起立性調節障害は自律神経の働きのバランスが崩れることで立ちくらみやめまい、頭痛や腹痛など様々な症状が見られます。特に、女児の場合、月経(生理)による体外への失血のために体内の血液量の低下から症状が増悪しやすくなってしまいます。
こちらでは、月経時、起立性調節障害の症状が悪化してしまいやすいメカニズムや対応方法などを解説していきます。
なぜ生理時に起立性調節障害の症状がひどくなるのか
まずは、起立性調節障害について解説していきます。
起立性調節障害とは、自律神経系である交感神経と副交感神経の働きのバランスが崩れることで様々な症状を引き起こしてしまう病気です。中学生高学年~高校生にかけての思春期に多く、症状の程度も人により変化があります。
特に、体内の血液の流れが大きく変動する臥位→立位、長時間の立位などの時に症状が出やすいです。
一般的に、私たちは座っている時には、重力に従って、血液は下肢に溜りやすくなっています。そこから立ち上がると、心臓や脳への血流が下がってしまうことは容易に想像がつくと思います。
しかし、実際には私たちは立ち上がる際に失神することはありません。なぜなら、立ち上がる際に私たちの体は自動的に交感神経を活性化し、下肢などの末梢の血管を収縮させ、心臓、脳への血流を保っています。
起立性調節障害の子どもはこの交感神経の自動的な活性化に乏しいため、起床時や立ち上がる際に多様な症状が出てしまいます。
次に、月経中の体の変化について解説していきます。
月経の経血量にもよりますが、出血により体内の血液量は少なくなる傾向にあります。血液量が少なくなると、各臓器への血流が低下し、脳への血液が低下することで立ちくらみなどの症状が見られやすくなります。経血量が多ければ、より症状が見られやすくなります。
また、月経中は腹痛などの体調不良を伴うこともあり、そのストレスにより自律神経のバランスが崩れやすいため、これも症状の悪化が見られやすい原因の一つになります。
まとめると、起立性調節障害の女児の場合、もともと自律神経の働きのバランスが崩れやすい状態が根底にあり、それに月経による体内の血液量の減少や月経によるストレスが加わり、起立性調節障害の症状が悪化しやすい状況にあると言えます。
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生理時の対応方法
それでは、起立性調節障害の女児の場合、毎月訪れる月経時にはどの様に対応すればよいのか。
◆普段よりバランスのとれた食事を十分に摂取する
思春期の時期は心身共に大きく成長するため、体を大きくするタンパク質を多めに摂取する必要があります。
また、月経により体外へ失血することにより貧血にもなりやすい状況であるため、鉄分の摂取も心がける必要があります。鉄分はレバーやしじみ、小松菜、ほうれん草などに多く含まれています。
この年代の女児は特に自身の体形を気にしがちです。中には、食事を制限し減量や体重増加を制限している子どももいます。思春期のダイエットは筋骨格系の成長や心身に及ぼす悪影響が大きいため、食事制限を行わないことが大切です。
◆月経に伴い腹痛が強い場合、適切に鎮痛剤を使用する
起立性調節障害でも頭痛や腹痛が見られることがありますが、月経による腹痛や頭痛が強い場合、そのストレスにより起立性調節障害の症状がさらに悪化してしまうため、適切に痛みをコントロールすることが重要です。定期受診をしている場合、あらかじめ鎮痛剤を処方してもらうと良いでしょう。
◆十分な睡眠をとる
何よりも体をしっかり休めることが重要です。睡眠により全身は修復されるため、十分な睡眠を普段より心がけましょう。
◆無理せず体を休める
起立性調節障害がない場合でも、月経中は体に負担がかかります。それに起立性調節障害の症状が加わるとさらに負担がかかります。月経中はしっかり栄養をとり、ゆっくり体を休めましょう。
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いつまでこの状況が続くのか
起立性調節障害の好発年齢である小学生高学年~高校生は、初潮が始まり、月経の期間や経血量、女性ホルモンバランスも安定しない時期です。そのため、自律神経のバランスも崩れやすく、起立性調節障害の症状も増悪することがあります。
高校生以降になると、次第に女性ホルモンのバランスも安定していくため、症状も落ち着くことが多いです。また、起立性調節障害の症状自体も、年齢に伴い体が成長しホルモンバランスが安定すると自然に改善することが多いため、思春期が過ぎることが症状改善の一つの目安になるかと思います。
下記記事では「起立性調節障害の治し方・子供に対して親御さんができること」をまとめていますので、ぜひ参考にしてみてください。
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【参考】
田中大介 監修『起立性調節障害(OD)朝起きられない子どもの病気がわかる本』 講談社
日本小児心身医学会 起立性調節障害(OD)