が青白い

・食欲不振

・腹痛

・倦怠感

・頭痛

・乗り物酔い

②家族歴や症状に対する詳細な問診を行い、基礎疾患がないか血液検査やレントゲン、心電図などの検査を行います。

③検査で特に異常がなく、起立性調節障害が疑わしい場合、次に新起立試験(臥位から立位になった際の血圧や脈拍を測定し、変動の有無を確認する検査)を行います。

この検査により診断され、起立性調節障害のうちのどのタイプ(起立直後性低血圧、体位性頻脈症候群、神経調節性失神、遷延性起立性低血圧)に当てはまるのかも診断されます。

自律神経失調症と起立性調節障害における「治療方法」の違い

治療方法には非薬物療法と薬物療法があります。

特に、起立性調節障害の場合、非薬物療法も非常に重要であると位置づけされています。起床時や起立時の動作の行い方や規則正しい生活習慣の確立、運動習慣を身につけ、特に下肢の筋力を鍛えることがとても重要です。

この非薬物療法のもと、症状が強い場合には、血圧を安定させる薬や脈を安定させる薬を服用します。漢方薬で効果的なものもあり、併用する場合もあります。

自律神経失調では、様々な症状そのものを和らげる薬と気持ちをリラックスさせる薬を使用して治療を行います。抗うつ剤や抗不安薬、睡眠薬を使いながら、めまいや頭痛があればそれぞれの症状に対し薬を併用していきます。

自律神経失調症と起立性調節障害における「予防方法」の違い

自律神経のバランスが乱れることで症状が出現しやすく、増悪もしやすいことは自律神経失調症と起立性調節障害に共通しています。したがって、症状増悪を予防する方法は両者ともに共通しており、自律神経のバランスを乱している原因の除去が必要になってきます。

上記でもご説明しましたように、ストレスや生活習慣の乱れは自律神経のバランスを大きく乱す原因になるため、生活習慣の見直し、ストレスを溜め込まないようにしましょう。

早寝早起き、食事バランス、食事時間の定時化、睡眠時間の確保、運動の習慣づけ、湯船につかり汗をかくなど規則正しい生活を送るよう心がけましょう。

特に起立性調節障害の場合は、季節、天候、気温によっても症状の見られやすさがあります。

夏場は副交感神経が優位に働きやすく、末梢血管が緩むことで血圧は低下する傾向にあるため症状は増悪しやすくなります。曇りや雨など低気圧の時にも症状は増悪しやすいため、天気予報を確認することも重要です。

自律神経失調症、起立性調節障害の場合は何科の病院を受診したらいい?

自律神経失調症と起立性調節障害は好発年齢が異なるため、受診する診療科も異なります。

自律神経失調症の場合、見られている症状に対応して診療科を受診する形になります。

精神的なストレスが強い場合は心療内科、胃腸症状が強い場合は消化器内科、頭痛やめまいが強い場合は神経内科ですが、多様な症状が見られるため、総合内科を受診し症状を相談した上で受診先を紹介してもらえることが多いです。

起立性調節障害の場合は、大人に見られることもありますが、好発年齢は小学生高学年から高校生です。中学生までは小児科を受診し、高校生になると、小児科で診察することは難しいため、見られている症状によって循環器内科や神経内科、心の問題が強い場合は心療内科、受診先に迷う場合は、総合内科に受診すると良いでしょう。

 

下記記事では「起立性調節障害の子供に対して親御さんができること」をまとめていますので、ぜひ参考にしてみてください。

 

【参考】
田中大介 監修『起立性調節障害(OD)朝起きられない子どもの病気がわかる本』 講談社
日本小児心身医学会 起立性調節障害(OD)
日本心身学会 自律神経失調症

トトノエライト なおくん

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