起立性調節障害の症状は主に朝、午前中にみられることが多く、朝なかなか起き上がることができず、苦労されているお子さんやご家族も多いと思います。
好発年齢は中学生前後の学生であるため、朝起き上がることができずに遅刻が重なったり、学校を欠席することも多くなっていき、学業にも影響が出てしまうことも少なくありません。不登校につながる場合もあります。
起き上がれないことでご本人もご家族も不安や焦りなど、とても心配になってしまうと思います。ご家族の方の中には、「無理やりでも起こした方がいいのか」「自然に起きてくるまでは寝かしておいた方がいいのか」と悩まれている方も多いのではないでしょうか。
こちらの記事では、起立性調節障害の方がなぜ起き上がることができないのかという理由を病態から解説し、起こし方や起こす際の注意点も解説していきます。
起立性調節障害はどうして朝起きられないの?
初めに、起立性調節障害の方はなぜ朝起きあがることができないのか。
病気のことを正しく理解し、この病気により朝が起き上がりにくい理由がわかるとご本人もご家族も少し気持ちが楽になり、ご家族も余裕をもって対応することができると思います。
起立性調節障害は自律神経系である交感神経と副交感神経の働きのバランスが崩れることでめまいやふらつき、吐き気、頭痛、気分不良など多様な症状が見られる病気です。
睡眠に関していうと、朝は起き上がることができず、夜は活動的で眠気がなかなかこず、夜更かしをせざるを得ない状態のことが多いです。
自律神経は呼吸や心臓の拍動、胃腸の消化機能など自分の意志ではコントロールできない生命維持に非常に重要で多様な働きを調整しています。自律神経には日内変動があり、食事など時間帯により優位に働く神経は異なります。
交感神経は体を活発にさせる神経であり、獲物を狩る際の戦闘態勢の状態とイメージするとわかりやすいです。瞳孔をひらき獲物を見て、心臓の拍動を増やし、末梢の血管を収縮させ、血圧を上げます。一方で、この時消化管の運動は抑え、排泄機能も抑えます。
副交感神経は体をリラックスさせる神経であり、交感神経とは反対の作用があります。
私たちは、朝起床頃より交感神経が優位になり、午後になると徐々に副交感神経の割合が増加していき、夜間には交感神経の働きは弱くなり、就寝が近くなる頃には副交感神経が優位に働き、睡眠中体を休めます。
起立性調節障害の方は交感神経と副交感神経の働きのバランスに不具合が生じ、適切に神経をスイッチすることができないため、色々な症状に悩まされます。
特に、朝は交感神経がうまく活性化されないために体はなかなか覚醒状態にはなりません。朝起き上がることができず、起きたあともめまいやふらつき、吐き気など体調不良が続きます。時間とともに症状は和らぎ、午後からの活動は特に問題ないことが多いです。
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起立性調節障害で朝起きられない場合の起こし方
起立性調節障害の方にとって、一日の中で最大の難関は早朝起床時です。急に体位を変動させることで症状が出てしまいかねないので、動作はゆっくりと行うことを心がけてください。
毎日できるだけ定時に起床できるようにご本人とご家族で相談し、工夫しましょう。あらかじめ、起床時間や起こし方をご本人とご家族で決めておきましょう。実際に起床する際はあらかじめ決定した手順に沿って焦らずに行いましょう。
就寝前
- 目覚まし時計を定時に設定する
- 水分や処方されている薬を事前に準備しておく
起床時
- 目覚ましだけでは起床できないことが多く、ご家族は「朝になり起床時間になっていること」を穏やかに声掛けする
- 窓を開けて、太陽の光を部屋に入れる
- 水分や処方されている薬を服用する
- 声掛けを繰り返し行う
目が覚めて起き上がる準備ができたら
- 横になったまま腕枕などで頭を少し上げる
- ゆっくりと起き上がり、ベッド上で座位を保つ(少しうつむいたままの姿勢が良い)
- 足を下ろして、頭は下に下げ、前かがみになり、そのままゆっくりと立ち上がる
- 立ちあがった後もうつむいた姿勢でゆっくりと歩きだす
急激に起き上がったり、立ち上がると、脳血流が低下しやすくなるため、全ての動作はそーっと、ゆっくり行うことが非常に重要です。
上記の手順を見ると、ご本人、ご家族が協力することがとても重要になります。ご本人が自分の病気のことを正しく理解できていない、朝起きる気持ちがなければ、ご家族の協力は意味をなさなくなってしまいます。
親子で病気の理解を深め、話し合い、ちょうどいいペースを見つけていってください。
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朝起こす際の注意
起こし方も重要ですが、それ以外にも注意しておくといい項目や起こし方で特に重要な項目がありますので少し解説します。
- 睡眠時間など生活リズムの再確認
- 朝は日光を浴びる
- 起床後は水分を摂取したり、処方された薬がある場合は薬も一緒に服用する
- ご家族は余裕を持って対応する
上記のように、起こし方は非常に重要であるため、ついつい起こし方にばかり目を向けがちですが、むしろ睡眠に注目することがポイントになります。
眠くなくても毎晩決まった時間にベッドに入り体を休めるようにしましょう。そして、朝の起床時間も決めてしまい、起床時間には声掛けとともに、窓を開け日光を入れるようにしましょう。体に朝、晩のリズムを刻み、食事の時間もなるべく決めてしまいましょう。
起こす際には強く体を揺さぶったり、怒鳴って怒るようなことはさけましょう。ご本人は起きたくても起きあがれないので、ご家族の対応がストレスと感じてしまうと症状が更に悪化することがあります。
余裕を持って複数回起こすよう促しましょう。ご本人とご家族の2人3脚で焦らずに日々を過ごしてくださいね。下記記事では、起こし方以外でご家族ができる介入方法などを解説しておりますので、ぜひ参考にしてみてください。
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【参考】
日本小児心身医学会 起立性調節障害(OD)