起立性調節障害とは

起立性調節障害による「失神」|原因や対策(治療法)を解説

2022年6月15日

この記事の監修者

医師 錦惠那

医師 錦 惠那

内科一般・腎臓内科・透析科・産業医
保有資格:日本内科学会内科専門医・日本医師会認定産業医
2018年から起立性調節障害患者の診療を行い、累計30人以上の起立性調節障害患者を担当。

一般社団法人 起立性調節障害改善協会

学校の朝礼で突然気を失い倒れる。

これは起立性調節障害の子どもにしばしば見られる典型的な状況です。起立性調節障害の子どもは、突然失神することがあるので、不安を感じている親御さんも多いのではないでしょうか。

こちらの記事では、起立性調節障害の子どもはなぜ失神するのか、特徴や対処法なども含めて解説していきます。

起立性調節障害(OD)改善ガイドブック

起立性調節障害による「失神」の原因

まずは、失神とはどういう症状かについて、メカニズムから解説していきます。

失神とは、一時的な脳血流の低下によって、脳の機能が全般的に低下することにより、一時的に意識がなくなることです。意識がなくなることで姿勢の維持ができなくなり倒れることもあります。

医学的な失神の定義は、以下を満たします。

・意識がなくなる

・一時的である

・急激に発症する

・短時間である

・自然に完全に回復する

失神の原因は大きく3つに分類されます。神経調節性失神、起立性低血圧、心原性失神です。このうち、起立性調整障害の子どもにみられる失神は神経調節性失神であり、自律神経の調整がうまくいかないために起こる失神です。

神経調節性失神、あまり聞きなれない病名ですが、別名「脳貧血」といい、脳貧血の方がイメージがわきやすいと思います。脳の貧血、つまり脳への血流が低下することで失神が起こります。

起立性調整障害は自律神経系である交感神経と副交感神経のバランスが崩れることで多様な症状を来す病気です。

起き上がる時、立ち上がる時や立っている間、重力に逆らって下半身の血流を心臓に戻し、脳への血流を維持し、血圧を維持できているのは交感神経が非常に重要な働きをしているからです。

交感神経の作用が不足することで立ち上がる際や立っている間に脳血流が低下し、めまい、立ちくらみ、失神などの症状が出現します。

起立性調整障害の原因は自律神経調整のバランスが崩れることですが、自律神経調整のバランスが崩れる原因は、以下のようなものがあります。

・慢性的なストレス、緊張状態

・生活習慣の乱れ

・運動不足、筋力不足

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起立性調節障害による「失神」の特徴

起立性調整障害の子どもがどの様な時に失神しやすいのかを知っておくことで対応が早くなり、転倒による大きな被害を予防することもできます。

起立性調整障害の症状、失神が起こりやすいのは、以下のような状況です。

・起床時

・長時間座っている状態から急に立ち上がった時

・長時間立位でいる時

・痛みや恐怖などの緊張状態

・気温が高い日、夏場

・曇りや雨の日

また、失神が起こる前触れとしては、以下のような症状が見られることが多いです。

・吐き気

・気分不良

・めまい

・動悸

・冷や汗、異様な発汗

・視覚や聴覚の変化

失神が起こる前触れの上記症状が見られた場合は、すぐにしゃがみ込み転倒の際の被害を最小限におさえましょう。

まわりの方は、倒れそうになった場合は支えながらしゃがみ込むように誘導し、横になれる場所があれば横にさせましょう。水分補給ができそうなら、少しずつ水分を口に含みましょう。

起立性調節障害による「失神」を治す方法

治療には薬物療法と非薬物療法がありますが、最も基本的である非薬物療法、つまり生活上の工夫を丁寧に行い、必要時補助的に薬物療法を行います。血圧が低下し、脳血流が低下することで失神してしまうため、血圧をあげるお薬の投与が検討されます。

非薬物療法の中でも、特に以下の点に注意しましょう。

◆起床のしかた、立ち上がり方、立ち方の工夫

起床時や立ち上がる際には血圧が変動しやすく(一時的に血圧は下がり、それを防ぐためにすぐに交感神経が活性化し血圧をもとに戻します。)

失神などの症状につながりやすいため、いずれの場合においても、ゆっくりと時間をかけることが重要です。立っている間は、手を握ったり開いたりして指先を動かし、足踏みをするだけでも血行が改善し、症状を防ぐことができます。着圧ソックスを利用することも選択肢の一つです。

◆水分や塩分の摂取

脱水により体をめぐる血液量が減少すると、脳への血流も低下しやすくなります。したがって、起立性調整障害の子どもでは水分摂取は1日1.5~2.0Lが推奨されています。

血圧を維持するには水分とともに塩分を摂取する必要があります。一般的に、特に持病がない場合の塩分摂取量の目安は、1日あたり6-7gとされています。起立性調整障害の方では、これより2-3g多めに摂取することが推奨されています。

◆筋力、特に下肢の筋力アップ

立ち上がる際に、重力に従って下半身に溜った血液を心臓に戻すために、私たちの脳は交感神経に指令を出し血圧が下がらないよう準備をします。交感神経の働きとともに、ふくらはぎの筋肉が収縮することで下肢の静脈内に溜った血液を心臓へ戻す働きも重要になってきます。

適度な運動を取り入れることは健康増進のためにも重要です。起立性調整障害の子どもの場合は、特に下肢の筋力を増やすことが重要です。

足の筋肉を鍛える方法としては、つま先立ち、椅子からの立ち上がりなど家にいてもできる簡単なものがインターネット上でも多数紹介されています。ぜひ日常生活に取り入れてみてください。

◆規則正しい生活習慣

食事は3食バランスよくしっかり摂り、時間も一定に決めることが重要です。睡眠も十分にとりましょう。朝は起き上がりにくくても、窓をあけ、日光を入れ、夜は眠たくなくてもベッドに入り、体に生活リズムを刻みましょう。

下記記事では「起立性調節障害の治し方・子供に対して親御さんができること」をまとめていますので、ぜひ参考にしてみてください。

【参考】
田中大介 監修『起立性調節障害(OD)朝起きられない子どもの病気がわかる本』 講談社
小児心身医学会ガイドライン

起立性調節障害(OD)改善ガイドブック

起立性オンラインセミナー

トトノエライトプレーン

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