突然、大切なお子さんが胃痛や腹痛を訴えた場合、親御さんはどのように対応されますでしょうか?
子供が胃痛や腹痛を訴えることは珍しくなく、実際にその多くは重症化することなく自然に軽快することがほとんどです。
しかし、中には緊急で手術が必要になるような病気や、入院して治療が必要な病態もあるため決して軽視していい症状ではないということを認識しておきましょう。
また、起立性調節障害(OD)と呼ばれる疾患でも継続的に胃痛症状が出現し、症状の程度によっては通学などの日常生活にも支障をきたす可能性があるため注意が必要です。
お子さんの抱える胃痛の原因が起立性調節障害であれば専門的な治療が必要になり、それ以外の重篤な病気であれば命の危険性もあるため、親御さんもある程度正しい理解と知識を持っておく必要があります。
そこで、本記事では子供の胃痛症状について分かりやすく解説していきます。
起立性調節障害による「胃痛」の特徴
そもそも胃痛とは、医学的には心窩部痛あるいは上腹部痛と呼ばれ、いわゆるみぞおちの奥の差し込むような痛みのことを指します。
一般的に成人が胃痛を訴える場合には胃の炎症や感染以外に、十二指腸炎、膵炎、胆嚢炎、急性虫垂炎、心筋梗塞など多くの疾患を疑う必要があります。しかし、小児の場合は基本的に膵炎や心筋梗塞は考えにくいです。
胃痛が出現する主な理由は、胃の内圧が上昇したり炎症が及ぶことが原因です。
例えば、胃内に病原菌が侵入し感染症を引き起こした場合、胃内部には炎症が引き起こり病原菌を無理やり排出しようと収縮運動が働きます。その際、胃は過剰収縮し胃内の圧を上げて嘔吐反応を引き起こすのです。
嘔吐によって病原菌は無理やり体外に排出されますが、その際の胃の過剰収縮を人間は痛みとして感じます。このように、胃内部の炎症や内圧の上昇が痛みの原因となることが多いです。
感染症の場合、胃痛以外にも発熱や嘔吐、場合により炎症が腸管に波及すれば下痢も引き起こし、強い症状として出現します。しかし、中にはそういった過激な症状はなく継続した胃痛を引き起こす疾患もあります。そのうちの1つが起立性調節障害です。
起立性調節障害の場合、自律神経のバランスが乱れることで胃の収縮運動にも支障をきたし、結果的に胃痛症状が引き起こります。
起立性調節障害に伴う胃痛の特徴は、午前中に出現しやすいという日内変動がある点と、感染症のような誘因があるわけでもなく毎日のように持続する点です。感染症などと違い数日で軽快するような病気ではありません。
また、他にもめまいやふらつき、嘔気、腹痛など様々な症状が同時に出現することが多く、症状の程度によっては朝の通学にも支障をきたすことがあります。
激烈な症状を起こす感染症と異なり、起立性調節障害のように持続的な胃痛を引き起こす子供に多い病気には便秘症も挙げられます。便秘症の場合、起立性調節障害のようなそのほかの症状は出現しない上に、日内変動も少ないです。
さらに、小児に胃痛を引き起こす病気の中には、急性虫垂炎や腸重積のように緊急での手術が必要になるような病気もあり、仮に対応が遅れた場合命の危険もあります。
これらのことからも、胃痛症状から推測される疾患は多岐にわたるため、気になるようであれば早急に医療機関を受診することをお勧めします。
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起立性調節障害による「胃痛」の原因
では、なぜ起立性調節障害では胃痛が出現するのでしょうか?
前述したように、胃の内圧が急激に変化した場合人間は胃痛を感じます。胃の内圧が変化する理由は主に2つ、食べ物が多いか、胃の過剰収縮です。
実は、胃の収縮、もしくは拡張運動は自律神経によって支配されています。自律神経とは交感神経と副交感神経のことで、交感神経の活性化に伴い胃の筋肉は弛緩し、副交感神経の活性化に伴い収縮します。
本来であれば、食事を摂取した時には胃に食べ物が入ると同時に副交感神経が活性化し、胃酸分泌や胃の収縮運動により食べ物を消化して十二指腸に流し込むように働いています。逆に、運動時のように交感神経が活性化しているときは、胃への血流が低下し胃の動きは緩慢になります。
しかし、起立性調節障害の場合自律神経のバランスが崩れるため、上記のようなスムーズな消化運動がなされず胃の内圧が上昇して胃痛を自覚してしまう可能性があるのです。
特に小学校高学年や中学生の頃は肉体が急激に成長するのに対し、自律神経の発達が間に合わないため起立性調節障害が発症しやすい年代と言われています。
起立性調節障害の病態からして、特に症状が出やすいのは午前中です。正常であれば、起床とともに交感神経が活性化することで心臓や血管を刺激し脳の血流を一定に保つように自動調整してくれます。
しかし、起立性調節障害では交感神経がうまく自動で活性化してこないため、そういった反応が起きず脳血流は低下し、それに伴って様々な症状が出てしまうのです。
交感神経が活性化しないため、副交感神経が必要以上に優位になってしまうと、胃は過剰収縮して痛みに変わってしまう可能性もあります。つまり、胃痛は自律神経の乱れがその本態であり、特に起床時や午前中に乱れやすい理由もそれによるものです。
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起立性調節障害による「胃痛」を治す方法
前述したように、まずお子さんが胃痛を訴えている場合、親御さんでは判断がつかないのであれば早急に医療機関への受診をお勧めします。
一般的に「小児期の胃痛」といえば、胃腸炎のみならず急性虫垂炎や腸重積を疑う必要があり、診断がつけば手術が必要だからです。それらの器質的疾患が全て否定された上で起立性調節障害という診断が下れば、そこから治療していく必要があります。
一般的な胃痛の治療となれば、胃液の分泌を調節する薬や胃の動きを和らげるような薬が処方される可能性もありますが、これらは起立性調節障害の治療としてはあくまで対症療法となります。
あくまで起立性調節障害による胃痛は、自律神経の乱れがその本態であり、治療する上で親御さんだけでなく子供にもしっかりと起立性調節障害という病気に対する理解や認識を持ってもらうことが重要です。
その上で、治療の中心は非薬物療法になります。自律神経の乱れを少しでも安定させるように日常生活を整える必要があります。また、多くの場合は成長と共に自律神経のバランスが安定して行く為、自然経過で改善して行くことも多いです。
起立性調節障害の場合、自律神経が乱れているため起立とともに体内の循環動態には大きな変化が生じてしまいます。下記記事では実際にどの程度血圧変化が生じるのか詳しく解説されていますので、ぜひ参考にしてください。
下記記事では「起立性調節障害の治し方・子供に対して親御さんができること」をまとめていますので、ぜひ参考にしてみてください。
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【参考】
田中大介 監修『起立性調節障害(OD)朝起きられない子どもの病気がわかる本』 講談社
日本小児心身医学会 起立性調節障害(OD)
起立性調節障害(OD)ドクターズファイル