自分の子供が朝起きてこない!
そんな経験はおそらくどの家庭でも日常茶飯事だと思います。もちろん怠けたり夜更かしが影響している子もいるでしょうが、中には朝起きることのできない病気の子もいるのです。
中学生では約1割ほど罹患すると言われる起立性調節障害(OD)もそのひとつです。もしあなたのお子さんが起立性調節障害の場合、朝起きれないことを叱ったりするのは逆効果になってしまいます。
病気である子供に対して正しく適切な対応ができずに叱ってしまうのは、日々子供と生活する親御さんにとっても辛いことになってしまいます。
そこで本記事では、起立性調節障害により朝起きることができない理由や、それに対する対応方法を解説していきます。朝起きれない子供への理解が深まり親御さんが適切な対応を取れるようになれば幸いです。
朝起きられない原因
起立性調節障害と診断された子供は、なんらかの原因で自律神経のバランスが崩れてしまっている状態です。この自律神経とはその名の通り自律している神経であり個人の意思とは関係なく働く神経です。
例えば腕を曲げようと思えば人は運動神経を介して上腕二頭筋を収縮させますし、熱そうな蒸気に触れれば感覚神経を介して熱いと感じます。これらは人間の意思でコントロール可能です。それに対して自律神経は、個人の意思に関係なくその状況に合わせて交感神経と副交感神経の2つの神経が一定のバランスを保っています。
では、なぜ起立性調節障害の子供は朝起きることができなくなるのでしょうか?これには主に2つの理由が考えられます。
血圧変動に体が追いつかない
まず1つ目は、自律神経のバランスが崩れているため朝の血圧変動に体が追いつかないためです。
人は睡眠中は横になっていますので、重力の影響を受けにくく脳に血液が供給されやすい状況下にあります。だからこそ寝起きの顔が浮腫んでしまいます。しかし、目覚めて起き上がると、重力の影響を強く受けて血液は頭ではなく下肢の方向に向かうため脳の血流は低下しやすいです。
この時、本来であれば交感神経が活性化して足の血管を締めたり、心臓の鼓動を早めたりして脳への血流を自動で確保できるようにシフトするのですが、起立性調節障害ではその反応に乏しいのです。その結果、起き上がろうとすると気分が悪くなったりふらついたりして起き上がることができなくなってしまいます。
子供の場合こういった経験をすればするほど起き上がるのが嫌になり、横になったままでいたいと思ってしまいます。
睡眠相が後退
次に2つ目の理由は、自律神経のバランスが崩れることで睡眠相が後退してしまうためです。難しい言葉ですのでわかりやすく説明していきます。
人間は睡眠に入る時には副交感神経が活性化して体はリラックスモードに入ります。その後、交感神経と副交感神経がバランスを取りながら睡眠は継続します。朝になれば徐々に交感神経の働きが強くなり体はアクティブモードに切り替わっていき起床します。しかし、自律神経のバランスが悪いと朝になっても交感神経がうまく機能しません。
その結果、朝になっても体が起きるモードではないので起きることが出来ません。午後になりようやく交感神経の働きが強くなるので症状は午後に軽減しやすいのです。
逆に夜になっても交感神経が活性化しているので眠くならず元気なので、親からしたらサボりたいだけのように見えるのです。これら2つの理由から起立性調節障害の子供は朝起きることが難しくなっていくのです。
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無理やり起こすのはやめましょう
朝起きることのできない子供に対して、無理やり親御さんが起こすことはやめましょう。
余計にストレスがかかり自律神経のバランスをさらに崩す可能性があるからです。朝の起こし方には子供にとって負担の少なくなるような正しい手順があります。それについては下記で説明していきます。
朝起きられるようになる方法
一度崩れた自律神経を一気に治すような魔法の薬はありません。日常の生活を少しずつ変化させ、崩れたバランスをもとに戻していく作業が必要になります。
重要なのは子供自身に起きれる時間を設定させてそれを実行してもらうことです。最初はハードルの低い目標で構いません。例えば学校の3時間目に間に合うように起きるという目標を設定するのです。
もしそれが達成できれば時間を変えて10分ごとに起床時間を早めるなどの目標の底上げを行って行きます。これらの作業には当然家族の認識や協力が必要不可欠です。
また、家族側からの起こし方も事前に子供と相談しておくことが大切です。
・7時になったらカーテンを開ける
・7時半までにゆっくり起きる
・8時になっても起きてこなければ声を掛けても良いことにする
などと段階を設定しておくのです。設定した目標でも難しいようであれば、再度目標設定を見直すことも必要です。無事に起きてきた場合はしばらくは前にうつむいて歩くのが良いです。少しでも脳を低い位置に持って行くことで脳に血液が届きやすいようにするためです。
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不登校になった場合の対応方法
症状が増悪して登校が難しい場合、外出して散歩するなどの負荷が低い運動、自宅での家事の手伝い、買い物など気分転換も昼と夜とのメリハリ、また、身体活動による自然な眠りを誘うことからもおすすめです。
起床から16時間ほどしないと人間は眠くならないので、夜少しでも眠くなるように日中に適度な負荷の運動をしましょう。
そのほかに学校との連携や家庭内での教育など、親御さんが子供にしてあげられることはたくさんあります。以下の記事ではさらに詳しく解説していますのでぜひご参照ください。
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【参考】
田中大介 監修『起立性調節障害(OD)朝起きられない子どもの病気がわかる本』 講談社
日本小児心身医学会 起立性調節障害(OD)